表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逢馬ヶ刻〜陰陽師奮闘譚  作者: 静ヶ崎 顯
術師翻弄
28/44

第11話


「逢馬さん、逢馬さん」

 岳多が逢馬の勢いを止める。

「脱線しすぎ。天狗の話に戻すわよ」


「どこまで喋ったんだっけか」

「さっきがお医者さんで政治家は軽くさわり程度。今は警察の刑事さんがどうのって」

「そうだそうだ。岳多、ありがとう」


「そう。で次は警官だが此方も一般人が警官になり始めたのは明治以後だ。その前は侍がメインでやってたから武者タイプだな」

求道(ぐどう)タイプですね」

「そうだ。警察が武者だった歴史は平安ごろまで遡る。検非違使たちだな。これは~初見いつだっけ。平安であってるよな」

「え~っとぉ~?」

 ちょいちょい岳多に確認を入れるが今回は返事がない。

弘仁(こうにん)年間です。詳しい年までは覚えてませんが嵯峨天皇の御代ですね」

 答えを返したのは芒野。

 たしかに、知らぬことは僅かであるらしい。

「最初は衛門府(えもんのふ)が兼任していたそうですが、のちに職務とともに役所も別たれたようですね」 

「日本だと後の歴史でも武官が治安維持と警らを担当する」

「武力持ちが犯罪者を鎮圧する。当然だな、対人の鍛練にもなるしなにより経済を回す農民商人を危険に晒さず防衛できる。実に効率的だ」

 芒野と岳多、逢馬が解説を繋げ、

「ま、そんなかんじだ」

 逢馬の締めでミニ講座は終了。



「で、恨まれる話だが。」

 逢馬が話を本筋に戻す。

「そもそも侍が(おおやけ)に武器を携帯できる特権階級にあったから一般の平民から恨みを向けられたところで気にもしなかった、って話もある。戦士階級でもあるから実害あるような悪意に曝されても武道や躰を鍛えてなかった奴が悪いってなるから恨み辛みに関連あるかは考え難い」


「でたっ!とっけん~!」

 知ってる知識なのだろう。

 道野の声が生き返る。

「中学でやりましたよ。「切り捨て御免!」ってやつですよね」

「ほかにもあるんだが。でも一番有名なのはそれだよな」

「そんなのガンガンやるって横暴ですよね!反感かってとーぜんですよ」


 道野の頭のなかでは日本刀があるのだろう。

 握り拳を上下に重ねてブンブン振っている。

「気持ち良さそうなとこ悪いが、ガンガンは無理だぞ」

「え」

 道野の拳が彼女の頭上でとまる。


 道野の剣筋は印象的だ。

 陰陽寮で稽古しているためか、両腕を絞り肘を伸ばして真っ直ぐに。

 型通りで素晴らしいが、いかんせん無手。

 雑巾持って窓ふきしているようにしか見えず。

 竹刀木刀があってもあのスピードだ、武者よりも族の抗争か盗賊にしか見えない。


「時代劇でよくやる侍サスペンスは汚職か辻斬だろ」

「あと盗賊」

「そっちは今いいんだよ」


「ドラマでもやってるが江戸時代の辻斬って犯人の殆どはちゃんとした侍のストレス解消だろ」

「あ、それも聞きたくて。辻斬の犯人が侍以外って結末あんまりないんですよね。あっても浪人くらい?凶器が刃物でも被害者は刺されてて、犯人はヤクザ!とか、あっても町人だったりするんですけど」

「例外もあるが基本的に刀二本持ち歩いたり、長めの本差持てるのは侍だけで。それが戦闘職の侍ならではの特権だからな」

「ついでにこっちも教えてくださいよ。侍って自称もありなんですか?」

「基本は無しだな。だが脱藩したばかりで旧藩からの照会が可能だったり、要は以前侍だった確認がとれる場合に限って長めの刀が持てるみたいだ」

「地下浪人ですね。確認先がないのは無宿浪人」


「じゃ、あのヤクザとか普通の浪人さんとかは?」

「携帯不許可の案件だろうな。家に保管してあるものを盗まれないように、みたいな言い訳も通るみたいだしな」

「通るんですか!」

「通るだろ。南京錠とか無いんだぞ」


「道野さん」

 芒野タイムである。

「江戸の人口は知ってる?」

「こないだテレビでやってた。100万人都市だったんですよね」

「そう。で、100万人に対して警察は、江戸の町奉行は何人詰だったと思います?」

「けっこう少ないイメージかな。500人に1人くらいの割合かな?どうだろ」

 道野が芒野の顔を覗く。

「100万を500で割って2千人ですか。」

 一呼吸入れて、

「残念、おおはずれ。答えは250人です。桁が違いましたね」

「そんなに少なかったの?」

「実際は北の町奉行と南の町奉行で月替わり交代してるので割る2して125人です」

「更に!」


「もっと少なくなるぞ」

 逢馬と岳多が割って入る。

「町奉行は仕事が多い。事件だけじゃなくて訴訟も戸籍もだ。大きな危難でもあった火災なんかの防災も担当だ」

「犯罪者の更正とか自立支援プログラムなんかも当時既にあったんだけど。それも町奉行」

「江戸までは武士ってお給料は米ですよね。それをお金に変える札差(ふださし)って仲介業者がいるんですけどそれの管理も町奉行」

 芒野の解説が畳み掛ける。


 道野の眼が開く。

 まぶただけではなく瞳孔まで全開だ。

 そんなに業務過多だったなんて。


「で」

 芒野タイムは続く。



「肝心の犯罪取り締まり業務ですけど」

 人差し指を立てて拳を握り教鞭モードだ。

三廻(さんまわり)って言いますが。定廻(じょうまわり)6人、臨時廻6人、隠密廻2人で1セット。北町、南町で2セットですね。一応、岡引(おかっぴ)きが」

「それは知ってる!銭形警部の!」

「作品が違うよ」


「ともかく」

「銭形平次とかの岡引きは非公認の協力者。三廻から個人的に雇われてますが身分は平民のまま。探偵とかにも近いでしょうね。追加人員としては町の区割りごとに番所があってそこで有志の平民が夜廻を手伝ってる」


 ちなみに東京の警視庁は構成員が46,000人。

 人員の差は”桁”どころか更に数倍違う。


お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ