71/365
次第高の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
ある町の外れに『次第高』という化け物が出た。
道を歩いていると、それは不意に現れる。行き遭った人の目線よりも少し高く、全貌を見定めようと見上げてみると、次第高もそれに合わせて大きくなっていく。
そうして驚かされたり、引っくり返ったりする者が後を絶たなかった。
中には見上げると害があるならば、下へ下へと目線を落とせばどうなるかと考えた者がいた。実際にそれを試すと次第高は消え去ってしまうことが分かり、近隣では次第高に出遭った時は、目線を落として難を逃れていたという。
◇
ある時、そんな次第高の噂を知ってか知らずか、一人の侍がやってきた。
やがて次第高に遭った侍は足を止めて、ぐいっと目線を上にやった。
当然、次第高はどんどんと大きくなっていく。だが流石に侍というべきか、そんな次第高の姿を見ても一向にたじろぐ様子はなかった。そればかりか、ずいっと足を進めて一喝した。
「邪魔じゃ、どけい」
すると次第高は、
「その豪胆さ、見上げたものじゃ」
と言って消えてしまったそうな。
読んでいただきありがとうございます。
感想、評価、レビュー、ブックマークなどして頂けると嬉しいです!




