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怒り(高専時代/同期4人)

・楽(らく)の場合

「玲(れい)のバカ!!もう知らない!!!」


 楽が大声と共に、拳を前に出す。


 それは玲が避けた事により、玲の背後の壁を打った。壁はコンクリートで出来ているにも関わらず、ミシミシという音を立ててヒビが入る。


 楽は気にもしていないのか泣きながら走り去っていったが、残された玲は笑顔のまま固まっていた。


 一連の流れを見ていた彰良(あきら)は、少しばかりの動揺を抑えながら玲に近づく。

 玲は笑顔のまま、若干声を震わせた。


「……彰良、俺の首ついてる……?」


「ついてる。……お前、楽を怒らせるなよ。シャレになんねぇぞ……。」


 彰良は玲に言葉を返しながらも、心の中で絶対に楽と真っ向から喧嘩はしないと誓った。


おまけ

玲「楽、ごめんね……。でも俺ピンクのシャツはちょっと……。」

楽「……ボクも無理やりでごめんね……。水色ならどう?」

玲「うーん……まあ、楽が言うなら……。」



・清治(きよはる)の場合

「ちゃんと僕の話聞いてる?彰良が怪我しないように言ってるんだよ!」


 清治が彰良の前で腕を組みながら説教をしている。


 どうやら今日の実技訓練で、彰良が少しばかり無茶をしたらしい。

 それは良いのだが、勿論悪いけれど、それは置いておいて。清治の怒り方に楽は少しばかり彰良に同情を抱いていた。


 なぜかというと、清治の目にはうっすら涙が溜まっていたからだ。

 清治は普段穏やかで優しい。滅多に感情を崩すことがないせいか、怒ったりする時は全力で感情を表に出してくる。


 そのせいで泣いてしまうことがあるのだが、それを前にすると、どうも自分がかなり悪いことをしている気がして反論できなくなるのだ。


「彰良聞いてる!?」


「……はい。ごめんなさい。」


 彰良はこめかみに汗を浮かべながらも、綺麗な土下座を決めたのだった。


おまけ

彰良「なんかこう……申し訳なくなるよな。土下座くらいしてもいいやって思っちまう……。」

楽「それはボクも分かる。玲が絶対に清治怒らせないようにしてるの、その辺が大きいよね……。」



・彰良の場合

「ふざっけんなお前!!!」


「えー?かわいーよ、それ!」


 教室の中で玲と彰良が鬼ごっこを繰り広げている、高専の日常風景。


 玲の今日のイタズラは彰良が置き忘れていた体操服のズボンポケットに、かわいい猫のアップリケを着けたらしい。


「お前が置き忘れたのが悪いんだろ?俺がわざわざ洗濯して、ほつれていたポケット直してやったのに……。こんな優しさを仇(あだ)で返すなよ。」


 泣き真似をする玲に、彰良が掴みかかる。しかし、そんな攻撃は玲には通用しない。


 ひらりと躱(かわ)して、逆に彰良に足を掛けるという高等テクニックを披露するのに、彰良の怒りゲージが更に上がった。


「くっそ……!!ひょいひょい躱しやがって!!猿かお前は!!!」


「筋肉ゴリラに言われたくなーい。」


 くすくすと楽しげな玲は、彰良を翻弄(ほんろう)しながら廊下へと出ていく。

 彰良もすぐにその後ろを追っていくのに、清治は溜息を吐き出した。


 ちなみに始業開始まであと五分。きっとあの二人は戻ってこないだろう。


おまけ

清治「彰良……。授業前はやめておいたら?」

彰良「いや無理。あいつ、あの時追いかけなかったら俺の体操服に星とかハートとかのアップリケ二十個くらいつけようとしてたんだぞ。」

清治「玲……。」



・玲の場合

「……それで?言い訳はそれだけか?」


 絶対零度の声が頭上に響く。


 楽は玲の前で正座をしながら肩を震わせていた。隣では清治も同じように俯(うつむ)いている。


 ちなみに彰良は緊縛術式の応用版を使われ、声を出すことも出来ずに四つん這いの姿勢で玲の椅子になっている。


 事の始まりは、外部講習という名の任務の廃墟捜査での楽と彰良の軽い喧嘩だ。

 それが少しずつヒートアップして、取っ組み合いの喧嘩になって。

 清治は仲裁に入ろうとして巻き込まれ。


 再三の玲の静止も聞かずに揉み合い圧し合い、大きな音を立ててハグレモノに気付かれ作戦は失敗。


 楽たちがしまったと思った時にはもう遅かった。


 玲の顔から表情が消え、楽たちは全員緊縛術式で縛られて、近くの部屋に纏めて放置された。

 そのまま玲は一人でハグレモノを倒し、戻ってきた時、少しばかり文句を言った彰良を椅子代わりにして状況整理の尋問が始まったのだ。


 一応彰良の名誉を守るために言うなら、彰良は玲が一人で行ったことを心配しての文句だ。

 まあ、ただ作戦を台無しにしたのに文句はいただけなかった。


 玲は最初なぜ喧嘩していたのか、なぜ再三の静止を聞かなかったのか妙に優しく問いただした。

 そして楽たちの証言が終わった瞬間、冒頭の言葉である。彰良は言い訳すら述べる時間を与えてもらえなかったが。


 部屋の温度すら低くなったのではないかという中、玲の説教が始まった。

 この前の任務の失敗なども持ち出しながら、正論と理論とたまに威圧。


 それは三時間に及ぶ長さで、正座をしていた楽たちの足は暫く使い物にならなかった。


おまけ

楽「うう、玲から怒られるのつらいよ……。」

彰良「普段怒らねーからな……。足やば。」

清治「彰良反省してる?」


読んでいただきありがとうございます。

ハグレモノ短編第46話はいかがでしたか?


前回ピンクのシャツが出てたので、それ繋がりで四人のお怒りシーン集にしました。

清治に怒られるのは地味につらいな、って思ってます。


楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。


次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。

よろしくお願いします!


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