第11話
今回の撮影は、それぞれのモデルが単体で行うものと、複数人で行うものの二つがあるらしい。
複数人での撮影時はいいが、問題は単体での撮影時だ。
撮影機材は一人分しかないため、各モデルに待ち時間が生じる。
大半はメイクや衣装替えなどで駐車場に止めたワゴン車に向かうが、それでも準備が終わって外で待つモデルはいる。
はあ、早速か……。
駐車場から二人のイケメンが歩いてくる。
一人は茶髪のゆるふあパーマのチャラい系イケメン。
もう一人は、金髪短髪のやんちゃ系のイケメンだ。
さて、何を言われるのやら。
「少し、いいかな」
「何ですか?」
茶髪ゆるふあパーマに生返事を返すと、隣の金髪短髪が前に出る。
「真佳とどういう関係なのか教えてくれよ」
「見ての通り彼氏です」
「「……」」
平然と答えると、二人は互いに顔を見合わせ「マジか」と声を揃えって言った。
「なるほど、真佳ちゃんはそういう趣味か」
「だとしたら厳しいな……」
「あの~」
この人たち、一体何がしたいんだ?
「あ~悪いな。俺たちは別に真佳狙いじゃないから」
「知り合いがちょっと、ね」
なるほど、二人はただの偵察か。
ということは本命が――
「ちょっと二人とも、真佳の彼氏になに絡んでるの?」
「「――っ、月菜……!」」
俺が二人に絡まれていると勘違いしてか、少しだけ顔をしかめて戸塚さんが俺たちの間に割って入って来る。
「月菜ちゃん、これは違うんだ」
「そうそう、俺たちはただ本当に真佳の彼氏かどうか確かめたかっただけだって」
必死な二人の言い訳を聞いて戸塚さんが俺を見てくるので、首を縦に振る。
「本当だとして、そんなこと聞く必要ある?」
「いや~俊くんが」
「おい、それは……」
「ふ~ん。なるほどね」
俺にはさっぱりの内容だが、戸塚さんは状況を理解したらしい。
「ねえ、いつまでいるの?」
「「――っ、す、すみませんでした!」」
息ぴったりに深々と頭を下げ、イケメン二人は俺たちの下を去っていく。
「ごめんね。二人とも悪い人ではないんだけど」
「それは何となくわかります。で、俊くんってのは?」
「見てればわかるよ。ほら」
そう言って視線を戸塚さんと同じ方向へ合わせると、駐車場の方から一組の男女が歩いてくる。
一人は金沢先輩で、もう一人は黒髪の爽やかイケメンだ。
「なるほど、あれが俊くんですか」
「そう。富水俊」
「で、彼は金沢先輩のことが好きだと」
「本人は否定してるけどね」
「ちなみに性格は悪い?」
「どうしてそう思うの?」
「何となく」
「最低~」
本当は性格の良いイケメン二人の態度から、俊くんは人を従わせるタイプの人間なのではないかと邪推した。
もし思った通りの性格なら、少々面倒だ。
そんなことを考えていると、撮影が開始される。
カップルをテーマにした撮影らしく、二人が距離を縮め笑顔を浮かべる。
「お似合いですね」
普通は金沢先輩と並ぶと俺を含め大抵は見劣りするが、彼はしっかりと釣り合っている。現場にいるイケメンの中でも彼はずば抜けている。
「もしかして嫉妬?」
「いや全然」
「自分に自信あるんだ」
「いや全然」
「ちなみに、私が好きっていったら?」
「金髪ギャルとかマジで無理」
「即答! 酷~い!」
可愛い系という点では違うが、やっぱり金髪ギャルで美少女という時点では姉貴と同じだ。
「てか、最後の質問何ですか」
「ただ聞いてみただけ~」
ラブコメなら好意を寄せる相手に聞く質問だが、この人の場合は本当に興味本位で聞いたというのがはっきりわかる。
健全な男子には酷な話だが、金髪美少女ギャルに苦手意識を持つ俺にとっては嬉しいという以外ない。
「あの、そろそろ解放してもらってもいいですか?」
「どうして、って、あ~そうだね」
遠くへいったはずのイケメン二人が恨めしそうにこちらを見ているのを見て、戸塚さんは納得した様子で俺の下を離れていった。
察しが良くて助かる。金沢先輩とは関係ないたところで、恨みを買いたくはないからな。
それから一時間ほど撮影は続き、十時半を回ったところで俺は現場から解放された。
解放されるまでの間、俊くんから一言も声をかけられるどころか、視線を一切向けられなかった。




