47/59
桔梗 小夜子:捌
わたしは軍本部を歩き、父の元に向かっていた。
手に握る、二本の髪を見る。
正気がある内に、保険を作っておかなくちゃ。
クローンという技術があると聞く。細胞を培養し、同じ生き物を作り出す。
「しっかし……参ったなぁ……」
思考に対し身体の反応が鈍い。もう考える事すらままならない。
きっと、時間切れが近いんだ。
例えて言うなら、例え……たとえ……もう、いいかな。
遺言を伝えておこう。
遺産を継ぐ者は、技術が確立した時、この人間を再生すること。
わたしと、特佐を再生すること。
今度は、今度こそは最期の最期まで一緒に居たい。
もしかしたら、生まれる時には贋作は居ないかもしれない。
それなら、それでいい。
平和な世界で、再び一緒に過ごしてやる。
そして次こそ思いっ切り、毎日毎日、特佐が嫌になるくらい抱きしめまくってやる。
なんなら母親になってもいいです。
響子さんは培養なんかしなくても……なんかあれだ。生きてそう。
ライバルめ。今度こそ正面切って戦ってやらあ。
でも、どうか。
どうか、みんなが笑って過ごせますように。
特佐――お別れを、今の内に言っておきます。
どうか、お元気で。
また、お会いしましょうね。




