第壱話 不正アクセス/ERROR:INTRUDER 後編
今回の話は戦闘メインだぜ!
あと、色々設定を覚えておかないと話がわからんとこもあるぞ
大体の単語は現実のIT系の単語だから、調べれば出てくるやつもあるぜ。
ここは、全てが充足であるが管理されているーーってこの話はさっきしたか。
ーーパリン。
空間に、巨大なガラスのひび割れのような『亀裂』が走った。
システムが【警告:規定外のアクセスを検知】と叫ぶ中、引き裂かれたサーバーの隙間から一人の少年が禍々しくも美しい二振りの太刀握りしめながら降り立った。
少年かしたら二回目の接続をし、少年の口元は狂おしいほど不遜に吊り上がっていた。
「......フッ」
それは至高の楽園をあざ笑う不敵な笑みでもあり、これから始まる『逆襲』の合図でもあるかのようだ。
大気が不自然に歪み、極彩色のデジタルノイズが火花となって飛び散る。
アクセス完了。
そこは、先ほどまでソカが忌々しげに語っていた『原点サーバー』の入り口、貴族たちの住む城下町への門に降り立った。
足元に広がるのは、塵一つない純白の大理石。傷を負えば次の瞬間には細胞が強制修復され、極上の料理がテーブルに無限にリビルドされる。管理者がプログラミングした、イージーモードの幸福洗脳プログラムが施された歪んだ楽園。
「な、なんだお前は……!? どこから侵入した!」
「薄汚いスラムのゴミが……! 警備兵と、ペイローダーを呼べ!」
サーバーの中心部である城へとつづく、メインストリートを歩いていた貴族どもが悲鳴を上げる。
ソカは彼らの怯えきった顔を鼻で笑い、首の骨をバキリと鳴らした。そして、部屋の隅から持ち出してきた二振りの太刀――消滅の能力を持つ【果鏡落着・歪刃】と、創生の能力を持つ【礎原胎動・擬刃】をおもむろに引き抜く。
「おいおい、そんなに大声を出すなよ。せっかくの最高なショウタイムだろ?」
大理石を蹴る音が響くのと同時に、そこらの屋台の屋根上から光の粒子が集い、軍の誇るエリートペイローダーたちが姿を現した。その数、およそ十二人ほぼ一個小隊分の人数である。彼らは一様に洗練された白銀の軽鎧を纏い、手には触媒となる長剣を握っている。
「警告する。不法侵入オブジェクト。直ちに全機能を停止し、データ消去判定を受け入れよ」
エリートたちの声には、絶対的な余裕があった。それもそのはずだ。この原点サーバーにおいて、特権階級とその尖兵には、世界の理そのものが味方している。彼らの放つ攻撃はシステムによって『確定クリティカル』へと書き換えられ、敵から受ける攻撃はすべて確率を無視して『自動回避』される。仕様そのものが、最初から無敵として固定されているのだ。
「フォーメーション展開。詠唱開始」
隊長の合図とともに、ペイローダーたちの周囲に、正規のコードである英数字の文字列がタワー状になって超高速スクロール展開され始める。まばゆい光の壁がソカを包囲していく。
だが、ソカは怯むどころか、その瞳にドス黒い狂気と執念の炎を宿らせた。
「確定クリティカルに、自動回避? はっ、世界そのものがお前らを贔屓してんならよ……」
ソカの右手に握られた【果鏡落着・歪刃】の刃が、不自然な黒いスパークを放ち始める。
「その世界のルールごと、バグらせて、叩き潰すまでだ!」
通常、ハックを発動するには長い詠唱が必要となる。しかし、ソカが唇を動かした瞬間、彼の周囲に展開されたのは正規のコードではなかった。システムの脆弱性を強引にこじ開け、コードの記述を極限まで端折る、ソカだけの特権――『不正文字列』。
中級ハック、無詠唱、即時発動。
「【空中座標固定】!」
ソカの身体が、地面を離れて何もない空中に向かって跳ね上がった。
「なっ、空中だと……!?」
驚愕するペイローダーたちの頭上、虚空の座標に不可視の「足場」を固定し、ソカはそれを踏み台にして三次元的な超高速ドッグファイトを仕掛ける。上空から弾丸のような速度で肉薄するソカに対し、エリートたちは慌てて長剣を突き出した。
システムが作動する。貴族側の攻撃はすべて『確定クリティカル』。避けることのできない必殺の一撃がソカの肉体を捉えるはずだった。
しかし、ソカの網膜にはすでに【アナライズ&クラック】の赤黒いシステムログが常時展開されていた。敵の不可視のHP、現在のバフ状態、そして次に放たれる攻撃の「行動予測線」が、すべて透けて見えている。
ソカは空中座標固定のハックをミリ秒単位でオン・オフ切り替え、予測線のわずか数ミリの隙間をすり抜けた。バグによって処理落ちを起こした『確定クリティカル』の判定が、ソカの衣服をかすめるだけで虚空へと霧散する。
「バカな!? 我々の『確定クリティカル』を物理的に回避したというのか……!?」
「いいや、違うね。俺はお前らの攻撃を避けたんじゃねえ。お前らの攻撃の『優先度』をハッキングして、ただの空振りに上書きしたんだよ!」
ソカは着地と同時に、左手の【礎原胎動・擬刃】を最も近くにいたペイローダーの胸元へと突き出した。
本来、この世界には絶対に越えられない、管理者が定めた絶対の壁が存在する。
『ヒトに直接ハックをすることはできない』
生きている人間のデータは強力に暗号化保護されているため、基礎鑑定ハックでログを見ることもできなければ、バフやデバフの文字列を肉体に直接干渉させることもできない。それがこの世界のペイローダーたちが極端に少なく、ハックを主軸に戦えない最大の理由だった。
だが——数億回も脳を焼きながらバグを弄り続けたソカだけは、その絶対の壁を完全に破壊していた。
「喰らいな。俺からのサービスだ」
突き出された太刀の先端から、どす黒い不正文字列が、暗号化の防壁を無理やりこじ開けてペイローダーの肉体内へと直接注入された。
【エラー:内部コードの強制書き換えを実行】
【対象オブジェクト:移動速度90%低下】
【システム判定:『自動回避』の優先度を最下位に固定】
「が、あ、あぁぁぁっ……!? 身体が、動か、ない、防壁が……っ!」
直接デバフを注入されたエリートペイローダーの肉体が、極彩色の激しいノイズを上げてその場に凍りつく。世界の理であった『自動回避』のシステムログが、ソカの放った圧倒的な優先度のバグデータに完全に上書きされ、赤黒いエラーを吐き出して沈黙した。
「ほら、どうした? 自慢の『自動回避』で避けてみせろよ、お勉強上がりのエリート様が!」
閃光。
ソカの【果鏡落着・歪刃】が、硬直したペイローダーの首筋を容赦なく一閃した。
「ヒッ……!」という短い悲鳴とともに、その男の肉体はHPバーすら表示されることなく、一瞬で光の粒子へと変えられ、この世から消滅した。
「化け物め……! 散開しろ! 距離を取って広域制圧ペイロードを——」
残された仲間が消滅していく様を見て、ようやくエリートたちに本当の「絶望」が伝染する。彼らは安全な楽園で、絶対に自分が死なないというルールの元でしか戦ったことがない温室の愚者たちだ。
ソカは再び【空中座標固定】を発動し、虚空を蹴りながら、逃げるペイローダーたちの背後へと回り込む。
「遅え、遅え、遅えんだよ! お前らがダラダラと長い詠唱を並べてる間に、俺の脳みそはなぁ、お前らの一生分、もう焼き切れてんだわ!」
ソカが地を這うように低く構え、二振りの太刀を交差させる。
彼がハックネームを呟くたびに、空間のルールが、座標が、重力が次々とバグって書き換えられていく。
直接注入されるのは【筋力50%弱体化】【視界エラーノイズ】【コマンド入力遅延】そして、低確率だが決まれば【即死】するデバフだ。
ヒトに効かないはずのデバフの嵐を直接浴びせられた軍の精鋭たちは、まともな剣の一振りすら繰り出せず、ただの動く的へと成り下がっていた。
「あ、がぁっ!」
「助け……、管理、者様……!」
絶叫と、光の粒子が夜空に舞い上がる。
確定クリティカルの特権にあぐらをかいていた貴族兵どもが、文字通り蹂躙されていく。身に着けていた服を血とノイズで汚した貴族たちが腰を抜かして逃げ惑う中、ソカは最後の一人の胸を貫き、冷酷に太刀を引き抜いた。
ほんの数分前まで絢爛豪華だったテラスは、今や大理石が砕け散り、極彩色の残像ノイズだけが虚しく明滅する完全な廃墟と化していた。
「……チッ、中央のシステムアラートが本格的にうるさくなってきたな。長居は無用だ、ズラかるか...」
ソカは荒い息を吐きながら刀を納めると、テラスの縁から飛び降り、華やかな大通りを避けるようにして、薄暗く湿ったスラム直通の路地裏へと滑り込んだ。
入り組んだ路地裏の、誰の目にも留まらないゴミ溜めの片隅。
レンガの壁に背を預けた瞬間、ソカの身体が激しく崩れ落ちた。
「ガハッ、ゴホッ……! クソ、が……っ!!」
ソカの口から、そして目と鼻の穴から、どろりとした赤黒い血が止めどなく溢れ出た。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
視界が激しく点滅し、世界が二重、三重にブレて見える。脳内に直接、脳組織を物理的にハンダゴテで焼き付けられているかのような、凄絶な激痛が奔った。耳の奥では、鼓膜を引き裂かんばかりの耳鳴りと、システムエラーの警告音が大音量で鳴り響き続けている。
バグを使ってハックを発動する代償――『脳の過負荷』だ。
公式の安全なAPIを無視し、生のバグデータを脳という生のパーツで直接処理し続けた結果、彼のはすでにリークし、限界を迎えていた。一歩間違えれば、脳が文字通り焼き切れて即死する。
「はは……、クソ……数億回、研究で耐えてきたってのに……この頭痛だけは、マジで慣れねえな……」
ソカは溢れる血を乱暴に腕で拭うが、手の震えが止まらない。視界の端には、激しいノイズとともに赤い文字が明滅している。
【致命的なエラー:CPU温度が規定値を大きく超越しています。直ちに全プロセスを終了してください】
「終わらせられるかよ、せっかく戻ってきたんだ……! ここで止まったら、またあのクソどもにログを上書きされて消されるだけだ……!
ひとまず俺からの挑戦状は叩きつけれたんだ...」
ソカは己の崩壊しそうな意識を気力だけで繋ぎ止め、震える右手で半透明のホログラムパネルを展開した。その手指の動きは、脳の痛みに反比例するように、残像が生じるほどの狂気的な速度だった。
ここから追手を撒き、原点サーバーで生き延びるためには、この世界のシステムに「ただの市民である」と認識させるための通行証が絶対に必要だった。
ソカは中央管理プログラムのコードの脆弱性を強引にこじ開け、存在しないはずのダミーの市民ログを構築し始める。
幸いここはスラム街に続く路地裏だ。データを抜き取り放題な死体が、あちこちに散乱している。
その死体どもからデータを抽出し、複製、合成すれば新たな市民ログを構築できるわけだ。
【警告:不正なデータ生成を検知】
【警告:システム領域への不法アクセス】
目の前に次々と現れる真っ赤な警告パネルを、ソカは「うるせえ!」と右手で殴り飛ばして叩き割った。生のコードが彼の指先から流れ込み、偽りの身分が1行ずつ書き込まれていく。脳が焼けるような熱さがさらに増し、ソカの目からポタポタと血が床に滴る。
「ビルド……、しろ……! 間に合え……っ!」
執念が、世界のシステムを上回った。
数分後、耳鳴りのような警告音がぷつりと止まり、ソカの手元に淡い青色に光る小さなデータチップが生成された。完璧な『偽造身分証』の完成だった。
「……ハッ、ハハ……上出来だ。これで俺は、どこにでもいるただの『一般市民』さ……」
ソカはチップを懐に押し込み、壁に頭を預けて荒い呼吸を繰り返しながらも、路地裏へ潜り始める。
その画面の端で、世界のバグ侵食率を示すパーセンテージが、静かに、しかし確実に数値を上昇させて明滅を始めた。
原点サーバー、中央統括軍本部。
白磁のように美しい、無駄な装飾が一切排除された近未来的なハイテク司令室。
その中央に浮かび上がる巨大なホログラムモニターには、先ほどソカが壊滅させた空中庭園の凄惨な「虐殺」のログデータが、詳細なエラーリポートとともに映し出されていた。
「信じられん……、我が軍が誇る精鋭部隊が、詠唱なしの不正ハックによって一方的に全滅させられるなど……」
「ありえない。システム判定を完全に無視し、あろうことか生体の防壁をすり抜けて、直接デバフを注入してくる存在など……仕様上、絶対に存在するはずがない!」
モニターを見上げる将校たちの顔は青ざめ、狼狽した声が部屋に響いていた。彼らにとって、世界のプログラムは絶対であり、それに違反する存在は恐怖そのものだった。
だが、その動揺する幹部たちの後ろで、静かに、しかし圧倒的な威圧感を放つ人影が立ち上がった。
完璧に最適化された遺伝子。
生まれながらに無駄なコードを一切持たない、極限まで洗練された美しき肉体を持つ少年。
その腰には、世界に数振りしか存在しない最高位の真作太刀、創世のコードを宿す『出雲黎明ノ一刀』と、消滅のコードを宿す『尾張終焉ノ一刀』の二振りが、静かに、しかし絶対的な輝きを放ちながら鎮座している。
軍の大隊長にして、至高の楽園を維持する最強の執行官——。
その名は、シシュウ。
シシュウは冷徹な双眸を細め、モニターに映し出されたソカの赤黒い不正ログデータを見つめた。その表情には、怒りも、驚きも、恐怖すらもない。ただ、目の前にある「不具合」を排除するという義務感だけがあった。
シシュウは静かに歩みを進め、しかし部屋の空気を一瞬で凍りつかせるほどの絶対的な威厳を持って告げた。
「ーー世界の理を乱す不純物など、我が双刃の前に存在し得ない。安心しなさい。そのバグは、私が直接デバッグする」
どうもニンジンです。
投稿が1日遅れてしまい本当にすみません。
親にちと怒られてしまっていて….。
今回の第壱話後編は長くかけてとても満足しておりますが、長い分誤字、脱字してたり話の内容があんまり頭に入ってこなくなってしまっているかもしれません。
あとまだこの第壱話の後の話が全く決まっていないので、ひとまず少しお休みさせてもらいます。思い立ったがなんたらっていう感じで書き始めるのも良くなかったかも?
話の真ん中、すごく盛り上がってきたゾッてところまで内容が決まったらまた書き始めたいと思いますので、しばしお待ちください。出来れば十二月に投稿できたらいいな。
今回はここまでにしましょう。
また第II話の『4LTA CODE』で出会えることを願っております!
さいならー




