#210 (椎菜にとって)衝撃の事実、色々とぶっ飛んでる父親
「あ~、最近天国や神界で話題の神薙みたまちゃんって、椎菜だったんだね」
あの後、折角お話ができるから、ということでお父さんとお話しすることに。
そこで、今の僕がどういう生活を送っていて、どうしてみまちゃんとみおちゃんの二人ができたのかをお話すると、お父さんの口からそんな言葉が飛び出してきました。
「え、お父さん、今天国と神界って……」
「神薙みたまちゃんってね、今天国や神界の人たちからすごく人気でね~。神様たちなんて、スパチャをしてるくらいなんだよ。それも、毎回五万円」
「あのスパチャって神様からだったの!?」
配信の時、冒頭とかそれ以外の場所で五万円をスパチャしてる人たちがいるけど、あれ神様!? 神様なの!?
「うん。神様たちから人気だよ、神薙みたまちゃんは」
「えぇぇぇ!?」
「あらあら、椎菜は神様から好かれていたのね~。すごいわ~」
「すごいで済ませていいことじゃないと思うよ!?」
いや、神様がいること自体は元日から知ってはいたけど、まさかスパチャされてるとは思わないよ!
というか、神様ってスパチャできたの!?
どうやって!?
銀行口座とかあるのかな……?
「それにしても、静稀君。さっき、神様の存在を初めて知った、みたいな反応をしていなかった? みまちゃんとみおちゃんを紹介した時に」
「あれは、神様な娘が出来たことに対する驚きだからね~。神様の存在自体は、前から知ってたんだよ」
「なるほどね~」
あ、知ってはいたんだ……。
「んーと、おかーさんのおとーさんだから……おじーちゃん?」
「……おじーちゃん、です?」
「あ、うん。そうだよ~。君たちから見たら、僕は君たちにとってのお爺ちゃんになるね~。まあ、見ての通り、僕は二十代で死んでるから、死んじゃった時の姿なんだけど」
二十代で今の姿……あの、少なくとも、すごく若いと言うか……中学生くらいにしか見えないんだけど……お母さんも実年齢以上に若く見えるけど、お父さんもだったの……?
「そーなんですね!」
「……おかーさんみたい、です」
「ん~、言われてみれば、椎菜は僕似だったのかな?」
「そうね~。男の娘時代は私よりも静稀君似だったかしら~。今は私だけど」
「うんうん、雪ちゃんそっくりで可愛いよね。自分の子供ながら、本当に可愛い娘に育って嬉しいよ」
「僕は男のまま……それも、カッコいい人になりたかったんだけど……」
「あはは、それは生まれた時から無理だよ」
「お父さん酷い!?」
「いやいや、事実だよ~。うち……あ、九重家ね? 九重家の人って、どういうわけか僕たちみたいな可愛い系の人しか生まれなくてね~」
「エッ!?」
「あと、私の姫宮家も私みたいな人が生まれやすい……というか、わたしのような人ばかりらしいのよね~」
「エッッ!?」
「つまるところ、椎菜は九重家と姫宮家のハイブリッドだから、どうあがいても低身長で可愛い人にしかならないんだ~。今風に言うと、親ガチャではある意味大当たりかな?」
「うふふ、可愛いというのはなんだかんだでいいことが多いから、間違いではないわね~。まあ、お酒買う時とか夜に外を出歩いていると警察の人に声をかけられるところは問題だけどね~」
「「あはは~」」
衝撃の事実。
僕があの容姿だったの、そう言う家系だったからでした……!
というか、え、そんな理由? 本当に!?
い、言われてみれば、お母さんの方のお婆ちゃん、お母さんみたいに小さい人だったけど……。
え、じゃあ、僕が男の時にしていた努力って実は無駄だったんじゃ……!?
「ち、ちなみに、お父さん」
「うん、なにかな?」
「あの、えと……僕……というか、九重家って、その、筋肉とか付きにくかったり……?」
「あー、そうだねぇ。僕も一時、周りの人たちみたいに、雪ちゃんを守れるくらいには男らしく、って思って筋トレなんかもしたけど、これが全然付かなくてね。結局、僕よりも雪ちゃんの方が強くなっちゃったんだ~」
「そ、そう、なんだ……」
……だから、筋肉が付かなかったんだっ……!
なんだかおかしいなぁ、って思ってたんだよ……。
少しでも男らしくなりたいなぁ、なんて思って、毎日腕立て伏せを三十回……もできなくて、ギリギリ十回はしてたけど……でも、全然付かなかったっけ……。
今はもう、女の子になっちゃったから、その辺りは諦めてるけど、でも、なんだろうね。この複雑な気持ちは……。
「僕が存命だったら、椎菜にも教えられたんだけど、見ての通り、僕幽霊だからね。あはは」
「お父さん、笑えないよ……」
「うふふ、死んでも相変わらずぽわぽわ~ってしてるわね~。全然変わってないようである意味安心ね」
「死んでも僕は変わらないよ。それにしても、十七で二児の母かぁ……。いやぁ、僕でもそこまでのことはなかったなぁ」
「それはそうよ~。そもそも、TS病なんていう摩訶不思議な病気は、私たちの頃にはなかったしね~」
「そうだね~。……そう言えば、昔神様がすごく慌ててた時があったなぁ。思い返してみれば、TS病が出始めた頃かも。あの時はすごかったなぁ……。神様総出で、世界崩壊に対処してたしね~。まあ、こっちで何も問題が起こってないって言うことは、きっと大丈夫なんだろうね~」
「待って!? 今お父さんすごいこと言わなかった!?」
世界崩壊って何!?
いつ起こったのかわからないけど、そんなことがあったの!?
怖いよ!?
「いやぁ、天国は退屈しなくてね。最近は地上の様子を見ることもできるし、命日とお盆に関してはこっちに来ることもできるしね」
「あら、ということは今まで静稀君はここに来ていたのかしら?」
「うん、毎年来てくれるのを楽しみにしてたよ。まあ、去年のお盆は来てくれなくて、ちょっと寂しく思ったけど、理由を聞いて納得したしね~。あ、別に責める気はさらさらないからね。お墓に来るのも大変だろうし、死んだ僕よりも、生きてる二人の人生を優先してほしいから」
「お父さん……」
すごくいいことを言ってるし、優しいなぁ、って思うんだけど、さっきの情報が大きすぎて、なんとも言えない気持ちになってるよ、僕……。
「おじーちゃん、やさしーです!」
「……おかーさんみたいに、やさしー」
「あはは、そう言ってくれるとお爺ちゃんとしては嬉しいかなぁ。それにしても、神様かぁ……二人の家はさぞかし賑やかなんだろうねぇ」
「うふふ、それはもう。今の再婚相手のあの人もそうだけど、その人の連れ子の女の子がすごくてね~。みまちゃんとみおちゃんが加わったことで、すごく賑やかにもなったしね。まあ、最近はレバニラ炒めの消費量が異常だけど」
「あー、天国と神界でも、レバニラ炒めはすごく食べられてるよ」
「なんで!?」
え、そっちにレバニラ炒めとかあるの!?
なんで!? 天国なのに!?
「みたまちゃんとか、リリスちゃんだったかな? 二人が人気でね~。それはもうすごいことに。あと、幽霊でも鼻血とか吐血って出るんだなぁ、なんて思ったっけ」
「あらあら、意外とこっちと変わらないのね~」
「あの、お母さん。普通はツッコミを入れる所だと思うの……」
「まあ、実際にそうなってるんだもの。仕方ないわ」
「えぇぇ……」
お母さんがすごく軽い……。
「ところで……椎菜は色々と大丈夫だったかな?」
「ふぇ? 僕? んっと、何が……?」
「椎菜って、僕に似て可愛い男の娘だったから、僕と同じようにきっと大変な目に遭ってたんだろうなぁ、って」
「お父さんは何があったの!?」
「んーとね……一人で散歩してたら、荒い呼吸をする年上の女の人に連れてかれそうになったり、学校に行ってラブレターを貰って、来てほしい場所が体育倉庫だったからそこに行ったら二人きりで閉じ込められてね。あ、こっちの方は自作自演でね、最終的に雪ちゃんに助けられたっけ。あとは、雪ちゃんと一緒に徒歩旅をしてる時に、山の中にいた人間じゃなさそうな人……今思えば神様だと思うんだけど、その人に神隠しされそうになったり、一回本気で誘拐されて、その時に本気で怒った雪ちゃんが助けに来てくれたり……うん、色々あったなぁ。椎菜のような珍妙なことにはなってないね~」
「いや僕よりもすごいことになってるよ!? 少なくとも、そんなことになったことはないよ!?」
僕と同じような目に、なんて言ってるけど、僕、そんな状況に遭ったことないよ!?
むしろ、なんで同じことが起こってると思ったの!?
「あれ、そうなの? てっきり、椎菜も似たようなことになって困ってるんじゃないかなぁ、って思ってたんだけど……そっかぁ。なんだか安心したよ~」
心の底から安堵したような笑顔で、お父さんがそう零す。
少なくとも、そんなことは起こらないから……。
「うふふ、大丈夫よ。静稀君。椎菜の場合は、今のお姉ちゃんが街の中にいる危ない人や組織なんかを壊滅させてるから」
「そう言えば、お姉さんは天空ひかりちゃんだったね。そんなようなことを言ってたけど、あれ本当だったんだね。うん、いいお姉ちゃんに会えたようで何よりだよ」
「それは、うん。色々と頼りになるお姉ちゃんだよ。……まあ、たまに暴走することがあるけど……」
特に配信の時とかね……。
「そっか。でも、こうして会ってお話ができてよかったよ」
「私もよ~。さっきの言葉を額面通りに受け取るなら、お盆にも会える、っていうことでいいのかしら~?」
「もちろんだよ。まあでも、こうして姿を現すにはみまちゃんとみおちゃんの力が必要になると思うけどね」
「やっぱりそうなのね。みまちゃん、みおちゃん。静稀君……お爺ちゃんを見えるようにするのって、何回でもできるの?」
「んぅ? ん~と……三十日に一かいはできるです!」
「……まいにちは、いまはむり、です」
「あらあら、そうなのね」
「生まれたばかりとは言え、しっかり神様なんだね。……そう言えば、神薙みたまちゃんから生まれた神様ということは、椎菜が人気になればなるほど強くなる、という認識なのかな?」
「え、あ、うーん、どうなんだろう? 僕もその辺りはよくわかってないし……二人が元気に過ごせればいいかなぁ、と言う感じにしか思ってなかったから」
「あはは、さすが僕の息子だね。うん、僕も同じ立場だったらきっとそう思うよ。それに、何か大変なことがあれば、きっと神様が手助けしてくれるだろうからね。神薙みたまちゃんは大人気だし、きっと椎菜のことも知ってると思うしね」
「そ、そっか……」
そう言えば僕、なぜか天照大御神様っていうすごく有名な神様から加護を貰ってたらしいからね……うん、本当にありそうなのが……。
「ところで、四人……というより、椎菜はまだ時間があるかな?」
「ふぇ? 僕? あ、うん。今日はお墓参りに来ただけだから、僕はあるよ。お母さんは?」
「今日の予定は静稀君のお墓参りだけだから、まだまだあるわね~」
「そっかそっか。それなら、せっかくこうして会えたんだし、少し二人きりでお話しないかな? 僕としても、しっかりと会話が成立する息子とお話したいしね。雪ちゃんには悪いんだけど……」
「うふふ、気にしなくていいわよ~。私はこうして会えただけで満足だしね」
「ありがとう。お盆の時は雪ちゃんとたくさんお話しするよ」
「それが聞けただけで十分よ」
「そっか。本当に優しいなぁ、雪ちゃん。……それで、椎菜はどうかな?」
「僕もお父さんとお話してみたかったからすごく嬉しいよ! あ、でも、みまちゃんとみおちゃんはどうしよう?」
僕としても、お父さんとお話しできるのはすごく嬉しいんだけど、今日はみまちゃんとみおちゃんの二人もいるし……。
「それなら、私が見ておくわ~。ここの住職さんとは知り合いだから、少しの間休ませてもらうわ~」
「んっと、それじゃあお言葉に甘えてもいいかな……?」
「もちろん。椎菜にとっては、ほとんど初めてのお父さんとの会話だからね。それくらいはするわ~」
「ありがとう、お母さん!」
「うふふ、いいのよ。それじゃあ、みまちゃん、みおちゃん。お婆ちゃんと一緒に、向こうで休みましょ」
「「はーい!」」
「それじゃあ、ごゆっくり~」
そう言って、お母さんは二人を連れてこの場を離れて行きました。
あとに残ったのは、僕とお父さんの二人。
「さすがにここで立ち話、っていうのも椎菜が疲れちゃうよね。近くにベンチがあったし、そこでお話しよっか」
「うん」
というわけで、二人きりでお話することになりました。
既にお父さんが色々とその、かなりすごい人っていうのはわかってるけど、二人きりでどんなお話ができるのかが楽しみです。
身も蓋もないことを言えば、尺稼ぎだよね。
本当は、今回でお墓参りの話を終わらせようとも思ったんですが、せっかくだからと椎菜父の話をもう少し書いて、何も思い浮かんでない本編から逃げるべく、尺稼ぎをしようとしてます。
まあ、結構椎菜父の話を望んでる(?)人がいたので、いいかなと。
一話で終わらせる! さすがに!
あと、どうでもいいことですが、土曜日に夕食を作ってる時、包丁で親指の爪をスライスする事態が発生しましてね……爪の一部が切れて、爪の内側の肉の表面がちょっと削れたよねって言う。切った時は痛くなかったけど、今は触ると痛いので、左手の親指が使用不可になっていると言う……これは酷い。
すんごい久々に切ったよね、指。




