亀姫の噺
『真田小僧』より
東京を江戸と申した時分のお話。
会津の猪苗代城で起こった怪異である。
この時の城主、加藤明成は会津藩の二代目の藩主であり、そのときは堀部主膳という者が城代を務めていた。
年の瀬の事。堀部が城の中で一人でいたところ、どこからともなく見覚えのない禿頭の童が現れた。童は堀部を見ると抑揚のない声で告げた。
「貴殿はまだこの城の城主に挨拶をしていない。今日は城主様が謁見を許すと申しておる。急いで支度をするがよい」
「無礼な童め。ここな猪苗代城の城主は只今は我が主君、加藤明成なり。他に城主などおらん」
堀部は童を一喝して睨みつけた。
だが、童は怯むどころか怒気を持って堀部を睨み返してきた。そして嘲笑を交えた態度で言う。
「姫路の長壁姫様と猪苗代の『亀姫』様を知らずや? 貴様の命運はすでに尽きたり」
と言い残すと、煙の如く姿を消してしまった。
◇
年が明けた、正月の朝。堀部は城主に拝謁し年始の挨拶をしようと城へ向かった。ところが広間に着くと、自分の席に棺桶と葬式道具一式が置かれていたのである。他の家臣たちに尋ねても、ついに誰が置いたものなのかは分からなかった。そればかりか、その日の夕方にはどこからともなく餅を付くような音が聞こえて来るのであった。
堀部はあの時の童の言葉を思い出していた。それを思い出す度に嫌な汗が流れ不安に心を潰されそうになっていた。
そして堀部の嫌な予感は当たっていた。
同月の十八日。城の便所で倒れたのを皮切りに、どんどんと具合が悪くなり二日後にはあっけなく、堀部は息絶えたのだった。
◇
Q 亀姫は気難しいが焼き芋を備えれば祟ることはないという。それは何故?
A サツマには敵わないから。
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