第10話
りりあから何とか逃げ切った俺は、電車で隣町まで移動し、待ち合わせ場所の公園まで来た。来たのだが……
何だよ、これ……
ジョギングを楽しむ人や小さな子供たちで賑わっているはずの公園内に、撮影設備が運び込まれ、その周囲に洒落た格好の中高生たちが集まっている。
「待ち合わせ場所、間違えたかな」
「間違えてないわよ」
疑問を口にしたところで、洒落た集団の中から見知った美少女が近づいてきた。
「思ったより早かったわね」
「まあ、色々と頑張りましたから。それより何ですか、これ」
「見ての通り、読モの撮影現場だけど」
「いや、それは何となくわかりますけど」
こんなの何も聞いていない。
「もしかして、急に予定が入ったとかですか?」
「いいえ。一月前には決まってたわ」
「じゃあ、何でこんなことを?」
牛久先輩を紹介してくれるだけなら、撮影が終わった後に待ち合わせということで良かったはずだ。
「あら、言ってなかったからしら」
金沢先輩は洒落た集団へと視線を向ける。釣られて同じ方向を見ると、洒落た集団の半数、イケメンたちが険しい表情を浮かべていた。
「男避け、ですか……」
「ええ」
「はあ……」
状況を理解した途端、大きなため息が出る。
「俺の純粋な気持ちを返してください」
牛久先輩を待たせてはいけないと思ったから、りりあを無理やり引き離したというのに……。
「悪かったわよ。言い忘れて」
「はあ……」
「嫌なら帰ってもいいのよ?」
「本当ですか……!」
「その代わり、夕子は紹介しないけど」
「え~」
「当たり前でしょ。夕子はそんなに安くない」
確かにそれはそうだ。
たかが一週間、学校でイキったチャラ男たちの相手をしたくらいで、あの牛久先輩を紹介してもらおうなどと、調子のいい話にもほどがある。
金沢先輩的に男避けが必要なのは、学校よりもこういった場であることを考えると、確かに男避けの役割を果たす必要がありそうだ。
「わかりました。やりますよ」
「ありがとう」
「真佳ー!」
俺が男避けを引き受けると同時に、洒落た集団から金髪ギャルが走ってこちらに向かってくる。
金沢先輩を名前呼びするあたり、少なくとも俺より年上だろう。
年上金髪ギャルは俺たちのところまで来ると、俺を値踏みするように見る。
「真佳、もしかして彼が?」
「ええ。私の彼氏よ」
「三島見心です」
「私は戸塚月菜。よろしくね~って、真佳そろそろ始まるよ」
「そういうことだから、また後でね」
金髪ギャル、戸塚さんに連れられ金沢先輩が洒落た集団へと戻っていく。
俺から金沢先輩の視線が離れたためか、さっきよりイケメンから向けられる視線に鋭さが増す。
さて、これからどうなることやら……。




