配信#39ー6 VR配信だよっ!:6
「えー、まあ、なんだ……とりあえず、泣くのは一旦やめてほしいんですが……」
「もう何もしたくないわ……」
「同じくぅ~……」
ガチ泣きする大人×2は、四つん這いから地面に寝転ぶと言う体勢に移行。
この世の終わりみたいな表情をしているが……これ、単純にみたまのお手製フルーツサンドが食べられなかっただけなんだが。
そんなに絶望することなのだろうか……いや、そうなんだろうな。
そうじゃなきゃ、こんなことにはならない気がするし。
「まー、前半組が羨ましいってのはわかるがよ、さすがに今配信中なんだし、起きた方がいいと思うぜ」
「刀先輩がまともなこと言ってるぞ!」
普段からそうあってほしいんだが。
「いやいや、刀先輩、これはこれで面白い絵面だから放置しませんかー?」
「暁先輩、それはさすがにどうかと思うんで、その愉快犯的思考は一旦消してください」
【初手からこれかぁ……w】
【凪刃ちゃん大変そうやなー】
【マジで新人に司会進行させてるらいばーほーむはどうかとおもう(いいぞもっとやれ)】
【っていうか、こういうのって普通、ツンデレちゃんがやるものでは? あの人、一応、常識人枠なんだよね?】
【ツンデレちゃんの中から常識は消えてっからなぁ……】
【みたまちゃんガチ勢にとっては前半のあれは死ぬほどやらましかったってことや】
【っていうか、お嬢もあっち側だと思ってたんだが、そうでもないんだな?】
「かざりちゃんは、あの二人みたいに羨ましがらないの?」
「たしかに羨ましいですけれど……わたくしの場合、四期生全員でのコラボが確約されておりますので、問題ありませんわ!」
「「ぐふぅっ!」」
「かざりさんの言葉のナイフが、お二人に止めを……!」
にっこり笑顔で言ってのけるかざりの言葉を聞いていた二人が吐血し、うさぎさんが早くどうにかならないかな、という気持ちを押し殺せないレベルで前面に出しながらリアクションをする。
なんなんだろうか、この空間は。
【酷いフレンドリーファイアを見た】
【そういや、みたまちゃんが手料理を振舞う配信やるんだっけか、四期生】
【いなりママだけ何度か食べてるっぽいんだけどなw】
【たしかに、料理がメインの配信をやる予定があるんならこうなるわなぁ……】
「というか、二人はいい加減起きてほしいんですが……」
「みたまママのフルーツサンド……」
「みたまちゃんのスイーツぅ~……」
「凪刃、これフルーツサンド食わせるくらいしねぇとダメな気がすんぜ、俺」
「ボクもそう思うなー。二人とも、らいばーほーむきってのガチ勢だし。ボクとしては、このまま二人が死んだままで配信をするのも面白いなー、とは思うけど、建前上そういうわけにはいかないしー」
「建前とか言わんでくださいよ!? というか、ほんとにこれどうすれば…………ん?」
どうやってこの二人を起こせばいいだろうかと思っていると、俺の元にメールが届く。
一体何だろうかとメールを開くと、
『凪刃ちゃんへ、さっきの調理の時に後半組のみんなの分のフルーツサンドを作っておいたので、お店に行けば食べられるよ! らいばーほーむメンバーなら、僕がいなくても入れるように設定したので、安心してね! 冷蔵庫に入ってるから! みたま』
みたまの気遣いがナイスすぎる件について。
よく考えてみれば、みたまが全員分を用意しないわけないわなぁ……。
なんせ、外部コラボでその場にいないはずの、そして一度も絡んだことがないライバー宛にもケーキを作る気遣いのバケモンだしな。
そりゃ作ってるか。
「あー、今し方みたまの方からメールが届いたんだが……なんでも、後半組の分もフルーツサンドも作って――」
「「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
『『『立ち直り早っ!?』』』
俺が言い終わるよりも早く……というか、作ってあるので食べに行こう、という言葉に辿り着くよりも早く、作るの「t」の字の辺りで二人は超高速で立ち上がると、ものすごい勢い且つアスリート走りで駆けだした。
「いやいやいや!? どこ行くんだ!? 自己紹介とかまだなんですが!?」
「おいやべぇぞ! あいつらを先行させたら、俺たちの分もなくなっちまうぜ!?」
「おっとー、スイーツ男子を自称するボクとしてもそれは看過できないですねー。じゃ、ボクたちも行きますかー」
「どれだけ動けるのか調べつつ、みたまさんのお店に向かえばいいんですね! 行きますぅ!」
「ふゆりさんたちだけに食べさせるわけにはいかないぞー!」
「わたくしも行きますわー!」
「って、全員かよ!? っていうか、マジでなんで俺を司会進行にしたんだ運営ェェェェェェ!? しかも、誰も残らねぇじゃねぇか!? 無理ゲーだろこれ! あぁっ、胃が! 胃が痛いっ……!」
俺の叫びも虚しく、全員みたまの所持する店に向かって走り出し、俺は司会進行という無理ゲーに胃が痛むのを感じた。
いや、幻覚かもしれないが。
【さすがらいばーほーむ。全員がフリーダムだ……】
【いやこれ、凪刃ちゃんがただただ可哀そうだわww】
【いやこれ、マジで運営が外道すぎる】
【鬼畜かな? ……鬼畜だったわ】
【ゲームの中でも胃痛って感じるんだ……】
【変態と変態の走るフォームが綺麗すぎて、某全身青タイツの槍兵が頭に浮かんだww】
【↑草】
【↑めっちゃわかるw】
【高速道路走ってそう】
【侍風桜髪ポニテ美少女が苦しんでる姿は素晴らしい!(ニチャァ……)】
【↑変態だァ!】
【男の時もあるんだよなぁ……】
【春風たつな:司君……じゃなくて、凪刃君、それが、常識人だッ……! 後日、胃薬を送っておくよ】
【たつな様ァ!www】
【胃薬送って来る先輩は嫌すぎるww】
「はぁ……とりあえず、俺も一旦店に行きます……あと、胃薬は普通にありがたいので、貰っておきます……」
きっと、胃薬が一番効果的なんだろうからな……。
【草】
【草】
【草】
【草】
【胃薬をもらって喜ぶ高校生かぁ……将来が心配過ぎる……!】
【らいばーほーむは魔境、はっきりわかんだね】
【いやほんとに魔境だなこれ】
痛む腹部をさすりながら、俺も先に向かった先輩や同期達の後を追った。
ただまぁ、一人だからか周囲を見回す余裕ができた。
「それにしても、VR空間か……俺としても、まさか本当に技術が実現するとは思わなかったな……」
【それはそう】
【いくらTS病みたいなおもっくそファンタジーな病気があるとはいえ、実現は相当先だろうとか思ってたらこれだもんなぁ】
【それ】
【めっちゃわかるわー。抽選も当たってるし、マジ楽しみ】
「宙に浮いてるキューブっぽいのとか、シャボン玉っぽいのとか、あとは空にある光る線なんかがなかったら、ゲームの中だとは思わなかっただろうな」
【それな】
【都会って感じがするよなー】
【東京にありそうな街並みしてる】
【三田とか、ああいう感じの場所のイメージがあるわw】
【場所に限らず、オフィス街って感じ?】
【どっちかと言えば、アニメで出て来るオフィス街と住宅街がなんかいい感じに同居したみたいな場所とか?】
「まあ、何でもいいんだが……っと、ここがみたまの店だな。……実際に自分の目で見てみると、小洒落た喫茶店って感じだが………………」
『あぁぁぁっ! これがっ、みたまママのフルーツサンドっ……! なんてっ、なんてっ……ママ味を感じる味なのっ! これはもう、至宝! 至宝のフルーツサンド! 一切れ十万で売れるに決まってるわっ! というかあたしが買う! 美味し過ぎて止まらないっ!』
『甘い物というだけで最高なのに、みたまちゃんのお手製という付加価値が凄まじく、むしろそこが本題ですよねぇ~!? あぁっ、みたまちゃんの愛情が私の体に染み渡るぅ~~~!』
『ふゆりさんにデレーナ先輩! それはつきたちの分!? っていうか、凪刃ちゃんの分だぞ!?』
『おいやべぇぞ! リアタイで食えなかったのと、食べられないと思っていた時の反動で、こいつら暴走してやがる! 皿を離そうとしやがらねぇ! おい暁! お前もどうにかするのに参加しろ!』
『えー、なんか面白そうだからこのままでよくないですか?』
『……それもそうだな! ま、常識人の洗礼ってことで!』
『手の平ドリルですぅ! あ、フルーツサンド美味しいです』
『凄まじくフリーダムですわ! なるほど、これがらいばーほーむの先輩方の配信の仕方……! わたくしも、負けていられませんわね! それと……あぁっ! フルーツサンドが! みたま様お手製のフルーツサンドが美味し過ぎて、わたくし、至ってしまいそうですわ~~~~~!!』
「………………入りたくねぇぇぇ……!」
中から聞こえてくる大惨事と言うか、先輩や同期のカオスっぷりに、俺は入りたくないと言う気持ちが口から洩れていた。
ため息交じりに。
これを入って一ヶ月ちょっとの新人にどうしろと言うんだ、あの運営と言うか社長。
……腹抱えて大爆笑してそうだな、あの人。
【渾身の入りたくないで草】
【たしかに嫌すぎるww】
【溜息やんw】
【ここでノリノリで入ってく奴はらいばーほーむ適正ある】
【常識人適性がある奴は、嫌々ながらも普通に入って行ってツッコミする】
【たつな様だったら100%速攻で入っていくな】
「はぁぁぁぁぁ~~~~~~~…………まあ、入らないわけにもいかないし、俺も入るか……」
【クソデカ溜息ww】
【頑張れ凪刃ちゃん! 凪刃ちゃんならできる!】
【君ならできるできる! やればできる!】
【なんでちょっと修○風?w】
中に入るのが嫌だと思いつつも、俺は店の中に足を踏み入れる。
「お! 凪刃ちゃんが来たぞ! そして凪刃ちゃん! 早くこれを食べるんだぞ!」
「「あぁっ! フルーツサンドぉぉぉ!」」
「あー……すみません、これはどういう状況ですか? はつきさん」
「見ての通り、暴走した変態と変態が生者を見つけたゾンビの如くフルーツサンドを狙ってるんだぞ!」
「……そっすか」
中に入った俺の視界に飛び込んできたのは、うさぎさんとかざりさんに動きを封じられ、はつきさんがフルーツサンドが載った皿を死守し、刀先輩と暁先輩の二人がゲラゲラ爆笑してる光景だった。
ちなみに、うさぎさんは格ゲーの関節技みたいなことしてるし、かざりさんに至っては謎にプロレス技をかけていた。いやなんでだ。お嬢様設定どこ行った。
あと、男性の先輩二人、なんで大爆笑してんだよ、止めてくれよ、その変態達を。
【これは酷い】
【これがVTuberの姿か? これが……?】
【関節技キメてるうさぎちゃんがクッソおもろいww】
【身体能力クソザコナメクジのうさぎちゃんが関節技を……!?】
【っていうか、なんでお嬢の方はコブラツイスト先輩にかけてんだよwww】
【あと、男共はなぜか大爆笑してるし、はつきっちはフルーツサンド持っていつでも逃げられるようにしてるしで、マジでカオスすぎるだろこの空間ww】
【前半も大概だったけど、後半組もひでぇなこれ……】
【一番可哀そうなのは、入ったばかりでこのクソカオス空間を捌かされる凪刃ちゃんだろ】
【その凪刃ちゃん、めっさ遠い目してるけどなw】
一向に話が進まないんだが、俺は一体どうしたらいいんだろうか。
フルーツサンドが載った皿を受けとりながら、俺は遠い目をしてそう思った。
たつなさん、マジ助けてっ……!
ぶっちゃけ、椎菜より柊くんちゃん視点の方が書きやすかったりします。
柊くんちゃんはちゃんと性知識もあるし、一般的な感性の人だからね。結果、ツッコミとかもしやすいっ……! 実際のところ、椎菜って純粋だしそう言う知識がないしピュアだしで、マジで書きにくいんですよね。反面、柊くんちゃんの書きやすさよ。




