表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/31

音間さんは音間さん

 カーテン越しに朝日が差し込んでいた。


 首から下の感覚がなかった。だけどじわじわと、少しずつ神経が回復していくのを感じた。


 アイマスクは、どうやら電脳世界に入る前に音間さんが外しておいてくれたらしい。


 右隣には音間さんがいた。俺と同じように仰向けで寝ている。シングルサイズのベッドに、ギチギチになっていて狭苦しい。


「赤場くん」


 そう話しかけてきた音間さんの表情を見たかったが、首が動かない。


「どうして私を許してくれたの? 私は、赤場くんを殺そうとしたんだよ?」


「⋯⋯惚れてますから」


 音間さんのほうは回復が早いみたいで、俺のほうを向いてくれた。


「赤場くんって、全然普通じゃないよ」


「そうですか? だからずっと一人だったのかも」


「私と似てる」


 胸のあたりまで感覚が回復する。自分が呼吸していることを自覚する。


「これから生きていくけどさ、私は無価値なものに出会えるのかな」


「音間さんがそれを追い求めている時点で、そこには価値が生じていますからね。世界にただ一人ひとり、それを理解できている音間さんにすら発見できないなら、無理かもしれないです」


「そっか⋯⋯」


 腰回りにまで感覚が行き渡った。少しなら胴体を動かせる。


「音間さんにとって、俺って価値ある存在ですか?」


「有益かどうかでいえば、そうだと思う。だけど私が死ぬのを邪魔したからなぁ⋯⋯」


 やっぱり、音間さんって感覚がおかしいんだな。


 下半身にも感覚が戻る。そこで俺は、尻のあたりの生温なまあたたかく湿った感触に気づいた。


「音間さん、ごめんなさい」


「なに?」


「俺、寝てる間にウンコ漏らしてました」




 音間さんは笑った。俺も笑った。






(完)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ