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クリームソーダ(高専時代/同期4人)

 蝉の音が窓の外に響く夏。

 高い空の青さが目に眩しい休日の昼過ぎ。


 なんとなく一人でいるのが寂しいような気分に、誰かいないかと熱気がこもる共用キッチンまで行くと、色とりどりのシロップに囲まれた(れい)(らく)がいた。


彰良(あきら)。」


「おー……何やってんだお前ら?」


 玲が振り向いて笑う。

 首筋に汗が流れていくのに、視線が固定されそうになるのを無理やり動かしてから楽の方に目を向けた。


 楽も暑いのか、汗を浮かべながらも得意げに笑う。


「ちょーど良かった!今から呼びに行こうとしてたんだ。折角だから彰良も運ぶの手伝ってよ。」


「運ぶ?」


「そうだよ!なんとなんとーー、」


 楽はもったいつけるように言葉を切ると、玲と顔を見合わせて笑い合った。


 楽の言葉を引き継ぐように玲が用意されていたアイスバスケットとグラスを上げてみせる。


 カラン、と氷の鳴る音がした。


「クリームソーダ。一緒に作ろ、彰良。」



 シュワシュワパチパチ。

 泡が弾ける音を不思議そうに聞きながら、薄青の瞳に濃い青が溶けていく。


 白い雲のようなアイスクリームと、水の中を揺蕩うような青。

 赤いさくらんぼが鮮やかで、目眩がした。



「じゃーん!見てみて!色んなシロップ(そろ)えたんだ〜!アイスもバニラとヨーグルトソルベ!トッピングも色々あるよ。さくらんぼとミントとキラキラシュガーにジャムとチョコレートも!」


 玲の部屋で、楽が戦利品のようにクリームソーダの材料を並べる。


 氷とグラスと材料を運ぶ途中で清治(きよはる)にも声を掛けて、四人で訪れた玲の部屋はクーラーの風が心地よい涼しさを保っていた。


 物が少ないからか、彰良の部屋よりもずっと温度が低い。

 そんな中に色とりどりのシロップが並べば、少しだけ部屋が賑やかになったようだった。


「すごいね、これ。どうしたの?」


「ふふーん。実は玲とこの前雑誌でクリームソーダの特集見ちゃってさ!折角なら色々飲んでみたいねって事で準備してたんだ〜!清治はどれがいい?」


 きらきらと清治の瞳が輝く。

 じゃあ、と選んだのはいちご味の赤いシロップ。


 楽は了解と笑うと、慣れた手つきでグラスに氷とシロップ、そしてソーダをゆっくり注ぐ。

 上にはバニラアイスと苺ジャム。


 あっという間に赤いクリームソーダが完成した。


「わあ、綺麗……!牡丹(ぼたん)の目の色みたい!」


 嬉しそうな清治の声が響く。

 その影からゆらりと牡丹が現れると、クリームソーダと清治を見て目を輝かせた。


主様(ぬしさま)……!わ、(わらわ)も!小童(こわっぱ)!妾にも若草色のくりーむそーだ?を献上するのじゃ!】


「ちょーっと待って!若草色、若草色……メロンでいいかな?」


「いいと思うよ。ふふ、牡丹。俺が作ってあげようか?」


【ひぃ、貴様は妾に近づくでない……!!】


 楽が悩んでいる横で玲が牡丹にちょっかいを出せば、牡丹は直ぐに清治の後ろに隠れた。

 牡丹は玲が苦手だ。


 それに清治が困ったような顔をしながらも、どこか楽しげに笑う。


 楽が作った二つ目のクリームソーダで機嫌を直した牡丹が、嬉しそうに口をつけた。

 シュワシュワの炭酸に驚いた顔をし、()いでパチパチと小気味いい刺激が気に入ったのか頬を紅潮させる。


【ぬ、主様……!これは美味(びみ)でございます!】


「そうだね、牡丹。ありがとう楽。なんだか夏っぽくていいね。」


「そうでしょそうでしょ?玲は?いっぱい手伝ってくれたから作ってあげる!」


「ありがとう。楽のは俺が作るよ。楽しみにしてたでしょ?彰良のも作ろうか?」


「いや、俺はあとでいい。」


「?そう?」


 シュワシュワパチパチ。

 泡が弾ける音が響いて、なんだかソワソワする。楽しそうな玲の横顔を眺めるだけで眩しい。


 彰良は目を細めながら、玲が作るレモンシロップが入ったクリームソーダを見つめた。


 楽が好きな黄色。

 甘いものが得意ではない楽のために、アイスはヨーグルトソルベ。

 上にミントを乗れば、洒落(しゃれ)たクリームソーダの完成だ。


「わ、お洒落でかわいい〜〜!!ありがとう、玲!!……玲は?何色がいい?」


「ふふ、どういたしまして。……そうだな。青がいいかな。」


 ぎゅっと抱きついてきた楽に笑って、玲がブルーシロップを指差す。

 深い水底のような色のシロップ。


「いいね!すぐ作るから待っててね!」


 楽がグラスに氷を落とし、青い色を注ぐ。

 上からソーダがゆっくりと降りてきて、混ざり合った水面が濃い青色に溶けていく。

 軽く混ぜ、バニラアイスとさくらんぼを乗せれば青いクリームソーダが完成した。


 手に取った玲がぱちりぱちりと瞬く。


「きれー……。」


 見惚れるように、青色を薄青の瞳に写し込んで玲は小さく呟いた。そのまま机に座り、泡が弾けるのを不思議そうに見つめる。


 シュワシュワパチパチ。

 玲が見つめる先のソーダが弾ける音だけが耳に響いて、なんだか熱い。

 混ざり合う色が綺麗で、喉が渇く。


 楽は動けない彰良を肘で小突くと、意地悪そうな響きを含ませてそっと囁いた。


「彰良は透明なのと青を混ぜて薄青色のクリームソーダを作ってあげようか?」


「……。……ああ、頼む。」


 顔に集まる熱を払うように楽の方を振り返れば、声通り意地悪な笑顔を浮かべた楽が声をあげて笑った。



おまけ

楽「玲、その青色気に入ったんだね〜!」

玲「うん。なんだろう……綺麗で安心するんだ。」


読んでいただきありがとうございます。

ハグレモノ短編第30話はいかがでしたでしょうか?


7月になりましたね。

折角なので、夏らしい短編にしました。

クリームソーダ、たまに飲むと懐かしいような心地になります。色が綺麗ですよね。

情景を思い浮かべながら、楽しんでいただけると嬉しいです。


次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。

よろしくお願いします!


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