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冒険者たちから見た依頼事情

「それってーーいやまたなんで王族が出張ってくるんです? 近衛まで連れて」

「……普通なら貴族の事情に踏み込むな、と言いたいところだがーー」

「核心までいかなくても終着点、目指すところ引けないところを感覚的に知っておきたいですからね。無駄に死ぬのはごめんですよ」


 同じ依頼を受け、共に活動してきている仲間とはいえ全幅の信頼を預けはしない。ボスを信用していないわけではないが気づけていない、という可能性もある。踏み込む危険性を考えても背景を知り得るなら頭には叩き込んでおきたい。


「それなら依頼を引き受ける時に言え、毎度土壇場になって聞いてきやがって……」

「まあ、そこは信頼というか不利になるような依頼は受けないって知ってますからーー」

「ーー継承争い、ですか?」


 シスター様が少し酔った様子で口を挟んできた。一人だけ飲み屋に居るような状態で忌々しい。そして”継承争い"という安直な意見、回らなくなって頭に浮かんだ言葉を出したのではと疑ってしまう。

 だが同じ貴族ではない立場として、くやしいが同じ考えだ。知らない世界に対しては発想が貧困になってしまう。王都で仲が悪いと流れていたり、酒場などで聞いてしまったりしたのが原因に違いない。集めるにも目をつけられたら事、踏み込むには自由を謳歌している小市民には荷が重い、下手に立ち回れば魔王軍との最前線へと送られる。権力渦巻く空間で生まれなかった我が身には過ぎた舞台。振り回されるのはこちらと、入り込まなくても容易に想像できる。


「王位を狙って手柄を欲している、そんな与太話を信じているのか……貴族はそんなに単純じゃないぞ」

「それは教会よりも、ですか?」


 おっと、どうやら謀略に関して縁遠いのはーーいや、この命の水を持ってきた健脚様は我関せずと呆けている。絶対に聞きはしまいと距離をとるように、孤立して魔物に襲われるくらいには離れて資材の確認をしだした。


「どうだろうな……多くの国を股にかけた組織にとっては小規模な政争だろうが、その分煮詰めたようにドロドロしている。どれが真実か想像もつかんし、蝙蝠野郎も敵を探ってバカを演じている奴も多いらしく検討もつかん」

「それじゃあ何故この依頼を?」


 本当にそうだ。文句を言おう、バチは当たらないはずだ。


「そうですよ、勝手に継承第2位様に賭ける愉快な仲間たちとか止めてくださいよ?」

「安心しろ。そのための手柄献上、そのための危険な使いっ走り扱いで、ギルドを通して公募した形にしてある。多少ながらも恩を売り、距離を取るための言い訳もある状態だ。それにもしもがあっても教会にも劣らない巨大組織、冒険者ギルドが盾になってくれる。この国のギルドマスターにも、他国のギルドマスター話をつけてきた」

「さすがボス、信じてました」

「……だから今回の依頼はいつもの仕事と大差はない。自分たちの命が最優先だ。依頼内容は発生したダンジョンの偵察、戦力の分析。撤退は許されているが間違ってもダンジョンの主を倒すなよ。もしそれをしたら……」

「したら……?」


 ボスはにっこりと目だけで笑って”爵位と政争が待っている。ギルドマスター達も庇いきれないと言っていたぞ”と嫌そうに告げてきた。全くもって冗談ではない。シスター様も”なるほど、それは厄介ですね”と本当に本当にうんざりした様子だ。

 どうやら建前上世俗から切り離されているシスターでも権力が及びかねない、今回はそんな功績ということか。だとしたら木っ端な存在である自分はーー


「もしかしてもクソもないですけど、それって取り込まれるってことですよね……」

「ああ、だがダンジョンの主は引きこもってるから間違いは起きないだろう」

「いやダンジョンの主って俺たちみたいな冒険者にやれるような存在ですか?」

「場合によりけりだが注意しろよ、特にシスター。ダンジョンの主がアンデットの場合、あの火力だと倒しかねない」

「……ええ、気をつけます」


 万感を込めて返すシスター。


「心配な点が多いだろうが偵察に徹して情報を集めればいい。近衛を引きつけてくるんだし、戦闘経験も欲しいはずだ。魔物は間引かなくていいーーいやするな」

「はい、絶対に手柄を上げずに情報の収集と逃走に務めます」


 心に刻むように胸に拳を当てて返す。


「……調子のいい奴だ。まあこっちとしても気楽な庶子なんだ、国を思う心はあるが政争に巻き込まれては敵わん」


 どうやらボス自身のためでもある様子。これならどう間違っても安全と自由は確保されてるに違いなく、最悪でも状況から脱する道も確保しているだろう。もしもの時は泣きついて助けてもらおう。


「よし、質問がなくなったら話を進めるぞ」


 シスター様が頷き、それに倣うとボスがさらに詳しく偵察結果を知りたいと話を進めた。どうやら頼もしいことにボスが依頼主に直接情報を渡しに行くらしい。

 こちらは足を突っ込まなくて大丈夫にしてもらい、報告や折衝は曲がりなりにも貴族でもあるボスがしてくれる。全く頼りになるぜ。変わりたいとは思わないが、これだからここは居心地がいい。

いつもありがとうございます

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