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ふたりでなら、どこまでも  作者: 千子


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第一話 自転車の後ろから

「二人でなら、どこまでも行けるね」

「そうですね」

相変わらず愛想のない後輩に、小さく笑う。

そんな後輩の押す自転車に乗って運ばれる。

この可愛気がある後輩に不慮の事故で足を折られて三日が経つ。

このやりとりも三日連続だ。

気にしないでって言っても、この子は僕の送り迎えを欠かさなかった。

全治一ヶ月と言われていたから、一ヶ月やるつもりなんだろうか?

律儀だなぁと小さく笑うと、少し怒った顔になる。

「まだ、痛み止め飲むほど痛いんですよね?無理はしないでくださいよ」

させてくれないくせに。

「していないよ。どこかの可愛い後輩が、よく面倒を見てくれるからね」

そう言ったら自転車を止められた。

「可愛い後輩ってどいつですか!?」

僕は今度こそ吹き出して笑ってしまった。

「君だよ、君。物好きな君以外に誰がいるのさ」

けらけら笑うと、今度こそムスッとした顔で、自転車を押すスピードを上げる。

「わ、待ってよ。早いって」

「可愛いので、先輩に気を遣って早く学校に着こうかと」

そう言うところが可愛いんだって!

とは、言えずに僕を椅子に乗せて手で押しているはずなのに、早いスピードで駆け抜ける。

「あはは。早いねぇ」

「早くしているんで」

さらりと流れる長い髪に触れたくなる。

そんな関係じゃないのに。

「彼氏さんに怒られちゃうよ」

「そんなの居たら先輩の足なんて申し出ませんよ」

私、こう見えても一途なんで。

そう言って耳を赤くして自転車のスピードを上げる。

もしかしたら、そうだったらいいな、そんな気持ちで答えを聞けずにいる。

背中に伸ばしかけた手を、彼女が振り向いた瞬間に思わず引っ込める。

「先輩、学校着きました」

「ああ、うん。そうだね。ありがとう」

「いえ、帰りも下駄箱で待っています」

「うん」

学校一の美少女に送り迎えをしてもらい、羨む目は多数だ。

「またね、片桐さん」

「はい、立花先輩」

この微妙な距離を壊して、背中越しの片桐さんから隣に立てるイメージが湧かない。

……片桐さんは、僕のこと好きなのかな?

なんて、体育の授業で隣り合っただけの僕達。

サッカーをやっていた僕の足に、片桐さんの蹴ったボールが直撃した。それだけのことだった。

それまで話したこともなくて、僕は一年にすごい美少女が入って来たって噂で見かけただけ。

まだ知り合って三日。

僕達はお互いのことを何も知らない。

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