41.戦争準備
魔人族襲撃の知らせが各ギルドを通じ、大陸中へ届けられた。首都エルパムへの侵攻が予測されるなか、各都市の警戒対策も同時進行していた。
魔人の言葉を鵜呑みにせず、エルパムに戦力を集めつつも監視や偵察部隊を派遣していった。
期日の十二月まで、早くてもおよそ二ヶ月。
だがその言葉が真実を語ったかどうかは分からない。
それを踏まえ、光帝は出来る限りの防衛態勢を整えていった。
特に進行が予測される首都エルパムの防衛は、強固な布陣を敷くことになっている。
それは、人族の総力戦とも言えた。
街の外側を鍵師ギルドが請け負い、街の内側は王国の国王軍が守護し、鍵師警察─通称「鍵警」が民を間近で守る。三層の防衛ラインが今回の布陣だ。
ギルドが魔物の荒事を専門とするなら、鍵警は対人の荒事を専門としている。
ギルド、王国、鍵警。
この三つが、人族社会における三大権力で、三大勢力でもある。
それが総出となる今回の戦争は、まさに人族の総力戦と言えよう。
稀に見る三大が集うなか、他所の二組織に嘗められる訳にはいかない。それはギルドとて、同じであった。
ギルドは二つ名の首都エルパム集結を決定し、ギルド支部は合鍵を主軸に動き始めていた。
戦力が集中してしまうと、どうしても遠方に隙が出来てしまうのは仕方のないことだ。今までの戦力のままならば、全てを補うには大陸は広すぎる。
だがここ最近、 降って湧いた様に強者がギルドに現れた。
それを、光帝が遊ばせて置く訳がなかった。
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「くそっ!人使いが荒すぎる!鳴神っ!」
紅葉の周囲を、光が敵に向かい何本も枝分かれしながら走った。
現在、紅葉は六喰の鍵師としての依頼で、各地に赴き奮闘していた。いや、させられていた。
魔人族の言葉では、決戦日は早くても二ヶ月後。その間に他所の魔物が大人しくしているかと言われれば、それはないだろう。
今は戦力が首都へ集結する最中で、六喰の存在は幹部の者しか知らされていない。開戦時の士気向上の為と、光帝の発案で発表が十二月頭に行われることになったからだ。
だが日の目を見ていない最高峰の戦力を、光帝が自由にさせるはずがなかった。
紅葉は光帝が直々に選んだ依頼を、無理矢理(二つ名の持ちの規則を盾に)紅葉へと押し付けた。
内容は、東側の大陸で手に負えない魔物の討伐である。
残る西側は、別の二つ名持ちが対応することが決まっていた。
日の目を見るまで残る二ヶ月、紅葉の依頼スケジュールは光帝の緻密な計算の下、こなせるギリギリのラインを維持された過密スケジュールと化していた。
ただ不平不満を言いながらも、
「うはっ!?これ旨い!」
見知らぬ土地の見知らぬ魔物、食したことのない味に、紅葉は喜んでいた。




