76/365
一本だたらの噺
東京を江戸と申した時分のお話。
奈良と和歌山の境に果無山脈に化け物が住んでいた。
その化け物は皿のような大きな一つ目に一本足という風貌をしており、凶暴な性質なためによく人が襲われていた。
その辺りの者たちは、この化け物を『一本ダタラ』と呼んでいた。ダタラとは鑪のことであり、つまりは鍛冶屋の事である。鍛冶工は鞴を使う関係で片脚を患い、炉の熱で片目を潰す者が多かった。一本ダタラは、そのような鍛冶工に関わりのある妖怪だと信じられている。
◇
とはいえ一本ダタラは、一年の内で「果ての二十日」と呼ばれる十二月二十日のみに山に現れる。なので近くに住む山に携わる人々は、この日に山に入ることを禁じることが多かった。にも拘わらず、その決まりを破って山に入り、一本ダタラに襲われる者が後を絶たなかったのである。
鞴を踏み、鉄を作っていた鑪師の化け物たる一本ダタラの住む山だけに、「同じテツを踏む」者が多いのだろう。
読んでいただきありがとうございます。
感想、レビュー、評価、ブックマークなどして頂けると嬉しいです!




