一目連の噺
一目連神社に祀られる天目一箇神という天候を操る片目の龍神が、習合し同一視されたことで『一目連』という妖怪が生まれた。
一度顕現すると、凄まじい暴風雨を巻き起こすと言われている。その風は数百軒の家を潰し、千人がかりでようやく動かすような大鳥居を無惨にも吹き飛ばすといい、大変に恐れられていた。
されども風の神は雲を操り、雨や陽の恵みをもたらすこともあるため信仰を集めてもいた。そのために一目連の神社の社殿には扉がなく、これは一目連が自由に出入りができるようにするためだという。
◇
ある時の事。
一目連神社を祀る村の海に海賊が出没するようになった。
漁船、商船を問わずに襲われて村はすぐに困窮した。そこで海賊たちを成敗するために、村中が総出で一目連神社に祈祷を捧げた。
その祈りが通じてか、一目連は嵐を巻き起こして海を荒らした。が、不思議な事に村の船には波がかからず終始穏やかものであった。
こうして海賊の船は悉く沈むか流されるかして、村には再び平穏が訪れた。
一目連は村人たちの、イチガンとなった祈りを聞き届けたのだった。
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