#217 ロリコンを蘇生しつつ、ゴーカートへ
「ここで血を吐いたら切腹ここで血を噴いたら斬首ここで血を吐いたら服毒ここで血を噴いたら爆死ここで血を吐いたら――」
ジェットコースターから降りた後、僕たちは近くのベンチに来ていました。
千鶴お姉ちゃんは何と言いますか……すごくその、死にそうな顔、って言えばいいのかな……? うん、真っ白になって儚い笑みを浮かべていました。
手だけはぎゅっと握ってたけど……。
瀕死の千鶴お姉ちゃんについては、寧々お姉ちゃんと藍華お姉ちゃんの二人が肩を貸す形で出て、近くのベンチで休むことに。
その際に、グロッキーだったので、膝枕をすることになったんだけど……。
「ま、まさか、みたまちゃんから膝枕をしてもらえるとはぁ~~~っ……! こ、この、異次元の柔らかさは人をだめにする膝枕ぁ~……だ、だがしかしっ、ここで吐血、鼻血を吐き、流すのは死罪ッ……!」
顔の半分は嬉しそうなのに、もう半分が迫真の表情と言うすごく器用な状態に。
どうやってるんだろう、それ……。
「器用すぎるぞ、あれ」
「ん、どうやったら顔半分を死ぬほどだらしない笑みにして、もう半分を迫真の思案顔になるのか聞いてみたい」
「千鶴お姉ちゃん、大丈夫? 動けそう?」
「生膝枕を堪能したいですぅ~~~~!(なんとか動けそうですよぉ~!)」
「千鶴さん逆逆! 本音と建前が逆になってるぞ!?」
「ハッ!? 至高の枕と言っても過言ではない椎菜ちゃんの柔らかい太腿を堪能したいですぅ~!?(私は大丈夫なのでそろそろ行きましょうかぁ~!)」
「ん、まだ反転してる。よほど膝枕から離れたくないらしい」
「あ、あははは……えーっと、もうちょっとこうしててもいいんだけど……遊ぶ時間が減っちゃうよ?」
「ぐっ、くぅっ……し、椎菜ちゃんは、たくさん遊びたい、ですよねぇ~っ……?」
「それはもちろん! 久しぶりにこの四人だけで遊びに来てるから、めいっぱい遊びたいよ!」
「――さらば膝枕……さぁ、ここから遊びに行きましょうかぁ~~~!」
「変わり身の早さがすごいぞ……!」
「ん、さすがロリに激甘なロリコン」
「んっと、無理しなくてもいいんだよ?」
「いえぇ~! 二度膝枕をしてしまうと、本格的に私がご臨終し、せっかくの遊園地で遊べなくなりますからぁ~~~!」
「そ、そっか」
「二度膝枕ってなんだぞ……?」
「ん、二度寝の言い換えじゃない?」
「あぁ~!」
「さぁ、行きましょぉ~~~!」
途端に元気になった千鶴お姉ちゃんのその掛け声と一緒に再び行動開始。
「それで、次はどこ行く?」
「ん~、あたしはいろんなところに行きたいけど……千鶴さんが絶叫系苦手ェ! ってのが発覚下ちゃったから、そこ以外かな?」
「私のことは気にしなくても大丈夫ですよぉ~? その都度、椎菜ちゃんの膝枕で回復しますしぃ~~」
「それで回復できるの?」
「信者としては当然ではぁ~?」
「そ、そうなんだ」
信者さんって、日常生活ではあんまり聞かない気がするし、何より信仰の対象にされることってないはずなんだけどなぁ……。
なんで宗教みたいなのがあるんだろう。
そもそも、たくさんの信者さんがいるってお話だし……さすがにお姉ちゃんたちの誇張表現だと思いたい……僕自身、見たことがないので……。
「ん~~……お、マップのこのエリア、なんかゴーカート系のアトラクションがあるっぽいぞ」
「あ、本当ですねぇ~。たしか、小さな車を運転できる、って感じでしたっけぇ~?」
「ん、それで合ってるはず。見た所、自然豊かな場所だから、そこを見て回る感じっぽい」
「へぇ~、それすごくいいね! こういうところでしか僕はまだ車の運転ができないから、ちょっと行ってみたいかも」
「ならそこで決まりってことで! じゃ、行こ行こ! ちょっち遠いけど、話しながら行けば問題なしってことで!」
「ん、行こう」
次の目的地がささっと決まったので、そこに向けて出発。
この遊園地、かなり広いし目的の場所まではそれなりに歩くけど、こうやって歩くのも遊園地の醍醐味って感じがして好きです。
「じゃあ、早速何かお話しますかぁ~。ではぁ~……椎菜ちゃんに聞きたいんですけどぉ~」
「あ、うん、何でも聞いて!」
「ありがとうございますぅ~。えーっと、今日はみまちゃんとみおちゃんの二人は、こちらに来るのではなく、博物館に行ってるとのことですけどぉ~……どんな博物館に言ったんですかぁ~?」
「あ、うん。自然博物館かな? 僕も小さい頃によく連れてってもらったけど、内容としては恐竜とか昔の生き物の化石とかそれを再現した映像、あとは模型なんかが見れる場所だよ。敷地内には子供向けの遊び場なんかもあったし、何よりコンセプト的にすごく子供向けの場所なんだよ」
「へぇ~! 博物館なんて珍しいと言うか、小学一年生じゃ行かないし、楽しいとは思えなさそうって思ってたけど、それならたしかに楽しそうだね」
「うん、すごくテンションが高かったよ」
二人とも、出発する時にっこにこだったからなぁ……。
たしか、お友達のお家の人が引率してくれてるらしいです。
「ん、色々と出自がアレだったから色んな意味で心配だったけど、ちゃんと馴染めてる」
「二人から色々と学校のお話とか聞くんだけど、今では同じ学年の子のほとんどとお友達だって」
「なにそれすごいぞ……」
「さすがみまちゃんとみおちゃんですねぇ~。きっと、学校の人気者なんでしょうねぇ~」
「あはは、みたいだね。僕も学園への登校中に、二人のお友達と会うことがあるんだけど、その時に色々と聞いてるしね。みまちゃんとみおちゃんの二人のことが好きな男の子も結構いるし、子供ながらにアピールしてるらしいよ?」
「ん、椎菜が椎菜だから、将来はきっとピュアな双子美少女として人気者になるはず。身長は……ん、期待できないかもしれない」
「藍華お姉ちゃん酷くないかな!? ぼ、僕だって、まだ身長は伸びるかもだもん! ……多分」
「椎菜ちゃん、自分でも自覚を……」
「……僕のお父さんとお母さん、どっちも背が低い家系らしいし、お父さんの方は筋肉が付きにくい家系らしいからね……だから、ハイブリッドな僕って、背が伸びないんじゃないかなぁ……って、思ってね……うん……」
あの時はすごくショックだったなぁ……。
お父さん、申し訳なさそうに笑ってたけど……。
「実際、体の成長については、遺伝が多いですからねぇ~。我が百合園家も子供好きが多い家系ですしぃ~」
「その中でも千鶴さんは異端だと思うぞ」
「ん、違いない」
「否定はできないですねぇ~」
「百合園家……あ、そうだ。千鶴お姉ちゃん」
「なんですかぁ~?」
「前にみまちゃんとみおちゃんの授業参観に行ったことがあったんだけど、その時に千鶴お姉ちゃんのお姉ちゃんに会ったよ!」
百合園家と言う言葉を聞いて、僕は授業参観を見に行った日のことを思い出して、その時に千鶴お姉ちゃんのお姉ちゃんに会ったことを言いました。
すごく千鶴お姉ちゃんに似てたっけ。
「あらぁ~、陽翠姉さんに会ったんですかぁ~?」
「うん! 二人の担任の先生だったよ?」
「そうなんですかぁ~!? な、なんと羨ましいぃ~~~! 私でも、あの二人とそこまで会えるわけじゃないのにぃ~~……ぐぬぬぅ」
「え、千鶴さんお姉さんがいたの!?」
「ん、知らなかった」
「実はいるんですよぉ~。姉は小学校の先生をしてますねぇ~」
「……それ、大丈夫? こう、ロリコンの変態だったりしない?」
「ん、ショタコンの方かもしれない」
「いえ、ロリコンなのは家族の中で私だけですよぉ~」
「「やっぱり突然変異……」」
「否定できないですねぇ~」
「じゃあ、子供好きなんだね、お姉さんって」
初めて会った時も、すごく柔らかい雰囲気で、優しそうな人だったし。
授業の様子も、子供が大好きなんだろうなぁ、ってわかるくらいだったからね。
「そうですねぇ~。小学生くらいの子供が好きらしいですよぉ~。元気いっぱいで、見ていてとても微笑ましいからとかぁ~」
「すごく真っ当だぞ……! 千鶴さんのお姉さんなのに!」
「ん、ものすごくまとも。千鶴の姉なのに」
「私はディスってもいいですけど、陽翠姉さんをディスるのはダメですよぉ~!?」
「「ディスってるのは千鶴(さんだぞ)」」
「ならいいですぅ~」
「よくないと思うよ!?」
ディスるのはよくないと思います!
◇
そんなお話をしつつも、他にもいろんな話題で談笑をしていると、目的のアトラクションに到着。
その間に予約は済ませてあるので、すぐに順番が回ってきました。
この乗り物は二人乗りらしくて、一人は運転、一人は助手席みたい。
なので、再度グッパーでペアを決めて……
「おっ、あたしは椎菜ちゃんとだぞ!」
「よろしくね!」
「ん、私は千鶴」
「よろしくお願いしますぅ~」
僕と寧々お姉ちゃん、藍華お姉ちゃんと千鶴お姉ちゃんというペアになりました。
「んで、運転はどっちがやる?」
「寧々お姉ちゃんの好きな方でいいよ?」
「ふーむぅ……じゃ、あたしが運転してもいい?」
「もちろん! 寧々お姉ちゃんがどんな運転をするのか楽しみ!」
「ふっ、椎菜ちゃんを楽しませるぞ!」
「ん、こっちは私が運転する。いい?」
「いいですよぉ~。私は車を運転してましたしぃ~。……そう言えば、藍華さんは免許は持ってるんですかぁ~?」
「マニュアルの方を持ってる。車はないけど」
「そうなんですねぇ~」
「ん、泥船に乗った気持ちで安心してほしい」
「それ沈みますよぉ~!?」
「大丈夫。泥船も一定時間は浮いていた。すぐには沈まない。沈まないうちに生還すれば問題はない」
「生還という単語が使われてる時点でアウトだと思いますがぁ~!?」
藍華お姉ちゃんと千鶴お姉ちゃんの方は大丈夫なのかな……?
二人のやり取りを聞いて、少し心配になったけど、そうこうしているうちに僕たちの番に。
どっちのペアが先に行くか話し合った結果、僕と寧々お姉ちゃんの二人が先に行くことに。
「右のペダルがアクセルで、左がブレーキとなります。ガードレールの代わりとしてタイヤや木の柵などがありますが、速度を出して突っ込んだりしないようにお気を付けください。ゴール直前になりましたら、スピードをゆっくりにするようお願いします。では、いってらっしゃい!」
「じゃ、行くぞ、椎菜ちゃん!」
「うん!」
寧々お姉ちゃんの運転でカートが動き出しました。
コースはかなり自然豊かで、綺麗な池や木々に囲まれています。
常緑樹がたくさん植えられているようで、冬なのに緑がたくさん。
ただ、桜の木も植えられているみたいで、葉がすべて落ちた木もあります。
「いやぁ、あたし、運転免許持ってないから、こういうのすごくワクワクするぞ。あ、スピード大丈夫?」
「うん、大丈夫! もうちょっと出しても大丈夫だと思うよ?」
「おっ、椎菜ちゃんもそう思う? じゃ、もう少しスピード出そう! あぁでも、寒かったり、速かったら言ってね! すぐに緩めるぞ!」
「うん!」
さっきよりもスピードが速くなって、流れていく景色も比例してさっきよりも早く過ぎていく。
冬だから空気はひんやりしているけど、僕自身は体温が高めだし、寒いのは好きなのでへっちゃらです。
「池綺麗だね」
「だねぇ。いやぁ、こういう自然豊かな場所をカートで見て回れるってすごくいいぞ! あとここ、春だと桜が満開になって綺麗らしいぞ」
「へぇ~! それは見てみたいかも」
「あたしも! まあ、行ける時間があるかどうかわからないけどね。って、そう言えば椎菜ちゃんはお花見とか行くの?」
「今年は行くかなぁ。みまちゃんとみおちゃんの二人がいるし、丁度そんなに遠くない場所に桜の名所もあるしね」
「あー、あるある、県営の場所だっけ? テレビにも結構出てるよね」
「うん、桜だけじゃなくて、菜の花畑もすごく綺麗でね。一面黄色になるんだよ~」
「あれ綺麗だよね! 大学生になった時に行ったぞ! すごくよかった!」
「僕も好き! それに、いろんな屋台もあるしね」
ほとんど毎年行っていた桜の名所を思い出しつつ、屋台のことを口にする。
あそこの屋台、いろんなのがあるんだよね。
鮎の塩焼きもあるし、よく食べてます。
福島にあるお爺ちゃんとお婆ちゃんのお家がある田舎の方が、美味しいものが多いんだけど、それはそれ、こっちのも美味しいからね。
「わかる、お祭りの屋台ってあたし好きだぞ。たこ焼きとか」
「冷凍のたこ焼きもあるけど、やっぱり屋台の方が美味しいよね」
「そうそう! あれはやっぱり、お祭りの時が一番美味しいと思うぞ! 冷凍も美味しくはあるけど、なんか物足りない、みたいな」
「やっぱり手作りの方が美味しく感じるよね!」
「そうそう! でもあれって、自分で作ろうとする難しそうだよねぇ」
「僕もたこ焼き器欲しいんだよね」
「お金があるなら買っちゃえば?」
「うーん……結構ありかも?」
いつかは欲しいなぁ、とは思ってたけど、今はお金があるわけだし……いっそのこと、欲しかった調理器具を買うのはありかも。
お金をずっと溜め込むのもよくない、って聞いたことあるし……。
でも、下手に使うと金銭感覚が狂いそうだしね……。
「ありだと思うぞ! にしても……今日は天気がよくてよかったぞ」
「そうだね。比較的暖かくもあるし」
「ね!」
なんて、緩くお話をする僕たちだったけど……。
『ひゃあぁぁぁぁぁぁ~~~!? あ、藍華さん、と、飛ばしすぎですよぉ~~~~~!?』
『大丈夫。前に追いつきそうになったらスピードは落とす』
『それ、追いつかない限りは落とさないってことじゃないですかぁ~~~~!? って、にゃああぁ~~~~!?』
『やっぱり、ドライブは楽しい。もう少しスピードが出ればよかったけど、アトラクションなら致し方なし。道が広いから事故も起こしにくいし、何より安全装置もあるっぽいからヨシ』
『何もよくないですよぉ~~~~~~~~~!』
「「……」」
後ろから、千鶴お姉ちゃんの悲鳴が聞こえてきました。
「藍華、すごく飛ばしてそうだぞ……」
「あ、あはははは……千鶴お姉ちゃん、大丈夫なのかな……?」
「ま、まあ、事故は起こらないと思う……ぞ?」
「……そう、だよね。うん」
後ろにいる二人が色んな意味で心配になりつつも、僕たちはのんびりゴール。
それからほどなくして、また真っ白になって儚い笑みを浮かべている千鶴お姉ちゃんと、どこかスッキリとした表情をしている藍華お姉ちゃんが帰ってきました。
なんていうか、その……うん、千鶴お姉ちゃん、お疲れ様です……。
子供の頃、ゴーカートが好きでした。子供でも運転できるのがいいよね!
桜の名所で菜の花畑がある場所が椎菜の口から語られましたが実在してる場所です。
私も今年行ったしね! 友人とね!
とりあえず、ロリコンはまぁ……うん、日頃の行いってことで……。




