#209 お墓参り、まさかの遭遇
土曜日。
「それじゃあ、私たちは行くから、二人は留守番をお願いね?」
「あぁ、行ってらっしゃい。うちのことは……まあ、愛菜がいるから大丈夫だろう」
「この私がいれば、家の守護など容易いのだァ!」
「うふふ、まあ愛菜だものね。それじゃあ、椎菜、みまちゃん、みおちゃん、行きましょ」
「うん」
「「はーい!」」
「行ってらっしゃーい!」
「気を付けるんだよ」
僕とお母さん、それからみまちゃんとみおちゃんは、ちょっとした用事でお出かけです。
お父さんとお姉ちゃんはお家でお留守番ということになってます。
というのも……。
「お墓参り、今年はお盆に行けなかったのが申し訳なかったんだよね……」
「それは仕方ないわよ。色々あったもの。それに、あの人はのんびり屋だったから、それくらいで怒らないわ」
「そうだといいけど……」
今日は僕のお父さんの命日ということで、お墓参りに行くことに。
お父さんとお姉ちゃんは遠慮してお留守番をすることになったけど、みまちゃんとみおちゃんの二人は僕の娘と言うことで、一緒に連れて行くことに。
あと、顔合わせっていうわけじゃないけど、紹介をしておこうってなったのもあります。
二人にはお墓参りをしに行くことは伝えてあって、最初は嫌がるかなって思ってたんだけど、
「おかーさんのおとーさんにあってみたいです!」
「……いく」
と言う感じで、嫌がる素振りは一切なく、前向きに行くと言ってくれました。
嫌がらなく名てよかったなぁ、なんて思いながらもお父さんのお墓がある墓地へ。
「えーと、九重、九重……あ、あったあった。お花も買ってきたし、お線香もあるわよね?」
「うん、大丈夫」
「それじゃあ、水を汲まないとね。ここ、未だに手押しポンプの井戸なのがいいわよね~。実家を思い出すわ~」
「そう言えば、おばあちゃんたちのお家って井戸があるんだもんね」
「そうよ~。おかげで、夏場も水が冷え冷えでよかったわね~」
「おかーさん、これ、なぁに?」
「……きになる、です」
「あ、これはね井戸だよ。ここのレバーを上下に動かすと、お水が出て来るの」
「みま、やりたい!」
「……みおは、みまおねーちゃんが、やるなら、やる、です」
「あははっ、じゃ、やろっか。えーと、あ、踏み台あった。二人とも、これに乗って、一緒にやろうね」
「「んっ!」」
そう言いながら、二人を踏み台の上に乗せて、やり方を軽く教える。
「「んっしょ、んっしょ……!」」
早速とばかりに二人が挑戦。
「水でたー!」
「……すごい、いきおい、です」
「すごいよ、二人とも」
上手く成功させた二人の頭を撫でると、目を細めて嬉しそうな表情に。
もしも、お家にいる時と同じように耳と尻尾が出たままだったら、尻尾がぶんぶんってしてたのは想像に難くないよね。
うん、可愛いです。
「それじゃあ、そろそろ行こっか」
「「はーい!」」
「うふふ、微笑ましいわね~」
微笑ましそうに僕たちのやり取りを見る、お母さんと一緒に僕のお父さんが眠ってるお墓へ移動。
ここって、周囲が自然に囲まれてるから、雰囲気がすごく好きです。
お墓だから、さすがに夜は怖いけど……。
「あ、あったあった。二人とも、ここが椎菜の本当のお父さんのお墓よ~。色々と挨拶しないといけないけど、まずはお掃除が先。手伝ってくれる?」
「「てつだうー!」」
「うふふ、頼もしいわね~。それじゃあ、まずは持って来たお水で色々と綺麗にしないとね。しばらくこれなかったから、汚れも溜まっているし」
というわけで、お掃除開始。
一年もここに来れてなかったから、かなり汚れが溜まってる。
「結構汚れてるわね~。やっぱり、無理して帰国して、ちゃんとお墓に来ればよかったわね~……」
「僕も引き篭もらないで行けばよかったって思ってます……」
「いやいや、椎菜の場合はあまりにもイレギュラーが過ぎるし、仕方ないわ。さっきも言ったけど、あの人も笑って許してくれるわよ~」
「それならいいんだけどなぁ……」
僕自身、お父さんとは物心が付く前に死別しちゃってるみたいだから、お母さんのお話でしか性格とか知らないからね……。
優しい人って言うことは知ってるけど、それくらいだし……。
うーん、一度会うことができたら色々と納得できるし、安心できるんだけど、もう死んじゃってるからなぁ。
なんてことを考えながら、お墓のお掃除を済ませる。
最初は汚れていたお墓だけど、一生懸命にお掃除したことでぴかぴかに。
やっぱり、綺麗な方がいいよね。
「えーと、お供え物お供え物は~……あ、あったあった、これね~」
ごそごそとカバンの中からお母さんが取り出したのは……
「お稲荷さん?」
「そうよ~。本当は椎菜と同じで、あの人もえんがわが好物だったんだけど、魚をお供えするわけにはいかないしね~。無益な殺生を避けると言う意味で、魚や肉、加工品なんかは避けるのよ~」
「そうなんだ。そう言えば、そう言うのをお供えしたのを見たことない気が……?」
「そう言う理由よ~。さ、これをお供えして、と。一年ぶりね~。あなたの息子は半年前から見ての通り、私似の美幼女になったし、最近は娘もできたの。あなたら驚く……でしょうけど、きっとにこにこ笑うわよね~。それに、毎日ちゃんと幸せに過ごしているから、安心してね~」
お母さんがお墓の前で手を合わせながらそう言う。
きっとお父さんは天国にいるだろうし、聴こえているのかはわからないけど、届いているといいなぁ、なんて思う。
そんな時、ふと、
「「じー……」」
横にいるみまちゃんとみおちゃんが、なぜかお墓の少し上辺りを凝視し始めました。
「みまちゃん、みおちゃん、どうしたの?」
「おかーさんににたかんじの人がいるです」
「……にこにこわらってる、です」
「「え?」」
みまちゃんとみおちゃんのまさかの言葉に、僕とお母さんは硬直。
僕に似た人が、にこにこ笑ってる……?
でも、そんな人いないけど……って、え、もしかして……。
「えーっと、みまちゃんにみおちゃんは、その……お墓に誰かいるのが、見えてる、のかな……?」
「んっ! みえるです!」
「……いま、おどろかれました」
「あらあら、まぁまぁ! もしかして、あの人がここに? みまちゃん、みおちゃん。その人を見えるようにすることってできるかしら?」
「お母さん!?」
「んーと、んーと……んっ! やってみるー!」
「……がんばる、です」
「え、やるの!?」
お母さんのお願いに、みまちゃんとみおちゃんは少しだけ悩んだような顔を浮かべてから、いつもの笑顔に。
やる気満々になってるんだけど、え、本当に!?
驚く僕をよそに、みまちゃんとみおちゃんの二人は可愛らしく両手を握って、ぷるぷると震えていました。
目もぎゅっと瞑っていて、全身に力を入れているけど……って、なんか光り出したよ!?
「「んむむむ~~~~~っ! えいっ!」」
ぽふんっ!
二人の掛け声と一緒に、どこか気の抜けた様な音と一緒に煙(?)が出ました。
突然のことに、僕とお母さんが驚いていると、煙の中から影が浮かび上がって来て……。
「(にこにこ)」
すごくにこにこした表情の男……の人? が現れました。
その人は楽しそうに墓石に座って僕たちを見ていました。
「静稀、君?」
すると、お母さんが口元を抑えながら大きく目を見開いて、目の前の人の名前を呟きました。
静稀君……って、もしかして……
「お、お父さん!?」
「あれ? もしかして、僕の姿が見えてるのかな?」
し、シャベッタ!?
「本当に、静稀君?」
「あ、やっぱり見えてるんだね。えーっと、こういう時、なんて言えばいいんだろうなぁ。うーん……まあ、久しぶり、かな? 雪ちゃん」
「あ、本当に静稀君なのね」
「お母さん軽くない!?」
わなわなと震えてたから、てっきり涙を流しながら抱き着くのかと思ったら、すごく軽い言葉で思わずツッコミを入れちゃいました。
それに対して、お母さんはいつものほんわかとした笑みを浮かべながらこう言う。
「いえ、まあ、たしかに嬉しいことは嬉しいんだけれど……うーん、物語のような、涙流して感動の再会! って、私は何か違う気がしてね~」
「それでいいの!?」
「あはは、雪ちゃんは変わらないね。うんうん、色々と安心した」
「ほらね? 静稀君も納得してるから」
「えぇぇぇ……」
いつも通りの反応をするお母さんに、お父さんはにこにこと笑いながら納得していました。
なんというか、優しくてほんわかしてる人、っていうのは聞いてたけど、本当にほんわかしてる……。
「ところで……さっき雪ちゃんが零したけど、君が僕の息子の椎菜、でいいのかな?」
「あ、はい。えっと、椎菜です」
「あはは、親子なんだから、敬語じゃなくていいよ~」
「そうは言うけど、静稀君のこと、椎菜は憶えてないのよ? あなた、物心がつく前に亡くなっちゃったし」
「あ、それもそっか。いやぁ、僕もあの時死ぬつもりはなかったんだけど、目の前で交通事故に遭いそうな子供がいたから、つい助けちゃってね~」
「それでいなくなって、私がどれだけ悲しんだことか。幸いなのは、椎菜が物心つく前だったから、椎菜にあまり大きな傷が残らなかったことだけど……それだって、いいことじゃないのよ? まったくもぅ……」
「ごめんね。返す言葉もないよ」
「しっかり反省するようにね~」
「天国でのんびり過ごしながら反省はしてるよ。むしろ、最初の頃はそれはもう反省反省反省でね~。雪ちゃんのこともそうだけど、椎菜を残したのが本当に申し訳なくて。父親がいなくて、大変な思いをさせちゃって、ごめんね、椎菜」
穏やかな笑顔だけど、申し訳なさが浮かぶ表情で僕にそう言いました。
あ、なんだろう、うん、この人、お父さんだ。
そう確信するくらいに、目の前の人から親子の繋がりのようなものを感じました。
「えと、大変なこともあったけど、お母さんがすごく頑張ってくれて……今は、お姉ちゃんもいるから、大丈夫です……あ、じゃなくて、大丈夫だよ!」
「あはは、そっか。それにしても、まさか女の子になった挙句、可愛い娘……僕からすると、孫になるのかな? そんな二人が出来て、すごくびっくりだよ。一年見ない内に何があったのかなって思うくらいだし」
「うふふ、まあ、そうよね~。ちなみに、この娘たちは椎菜の娘だけど、神様なのよ?」
「みまです!」
「……みお、です」
「神様。そっか~。まあ、天国なんてものがあるし、そういうこともあるよね。うんうん、一年で色々あったようだけど、さすが僕の息子……娘だね。おおよそ、普通とは言えない生活を送ってるようで、血のつながりを強く感じるよ~」
あははー、と笑うお父さん。
なんていうか……その……うん、お父さんって生前どんな生活送ってたんだろうか、思わずそんな疑問が僕の頭の中に浮かんだ。
まさかの椎菜父(実)です。
本編何やろうと思っていたんですが、昨日お彼岸だったので、あぁそうだ、墓参りの話をすればいいじゃないか! となってこうなりました。
まあ、前々からお父さんは出したかったので結果オーライということで。
椎菜父ですが、椎菜(♂)の時と姿似てます。つまるところ、男で生まれれば父親似の容姿で、女で生まれれば母親似になります。
当然、男の娘と呼ばれた椎菜のお父さんなので、椎菜父も男の娘です。背も低い方だしね。仕方ないね。
尚、椎菜以上にほんわかした性格してます。




