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たんころりんの噺
東京を江戸と申した時分のお話。
秋になり熟れた柿をもがずに放っておいてしまうと『たんころりん』という妖怪になると恐れられていた。たんころりんと化した柿は夜な夜な僧侶の姿へと転じて町を徘徊するという。歩くたびに裾や袂から柿の種がポロポロと落ちるのでそれだと知れる。やがて町を大方周り終え、自らの柿の木の前に帰るとすっと消えてしまう。
◇
こうして町のあちこちを回るたんころりんであったが、どういう訳か花火職人のいる区画には立ち寄らないのである。皆でどうしてかと首を傾げていると誰かが言った。
「花火師の家はカキ厳禁だからだろう」
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