■第22話「氷の巨塔②」
『我々が書き上げた『本』は、単なる魔導書ではない。世界そのものが分割されて封じられている。いつの日か、この本を携えてこの地へ戻ってくることを信じている。選ばれし者よ』
“The "book" we have written is not merely a grimoire. It contains a division and sealing of the world itself. I believe that one day, you will return to this land with this book in your possession. O chosen one.”
今、オレは、そびえたつ氷の塔の前に座り込んでいる。
まあ、ひとり作戦会議ってトコだ。
この「氷の書」の力は、リスクなしで無限に使えそうなんだが…。
ここは元々が氷に覆われた世界だ。外からは入れねぇ。
外からよじ登って、最上階には窓らしき隙間があったんだが…中からの攻撃で地上まで落とされちまった。
まったく、やってくれたぜ。
おそらく向こうの方が、氷の「強度」ってやつが上なんだろうな。
だが…確かにあそこには「ゲート」があった。
航大さんが言っていた“二層の光の環”…。
あそこから出られるのは、間違いねぇ。
問題は、どうやってここを登るか…だが。
冷気に体力が削られていくのを考慮すると、もってあと半日ってトコか。
正面突破しか残されていないが、この扉をどうやって開けるか…。
取っ手も鍵穴もねぇ。突き破るしかないだろう。
リュックの中のアイテムの殆どは、落下時にぶっこわれちまったんだが。
「ラストにこいつが使えるとはな、ラッキーだったぜ」
試練としては反則なんだろうが…今更だぜ。
「へへっ。冒険者アイテムの一つ『アフタヌーン・バーナー』」
特殊な熱線で1000度まで出力できる小型バーナーだ。
だが、最大火力はせいぜい1分だ。…いけるか?
…ゴォォォォォォォ…
細い熱線だが、確かに効いてる。
よし! 破れそうだな…っておいっ!!
…チッ、穴としては貫通したが、せいぜい1センチ大の穴だ。
「だが、これなら“冷糸は通せる”。『1-1 コルド・フィンガー』でな!」
シュルシュルシュルルルルルル…
指から出た冷気の触手が、氷の扉の裏側をくまなく這い回る。
「かんぬき…があるな。『“固質化” 3-1 ルーン・ビルド』!」
ガキガキガキッ…!
氷の糸がそのまま固まる。
「へっ、皮肉にも、墓泥棒とは良く言われたもんでね…“硬化!”『3-3 ルーン・ステイン』!」
ビキキキキッッッッ!!
氷の針金が出来上がる。あとはテコの原理…で。
ガッッチャン…
かんぬきが抜け落ちた音だ。
「よし」
あとは、片手で簡単に扉を押し開けることが出来た。
「ヘッ。反則上等ってね。待ってろよ、最上階のヤロー」
中に入ると、、、氷で出来ているとは言え、造りはしっかりとしていた。
まるで氷の世界のホテルって感じだが、誰かがいる…って気配は全くないな。
「やはり、最上階のアイツか…」
階段を探す。左右に二つか。
「俺は右派なんでね」
右側にらせん状になっている氷の階段を上る。すると、武器庫の様な小部屋に出た。
様々な武具を模した氷の模型らしきものが並んでいる。
だが、所詮は氷。一振りでもすれば壊れそうなものだが。
「何かある…とすれば」
オレは手近にあった、氷の斧を手に取り、外壁に強く切りつけてみた。
ズガガガガガ。
同じ氷のはずなのに、斧には全くダメージが無く、壁が削れていた。
「やっぱり…氷にも強度があるのか…? 質か…何か種類が違うってのか?」
オレはハッとする。…氷の錬成術…!
オレは咄嗟に『本』に目を通す。
錬成自体は載っていないが…、さっき橋を作った要領…で!
『2-2 アイス・ブロッキング』と『3-3 ルーン・ステイン』を同時発動!
加えて…『4の章、1の節。蓮氷!!!』
オレの前には、強化された氷が形を変え、そっくりな斧を作り出した。
クロカの用意したこの結界世界の中じゃなかったら、とても使えない大技だ。
「さて。ここからだが」
オレが作った氷の斧を、さっきと同じように壁の亀裂に打ち付ける。
ガキィィッィィィィィン…
「ッッッッ!!」
思わず両手を離す。とんでもない衝撃だ。
斧は折れてこそいないが、ところどころ亀裂が入ってやがる。
氷の壁は……ダメだ効いていない。
しかも、時間と共に徐々に修復されて来ている。
アイデアは悪かなかったが、オレの錬成はまだまだ甘いってことを認めねぇとな。
「ま、ここにある氷の武具で壁に穴開けて、最上階に外からリベンジって手段もあるが…」
…いや、やめとこう。最上階の内部がどうなっているかも分からないし、さっきのヤツの攻撃もやばかった。
とりあえず、この氷の武器庫は使えそうだな。
いくつか、持てる武器を巻き付けて部屋を出た。
ビキビキビキッ…バラバラバラ…。
「!!」
部屋を出た瞬間、氷の武具は砕け散って見る影も無くなってしまった。
この部屋でしか使用できない…だと?
…チッ…持ち出し禁止…塔の機密ってやつかい。
オレはもう一度部屋に引き返して、辺りに隈なく目を見張らせる。
「……………………。」
この部屋には≪意味≫がある。それは紛れもなく、“氷から錬成する技術”だ。
…もうひとつ、試してみたいことがあった…
オレは、もう一度両手をかざして唱える。
『2-2』×『3-3』×『4-1』。使うのは同じ公式だ。だが違うのは…!
ピキィィィィィィン…!
…今回生成したのは盾。それも大型の雨傘くらいはある重量級。
試すのは、もちろん“強度”だ。
氷の武器庫に残っている武器を探す。…適したエモノは決まっている。槍だ。
「ホコタテ検証といこうじゃねーか」
オレは氷の槍を手に取ると、渾身の力で、出来立ての盾めがけて振り放った。
バキィィィィィィン! …カラカラカラ…ン。
何てこった。オレ特製の盾が真っ二つに割れちまった。
やはり、根本的に何かが違う。錬成するための「何か」…!?
「チッ。このまま先に進んでもいいんだが…」
オレの直感が言ってやがる。ここで“強化”を学んでおかないと、後がヤベェってなぁ。
…考えろ。そもそもこの世界はクロカの与えた『試練』なんだ、この『本』の中に必ずヒントはある。
…次回へ続くぜ。
この「氷の武器庫」には、錬成に関する情報が必ずあるはずだ。
オレは自分の直感を信じて、その謎を解き明かす。
トレジャーハンターを舐めるなよ。
次回、『氷の巨塔③』でまた会おう。




