第12話 職員
俺は今冒険者ギルドの目の前に居る。
ギルドの外観は────それっぽくないというか、酒場みたいになっていて入ったら全員に睨まれるような感じかと思ったら、普通の商館みたいだった。
改めて思えば、さっきの子供たちでも利用している場所なのだから、そこまで無法なわけもないかと納得しつつ、少し緊張しながらも扉を開けて中に入る。
入り口近くの受付のような場所に居た、年配の柔らかい感じのおばさんに声をかけてみた。
「えーっとすいません、魔物の核の買取ってどこでしょうか?」
「それでしたらここの突き当たりの部屋の中でやってますよ。ここのギルドカードはお持ちですか?」
「いえ、持っていないです」
「なら作ってからの方がいいですよ。買い取り額が少量ですがアップしますので。簡単ですから手続きを済ませてしまいましょうか」
「じゃあお願いします」
手元の魔道具らしきものをちょいちょいと操作する職員さん。随分手馴れた様子である。
「では、ここに指を入れて5秒ほどお待ちください」
言われたとおりにゴツイ魔道具に指を入れる。少々不安な感じもしたが特に何も無く5秒が過ぎた。
「もういいですよ。これで登録は終了です」
「なんか簡単ですね」
ニコっと笑う職員さん。若い頃は美人だったろうな~と思わせる微笑に和んだ気分にさせられる。
「これが身分の証明用のカードで、注意事項などはこの小冊子に全て書いてあります。冊子は貸与なので後日読み終わったらはやめに返してくださいね」
「あ、はい」
思ったよりもはやくスムーズに登録が完了した。
とはいえ、宿の手配もしなければいけない俺はゆっくりもしていられない。
買い取り用の部屋らしいところに足早に歩き、無心でドアをあける。
部屋の中には3つほど窓口があり、人がいるのはそのうちのひとつ、40ぐらいのおじさんの窓口だけだ。
「あのー、魔物の核の買取お願いします~」
「ほいよ、じゃあこの容器に入れてくれ」
俺は風呂敷もどきの上着のきつくしまっていた結び目をいそいそと解いて、貰った指定の容器の中にばらっと広げた。
「お、結構取ってきたね。この大きさだと殆どラージバニーか。大変だったろ?」
「ははは、まあそこまでは。一応クラス持ちなんで」
「ほお、クラスって戦闘系か」
「そりゃそうですよ、〈村人〉のクラスは普通はクラス持ちとは言いませんから」
「はっは、確かにそうだ」
おじさんは言葉を交わしながらも手は休めない。
おお、職人だ。いや、職員か。
受付の婦人もそうだがここの職員さんは対応がはやくて、あたりも柔らかいし感じがいいな。
俺の村の奴らとはえらい違うな~と和みつつ────まあ人は皆、利害関係のしがらみで生きてるからほんのちょっと歯車が掛け違えばこの先どうなるかは分からないな。
人は素晴らしく、そして怖い。
そんなことを考えていると精算終了の声をかけられる。
「スライム核が1個100ルトの32個、ラージバニー核が1個200ルトの237個で合計が50600ルトだ。どうする? カードに貯めておくか?」
「2万と端数だけ現金で貰えますか。 後はカードで」
「おうよ。少し待ってな」
おじさんは出したカードを受け取りつつ、カチャカチャと魔道具を操作している。
大して待たされずにカードと現金が差し出される。
「ほら。またこいよ」
「どうも~」
そして軽く手を振りながら部屋を後にした。
さて、後は宿の手配か。