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崩落の開始

 森の中を歩きながら思ったことは僕のすることは少ないということだ。警戒や逃走ルート、敵に会わないよう進みながら先導する彼らは邪魔な枝葉も払ってくれている。ただ僕は付いて歩くだけだ。

 そうなると次第に頭が回ってくる。憶測や邪推、たまによぎる楽観を絞め殺すように現れる悲観的思考。なぜこんなことに、どうして、他に方法があったんじゃないか、このままで大丈夫だろうかと。仲間を信じていないわけじゃない。その仲間ですら運命は、不都合な現実は津波のように押し寄せてくるのではないか。自分たちをその濁流で攫い、溺れさせて殺しにくるのではないか。

 僕は世界が自分の死を望んでいるのではないか、と自嘲し自身が魔族であることを痛感した。人族に恨まれる存在、戦争している相手、自分の行いではないが略奪なども率先して行う部隊の汚名すらのし掛かっているのだろう。止めなければ同罪で、人族からしたら自分も一括りの存在なんだろう。排除すべき、根絶すべき、忌むべき存在。


(だけど喜んで殺されたくはない……)


 答えを出して生きると決めたはずなのにやってくる葛藤。自分は正しくないのではないか、それを貫くに足るものを何一つ持っていないのではないか。やらなくてもいいとは思っていても、生産性もなく無駄なことと分かっていても思考はぐるぐると蝕んでくる。いっそスイッチを切るように、機械のように自分を止められたらと思う。

 ただ感情を持たずに行動する。前世の感覚からそれは不幸なことだと、虚しいことだとは思うが切り替えられたらと思う。こんな自分が進んでいるのか進んでいないのか、手にしたのか手放したのかが分からない状況。とてもじゃないが素面で歩けはしない。どこか壊れてしまえれば、狂ってしまえればどんなに楽か。

 しかし心が強くあるのか弱くあるのか、悩み苦しむことの出来る状態がずっと続いている。


「スケルトン、その瘴気を消すことはできませんか? 万が一でも今の段階で気づかれたら詰みます、相手には聖職者も居るんですよ」

「いや正気がなくなってはただの骨になってしまいます。いっそ囮として別行動しますかな?」

「いや戦力分散はダメでしょー、疲労がないスケルトンって案外役に立つんだよ?」


 そしてそんな僕とは対極的に彼らの雰囲気は明るい。小さい声で軽口を叩き合っている。沈みまくっている僕にはありがたいが迷惑極まりない。


「確かに、相手の行動次第では陣地構築する際に魔力に頼れないかもしれません」

「スケルトンは使い捨ての奴隷ではないのですが……」

「もし肉体労働でバラバラになっても問題ないでしょー、自分で戻れなっても組み立ててあげるからさーー」


 吸血姫が急に言葉を切った。僕は敵襲かと周囲を警戒するも、その気配は感じ取れない。隠密や特殊な能力、魔力に依存しない方法で詰めてきたのか。全く見当がつかない。


「どうしました、吸血姫ーー」


 そして魔女の言葉に被せるように聞こえる音。重みがあり規則性がなく、それほど離れていないがしっかりとここまで聞こえる。方向からして自分たちとは真反対、恐らくというかダンジョンの崩落音に間違いないだろう。

 僕は安心すると同時に事態が進んだという締め付けも感じた。


「思ったより早いですね、相手に動きがあったんでしょうか」

「歯がゆいな。確認しようにも念話は相手に聞かれる危険性もある」

「どうします、近すぎる気もしますがここら辺に構築しますか?」


 三人が話し合いを始めるも、どれもが一理ありどれもが危険性があるという状況判断が飛び交う。ここで陣地構築するのは危険だ、しかし遠くに離れすぎては万が一コアを守れない、状況が不透明すぎるので魔力を使って一気に陣地を構築するべきだ。

 相手の情報が見え無さすぎるのでどれも正しく聞こえるし、どれを取っても確実性はない。スケルトン達の情報では出てラン冒険者だが彼らは何を目的に、何を成すためにここに、どうゆう行動理念を持って来ているのだろうかーーいや、それが分からなくとも対処していくしかない。命を、機会を繋いでいってチャンスを掴む。これしか道はない。そのためにもこうやって主導権を握ろうと状況を押し付ける側に回ろうとしているんだから。

次回は冒険者側の話になると思います。

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