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逢馬ヶ刻〜陰陽師奮闘譚  作者: 静ヶ崎 顯
術師翻弄
39/44

第23話

 視点は変わって岳田が率い芒野と道野が従う三人組である。

 此方が調べるのは大まかに窃盗、誘拐犯の動向である。


 まず三人が向かったのは公園の入り口である。

 入り口付近で一度止まると各々ポケットから単語帳を取り出した。学生が試験の追い込みで使う、最後のツール。そこに描かれているのは英単語や年号ではない。

 表紙には星の多い多角形。三人それぞれが図柄を確認しつつ捲りあげ、目当ての札をリングから千切りとった。


 円のなかに七芒星。

 星は上に三つ、下に四つ。中央には[皆]と書かれている。


「石はどれを貼ったらいいですか」

「そうだね。天照石と石綿がいいんじゃないかな」

 道野と岳田の会話を聞いていた芒野も同種の石を取り出す。

 向こうの逢馬と同じプラ製の薬入れだ。

 コンクリートのような灰色のざらりとした質感の球と綿のようなふわりとした繊維質の欠片を取りだし手のひらに握り込む。


「さて、どこにしましょうかね」

 呟いて周囲を見渡した芒野が一点で顔を止める。

「あそこ?」

「そうだね」

 それは樹齢がそこそこありそうな、大人二人が抱えるほどの樹木だった。


「また樹にするんですか」

 芒野は道野の疑問に答えず、樹に近寄り幹に手を当てる。

 深呼吸をひとつ、ふたつ。

「うん。ここなら汚染も誘導もなさそうです」

「では、そこにしよう」


 岳田の承認を得た芒野が内ポケットから赤ペンを取り出した。

 色は濃く暗い赤。

 描く形は五行行使の印、五芒星である。

 場所は札の上下に二つ。先に円を、その後五つの星が円周上に接触するように描いた。

 岳田も同じ柄を同色のペンで描く。

「道野はペンある?」

「大丈夫です、持ってます」!

 以前は持っていなかったが今回はあるらしい。

 尊敬し、仲の良い先輩である岳田からの説教が効いたのか。


 道野が書き上がるのを待ちながら、芒野と岳田は札を確認しあう。

「随分と几帳面だ」

「性分ですので」

 言い合っていると横合いから、

「私も!」

 と声が上がる。

 どうやら道野も終わったらしい。


「岳田さん、確認してあげてください」

 言いつつ芒野はポケットを探る。

 芒野の手がセロハンテープを出した。

 強度に難があるが用が済めば塵に還る簡易術具に耐久性は必要ない。


 札上部の五芒星、その真ん中にコンクリートを、下の五芒星に石綿をおいてセロハンテープで固定する。

 芒野が札を注視すると適度に粗く詳細が見えないほどのモザイクがかかった。

 そしてあと一枚分のテープを千切りとる。

「岳田さん、道野も」

 テープの束を道野に渡し、道野の指南も岳田に任せた。


 札を裏返し七芒星の中央、[皆]の真裏に透明な欠片を貼り付ける。

「そうだ。そちら終わりましたか?」

「まだだ、今テープを貰ったばかりだぞ」

 終わってしまっていたらそれはそれでクレームのくる話だ。

 先ほどは岳田と道野の会話を聞き流していた。

「ああ、いえ。札のうしろに水晶貼らないと札が楔になりませんので。追加でお願いします」

「うん?」


 言い伝えると芒野の目は先ほどの樹木と公園の入り口から外へと向かっていた。

 背後の二人が「手のなか見せてみろ」だの「あ、水晶!」だの言っている。

 今から調査に必要なのは何の行か。

「過去視、その保全、防衛用の偽装、探知、あの石は残っているか、ないだろうな。だが探さない選択肢はない、音もほしい、読唇術は二人ともできるんだっけか」


 いつのまにか背後が静かだ。

 振り返ると各々、片手にモザイクをかけた二人がこそこそ談笑している。

 芒野はそちらに歩み寄った。


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