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12四回戦


今日は四回戦。

ヒミカさんとの約束で、俺は縛られた状態で闘いに挑む。

そうすれば俺はなにもしていないことが・・対戦相手が自滅しているだけということがはっきりするはずだ。

試合会場へ行く途中に縄を買った。

準備は万端。さあ、闘いの時だ!


受付「あ、おはようございます嘘つきさん♪」

双星「おはようございます・・今日でその汚名は返上ですよ。俺がなにもしていないということが証明されますから。」

受付「なにやら自信満々ですね。」

双星「ええ。この試合は縄に縛られた状態で闘います。」

受付「???」

双星「そうすれば俺はなにもしていない証明になるでしょう?」

受付「ま・・まあ・・」

双星「さーて、今日もお酒飲むか!あ、縄で縛る時間が必要なので、少し早めに声かけてください。」

受付「は、はい・・」


・・・・


んー、高いお酒なだけあって、口当たりがまろやかだ。

それにのど越しもさやわかで、後味もよい!

清々しい気持ちで飲むお酒がこんなにもおいしいとは思わなかった。

ああ、世界は輝いている!!!

こんこん。


受付「もう少し時間ありますが、そろそろ準備した方がいいと思いますよー?」

双星「はーい。縛るの手伝ってくださーい。」

控室を出て、舞台の手前廊下で受付のおねーさんに縛ってもらう。


受付「それにしてもすごいことしますね。」

双星「まぁこれくらいの知恵は働きますよ。子供じゃあるまいし。」

受付「んーというか、どうやって闘うつもりなんですか?」

双星「いつも通り、なにもしませんよ。」

受付「・・でもこれだと防御もできなくないですか?あの・・殺されちゃいますよ?」

双星「・・あれ?」

受付「今日の対戦相手はご存知ですか?改造人間の狂戦士ですよ。」

双星「え、なにそれ?」

受付「なんでも闘いに特化した改造がなされているらしく、戦場では200人のいち部隊をひとりで全滅させたって話もあるくらいです。」

双星「・・手加減を理解できる方ですか?」

受付「えー、一回戦から三回戦までの試合結果ですが・・対戦相手は全員殺していますね。」

双星「・・棄権しまーす。」

受付「担当の出場者が欠場すると、私の評価が下がるからダメでーす。」

双星「いや無理無理、俺間違いなく死ぬじゃん!」

受付「まあ・・ファイト!」

双星「棄権させてくださいよーおーおー!」

ヒミカ「試合が始まってから降参すれば、こいつの評価はそう下がらぬぞ。」

受付「あらヒミカさん。」

双星「ヒミカさん?」

こ、これはヒミカさんマジ救世主!


ヒミカ「まさか本当にその格好で試合に臨む気なのか?」

双星「まぁ・・約束ですから。俺は嘘つきにはなりたくありません。」

ヒミカ「バカ者が・・死ぬには早すぎるぞ。」

双星「ええ。だから棄権します!」

受付「やだ!」

双星「試合始まってから降参すればいいんでしょ?」

受付「・・うーんまあそうだけど。」

ヒミカ「試合始まってからのことまで口出ししてはならんぞ。選手の自由だ。」

受付「はーい。」

ヒミカ「私は客席から見ているぞ。お主がその状態で試合に臨めば、お主の言うことは信じよう。」

双星「俺の見事な降参っぷりしか見せられませんけどね。」

ヒミカ「ふっ、仕方ない。相手が悪いさ・・前回の準優勝者だからな。」

双星「うおおなぜか試合直前で重要情報がああああああ」

ヒミカ「・・別に秘密というわけではないぞ。受付で聞けば教えてもらえる内容だ。新聞にも載ってる。」

・・あ、俺が無能だったということ・・か?


ヒミカ「まぁ知ったところでどうにかなるものじゃない・・ではな。」

ヒミカさんは客席へ向かった。


受付「あ、そろそろ試合開始ですね。試合の立ち位置まで行けますか?」

双星「最初だけ押してください。あとは自分で回っていきますから。」

受付「じゃあ最後の仕上げしますね。」

受付のおねーさんは、俺の口にガムテを張った。

・・あれ?


受付「そーれ回れ回れー!」

勢いよく俺が転がりながら、試合の立ち位置まで移動して止まった。

うー目が回るー。

観客がざわざわし始めた。

そりゃ体中縛られて芋虫状態で登場すりゃそうなるわな。

試合が始まったら降参して、あとはもらった賞金とトロフィー売ったお金で、のんびり旅を続けるかな。


受付「さーそろそろ試合開始のお時間です!」

受付「片や例外なく対戦相手を殺す改造殺人兵器・・片や縛られた芋虫さん。結果は見えていますが皆さん帰らないでくださいね♪」

受付「なお芋虫さんについては、ご本人の希望により私が縛りました。」

受付「今まで謎の勝利をして来た芋虫さん、これまで”特になにもしていない。相手が自滅しただけ”との持論を貫き通していました。」

受付「今回も”なにもしていない”を証明するため、このような格好となったわけです。」

受付「たーだーし・・降参するって言ってましたが。」

観客から少し笑い声が聞こえた。


受付「すぐ終わるつまらない試合ですので、とっとと始めましょう!試合開始!」

さーて千切りになる前に降参するか。

改造人間って言うだけあってでかい・・2メートルをはるかに超えてるなこれ。

こんなのと闘おうとするやつはまともじゃないわ。


双星「むごむぐ!」

・・あれぇ?口にガムテが張られてて喋れないんですが!?

やばい!早くガムテ外して降参しないと!

あんなのに攻撃されたら一巻の終わり・・あれ?


改造人間「・・」

攻撃・・してこない?

なんで?故障?俺の運は天井知らずなの?


・・・・


俺は手も足も出ないし、改造人間さんも動かない。

そのまま30分が経過した。

観客はまばらで、寝てる人までいる・・ごめんね退屈な試合で。


受付「え、えーと・・じ、時間切れです!」

時間切れなんてあったのか。


受付「大会規定によりますと、時間切れの場合はくじ引きで勝者を決めることになっています。」

縛られてる俺はどうやってクジ引けばいいの?

・・なんて杞憂だった。

さすがに拘束は解いてもらえた。


受付「はいじゃあ双星さん引いてください。」

寝ていた観客が起きて結果を見守る中・・俺は勝者のクジを引いた。


受付「くじ引きによる勝者は双星選手!五回戦進出です!!」

運だけはいいよなぁ。


・・

・・・・


控室前の廊下へ受付のおねーさんと一緒に行く。


双星「はー故障とは助かった。整備不良?」

受付「違いますよ。どうやら改造人間の戦闘条件が・・敵意とか殺意とか、攻撃されたらとかみたいですね。」

双星「あれ?」

受付「無抵抗の人間には攻撃しないみたいです。」

双星「どゆこと?」

受付「双星さんの嘘つき♪負ける気なんてなかったんですね。」

双星「え!?」

受付「実に巧妙でした。完全に私たち騙されましたよ・・ねぇヒミカさん?」

ヒミカ「ああ。まさかここまで計算していたとは・・お主の策略に気付いたときは冷や汗が出たぞ。」

観客席の方からヒミカさんがやって来ていた。


双星「いやいや違いますって!偶然です!」

ヒミカ「はぁ・・」

受付「またですか?誰も信じませんって。」

双星「でもほら、くじ引きだから50%しか勝つ見込みなかったんですよ?完全に偶然じゃないですか。不正とかしていませんよ。」

ヒミカ「どんな闘いでも、事前に100%勝利するとは言えぬのだ。例え実力でまさっていても、油断したところをやられることもある。」

ヒミカ「追い詰められれば思いもしない力を発揮する者もいる。だから闘いに臨む者は決して最後まで気を抜かず、手を抜かず、鉄壁の防御を崩さぬのだ。」

ヒミカ「そうやって少しでも勝つ確率を100%に近づけようとする。まともに闘ってあの改造人間に勝てる者はいないと思うぞ。」

ヒミカ「限りなく0に近い勝率を50%まで高めておいて、偶然の勝利だと?ふざけるのもいい加減にしろ。」

受付「まったくです。ここまで徹底した道化師なんて初めてですよ。」

ヒミカ「試合前のこやつの目は完全に負け犬の目だった。だがふたを開けてみればしっかり勝利への布石を打っていたわけだ。もうなにを信じていいかわからぬ。」

受付「どうせ次の試合も絶対勝てないとか言いながら、さくっと勝つんですよ。」

ヒミカ「だろうな。」

双星「どんな闘いでも事前に100%勝利することはないんでしょ?」

受付「また始まりましたよ。」

ヒミカ「ああ、今度はどんな手を使ってくるのやら。」

双星「ごーかーいーでーすー。」

ヒミカ「とはいえ・・ここまで見事に騙されると、次が楽しみだ。」

ヒミカさんが楽しそうに笑った。

俺は他人を騙すなんて器用な真似はできませんって。


・・

・・・・


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