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魔王と勇者討伐2

「貴様、一体何を考えているんだ?」


勇者カールは私を侮蔑した表情と口調で、私を見つめ罵った。


「私の話を聞いてください。魔王が復活してこのダンジョンにいると思います。魔王が復活した為、このダンジョンの魔物は森より更に強力になっています。その上、帝国の騎士団は魔法や剣刀術が廃れています。このダンジョンの中層から先に騎士団を連れていくのは危険です」


「ふん、もっともだが、そういう時の捨て駒が騎士団だろう? 考えても見ろ、騎士団が中層までしかサポートしてくれないのなら、我ら勇者パーティの生存率が下がるぞ? お前自身の命も危ないのだぞ。お前は馬鹿か? これでお前の言う通り、騎士団を下層まで連れていかないでパーティが全滅したら私はとんだ間抜けだ」


勇者カールが勇ましくない自身の生命ばかり気に掛ける話に辟易とはするが、カールの意見には賛成できない。下層では騎士団はおそらく簡単に全員が玉砕するだろう。ならば、無駄な人死は避けるべきだ。私は勇者カールに更に言葉を綴った。


「いえ、そうではないでしょう? 勇者とは誰もが恐れる困難に立ち向かい偉業を成し遂げようとしている者に対する敬意を表す呼称です。騎士団を下層に連れて行けば全滅します。困難に立ち向かうのはカール様の役割。皇帝陛下も決して、無謀な作戦を命じるような方ではないと思います。ダンジョンの最下層に向かうのは私達勇者パーティだけの役目、困難に立ち向かうのは私達だけにすべきです」


勇者カールは私を睨みつけた。


「クリスティーナ、お前は生意気にも正論だけは吐けるから厄介な女だ、昔からな…」


「おっしゃる通りかもしれません、否定は致しません」


カールの嫌味を聞いた私は大人になってスルーした。そして、カールに対して挑戦的とも思える様に宣言した。


「私が下層の魔物を滅ぼせばよいだけです。騎士団に被害を担当させる意味はございません」


カールはギロリと私を睨むみつけた。


「勇者を舐めるな! 勇者の女神様からの加護を見せつけてやる、暗黒の魔導士風情に遅れはとらんぞ!」


カールは憤慨したのか口調が厳しい。ほとんど怒鳴るような大声だ。


しかし、カールの声とは裏腹に剣聖ガブリエルはカールをなだめるかの様に声をかけた。


「カール皇子、貴方の勇者としての気持ちもわかるが、先程クリスの僅かな指南で我らが爆発的に強くなった事実、クリスの意見を尊重した方がいいと思えます。それに、今は同じパーティを組んでいる仲間です。もっと友好的に行きましょう」


「私もクリスの意見に賛成です」


と、不穏な空気が漂っている中、無言を貫いていたアドロフもガブリエルの意見に賛成した。


「ちっ、お前達はすっかり暗黒の魔導士に篭絡されちまいやがって! お前達がそのつもりなら私は何も言わん、だが、勇者パーティに死亡者が出たら、私はその責任なぞとらんぞ! お前達を糾弾するからな! ダンジョンの最下層に行くのだぞ? 例え1000人の騎士を犠牲にしてでも勇者パーティを守るべきだろう!?」


勇猛さのかけらも無い勇者に呆れながらも、勇者は物分かりの悪い子どもだと割り切り、剣聖ガブリエルや賢者アドロフという味方を得て、少し安堵する。これで妹ベアトリスも私に好意的になってくれたら…でも、それは無理かもしれない。それは私が悪い、過去の悪行を思い起こすと、妹が私に好意的になるとは思えなかった。二人と違い、妹は当事者なのだ。妹の信頼と愛情を取り戻したい…例え叶わぬでも努力はしないと…


「ベアトリスはどう思う? あなたの意見も聞きたいわ?」


「わ、私は…お姉さまの言う通りだと思います」


どうやら、妹ベアトリスも騎士団の犠牲は回避したい様だ。聖女のイメージを具現化したかの様な彼女がそう思う事は心地が良かった。


「いい加減にしろよ! ベアトリス! お前までもか? お前ら、どうして勇者パーティはそんなに無謀になったんだ? 馬鹿なのか? アドロフ、もう一度考え直せ! 頼む、頼むからこの馬鹿な暗黒の魔導士とみんなを説得してくれ!」


勇者カールに助けを求められたアドロフは、笑みを湛えてこう言った。


「そうですな。魔王と勇者パーティ。いや、魔王と青の魔導士…古い歴史書が正しければ、楽勝でしょう。クリスは単独で強力な魔族を滅ぼしています。最下層の魔物もクリス一人で簡単に殲滅できるでしょう。魔道具でクリスの力はつぶさに見てましたからね」


「……はぁ!?」


一番博識である賢者アドロフの口から、あっさり最下層も魔王も私一人で大丈夫というカールにとっては許容し難い見解が語られたため、カールはぽかんと口を開けてアドロフを見ていた。


やっぱり善行を積んで良かった。私を擁護し、理解してくれる人がいる。その事がこんなに物事をスムーズに行う事ができるとは…つくづく、私、健気になって正解! って思った。アドロフさんもガブリエルさんもいい人だ。これでキモいアイドルお宅でなければ…いや、偏見じゃないよ。それがなければ多分、この二人の男性としての女性の評価が爆上がりすると思う。喜々として、顔に笑みが漏れてしまった私だが、勇者カールがキレたかの様に大声をあげた。


「お前達はこの悪女の胸に騙されて、現実が見えなくなっているな! ちょっと、アクレイア王国で学んだ事で株をあげただけで、そこまで騙されるとは、全くの愚か者だ! お前達は私が守ってやる。だが、途中で危険になったらダンジョンを引き返すからな!」


「「「え??」」」


勇者カールを除く、全員の目が点になり、全員の声が重なる。


そうか、勇者カールは私の王国や自由同盟での活躍をつぶさに見ていないのだ。いや、実際のところはそっちの方が常識的なんだが…ガブリエルさんとアドロフさんは私の行動の一挙手一投足つぶさに見届けるというストーキング行為X見守る〇という行為を行ってくれていて…


それから、ダンジョンに勇者カールを先頭に潜った。ダンジョンの中は暗く、黒い岩が多い、岩は瘴気を含んでおり、唯の洞窟ではない事を物語っていた。おびただしい瘴気は嫌悪感と本能的な恐怖を覚える。


そして、最初の魔物に遭遇した。オークロードだ、Bクラスの魔物が6体。やはりここが魔王のダンジョンという事だろう、最上層ですらBクラスの魔物がいきなり出るのである。


「みんないつも通りのフォーメーションで行くぞ! 敵は強敵だ。騎士団の助成も必要かもしれん。気を引き締めていくぞ!」


勇者カールが猛々しくリーダーとして指示を送る。だけど…こんな雑魚魔法一発で終わりよね? どんなけレベル低いのこの勇者?


「フリーズブリッド*20」


「「「はぁ?」」」


私が無詠唱で攻撃魔法を唱えるとオークロードは一瞬で肉塊に変わった。


「な、な、な、そんな馬鹿な!!!!!!」


だからみんなの言う事聞こうよ。最下層でも私一人で大丈夫ってアドロフさんが言っていたよね? だから、最下層まで勇者カールの出番はほとんどないわよ。


とは言うものの、最下層も私一人で大丈夫と予想したアドロフさんですら、驚愕の顔で私を見つめていた。いや、そんなに見つめられると恥ずかしいですけど?

連載のモチベーションにつながるので、面白いと思って頂いたら、作品のページの下の方の☆の評価をお願いいたします。ぺこり (__)

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『連載版こうかい』~幼馴染に振られた上、サッカー部を追放されたら、他の幼馴染がドン引きする位グイグイ来た。えっ? 僕がいなくなって困ったから戻って来てくれって? 今更そんなのしりません~
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