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アウクスブルク帝国への招聘12

「大丈夫? アン?」


「大丈夫です。アリシア様」


「アン、今世ではクリスよ」


「そうでした。クリス様」


「アン、今はクリスと呼んで」


「…はい」


アンは私のメガヒールに癒されて、かなり回復した様だ。アンの前世はアルベルティーナという奴隷だった。私が彼女を購入したのだが、あまりに懐かれたので、従者にした。彼女が私を盲目的に慕うその姿は正しくドMの鑑…もとい奴隷、従者の鑑だろう。


しかし、なんでアンがあんなに従順で私から逃げ出さなかったか、わかった様な気がする。私も何となく、彼女を手下として扱ってもいいかな? と普通に考える事ができたのも、この魂の結びつきが原因かもしれない。


「!?」


「クリスさん。また魔族みたいですね?」


そう、再び瘴気が急激に濃くなってきている。多分魔族だろう。しかし、私はあまり心配していない。何故なら、先の展開が読めたからである。何せよアル、アンと私の従者が蘇ったのである。そして私の従者は三人いた。そしてさっきからエドヴァルドさんが私達の周りをそわそわとまるで出番を待つ三流役者の様な感でうろうろしているのだ。私とアルだけの特殊技能、幼馴染同士の目でだけで会話ができる技能に何故かアンとエドヴァルドさんも参加可能だった。もう、バレバレよね。


「魔族が現れたらイェスタ(エドヴァルドさん の前世の名前)、お願いね」


「ちょ、ちょっとアリシア様、酷くないですか? 私もアル殿やアン殿の様に劇的な再会を…」


「いや、いいじゃないの? やっぱりイェスタだったのね?」


「はぁ、そうです。赤の森で重症を負った時に思い出したのです。多分、アル殿やアン殿も同じかと」


「そう。やっぱりね。不思議だけど、二人いると三人いて当然という気がして、驚く気がしないわ」


「そんな、500年ぶりの再会で、こんな扱いないですよ」


「そう? あなたの扱いは500年前もこんな感じだった様な気がするけど?」


「う~ん。確かにそうですが…」


エドヴァルドさんの前世の名をイェスタという。元はアンと同じく奴隷なのだが、ずっとついてきたので、従者にした。ただ、こいつ、前世で、私の事をアイドルか何かと間違えてる感じで、ちょっと、そのキモいヤツなのである。まさか今世でも似た様な感じとは思わなかった。


「で? もう使えるの? 貴方のユニークスキル?」


「もちろん準備はできています。ケルンの街で女王蜘蛛の糸はたっぷりと購入しております」


「じゃあ、お願いね」


「承知」


瘴気はますます濃くなり。ついに魔族の一人が現れた。ホント、魔族って、基本ぼっちだから、いつもこうやって一人ずつ各個撃破されるのよね。頭悪いのよ、ホント、それに魔族って暗いから、ぼっちなんだろうな。可哀そうな種族である。


私はその場の草むらで、いい感じにフカフカの芝を発見すると、ごろりと横になった。


「ちょ、ちょっと、クリス殿? 私の戦いを見守ってくれないのですか?」


「あなたなら大丈夫よ。アルやアンもいるし、私は夜に現れる魔族の親分に備えるわ。それでちょっと、一休み」


「ひ、酷すぎません?」


「だから、500年前もそんな感じの扱いだったでしょ?」


「そ、それはそういえばそうだった様な…」


「じゃ、必ず勝ってね? 私が目を覚ましたら、あの世だったという事は勘弁してね」


「わかりました。エドヴァルド、いえ、虚数魔法使い、青の魔導士様の従者イェスタとして必ず勝利します」


「お願いね~」


「貴様ら、ふざけるなよ!」


最後に魔族と思しき者が遺憾の意を表するが、私は眠った。そして、しばらくすると目が覚めた。


「ふあぁぁぁぁぁぁ~。エドヴァルドさん? 終わった?」


「もちろん終わりました。その、直ぐに決着はつきました」


「まあ、見た感じ、あまり特殊なヤツじゃなさそうだったからね」


「は、はあ、確かに強いだけで、アル殿やアンが戦った様な特殊な技はありませんでした」


「どんなヤツだったの?」


「どうもムカデが正体らしく、足技が面倒だったのですが、かたっぱしから足を妖糸で切り刻んだら、あとは楽勝でした」


「あら、まあ、エドヴァルドさんと凄い相性のいい敵だったのね?」


「はあ、できればもうちょっとやりがいのある敵だと嬉しかったのですが…」


「まあ、気持ちは察するわ」


私が周囲を見回すと、エドヴァルドさんが倒した魔族の残骸だろうか、巨大な虫のかけらが散乱しており、それをエリスちゃんが聖歌で浄化している様だった。


「ところで、前世で私とアルが死んだ後、世の中はどうなったの?」


私はエドヴァルドさんに聞いた。私が魔王を討伐した時、私とアルだけが魔王討伐パーティに選抜された。つまり、エドヴァルドさんとアンは魔王討伐の後も生きていた筈なのだ。魔王討伐パーティは勇者、聖女、剣聖、賢者、虚数魔法使いの私、従者のアルの計6名だった。


「はい、魔王が討伐された事は瘴気が一気に薄まり、天候が連日の大雨から晴天に変わった事で直ぐにわかりました。そして、私とアン殿は魔王討伐パーティの後ろからついていく、軍隊と行動を共にしておりました」


「それは知っていたわ。その後、勇者と聖女はどうなったの?」


「勇者と聖女は魔族の一人になぶり殺しにされた様です。私達が辿りついた時には既に死んでいました」


えっ? あの糞勇者、死んでたの? そういえば、あの勇者弱いし、聖女も聖歌も満足に歌えない子だったから、魔族と遭遇したら、先ず死ぬわね。馬鹿なの? あの勇者?


「えっと、それだと帝国の歴史とずいぶん違う様な気がするけど? だって、帝国は勇者と聖女が建国したんでしょ?」


「…それが、私達なんです…」


「えっと、アン、言っている事が良くわからないだけど?」


「はぁ、魔王城でクリス様の亡骸を見つけた私達は魔族の一人を尋問して何が起こったかを知り、怒り狂って魔王城はおろか魔境の魔族、魔物をかたっぱしから倒したんです。そんな時、千載一遇のチャンスとバース共和国の聖女様が駆けつけて、魔境中を浄化して回ったんです」


「そうなのです。あの聖女様はキャラがたって、素晴らしいアイドル性で、いてっ!」


「エドヴァルドさん、話が飛んでるから、私に任せて!」


「す、すみません…」


「その後、魔境は人が住めるレベルまでに浄化されて、国として成り立ち、そして、その…」


「何なの? アン? 言いよどんでる様だけど?」


「私とエドヴァルドさんの二人がアウクスブルク帝国、いえ、アウクスブルク王国の初代国王、王妃として即位しまして、そのう…」


「えっと、アウクスブルク帝国の初代国王と王妃がアンとエドヴァルドさん? 勇者と聖女じゃないの?」


「はあ、理由はわかりませんけど、アウクスブルク帝国 の初代国王と王妃は私達です」


う~ん。ますます話がこんがらがってきた。なんで私、暗黒の大魔導士にされてんの?


「帝国はなんで、今みたいな嘘の歴史を?」


「それは私にもわかりません。少なくとも、私達が生きていた頃はクリス様を称える銅像作ったり、正しい歴史をきちんと教えてました」


「それについては私から説明しよう」


フレデリック中隊長だ。ずっと出番がなかった騎士団、ようやく登場だ。


「アウクスブルク帝国の初代国王、王妃の死後、かの国では何度か内戦の危機に陥ったのだ。初代国王も王妃も奴隷出身だったので、王の絶対不可侵性が無く、絶えず内戦がおきそうになり、ついに、帝国の4代目の国王は初代国王と王妃は勇者と聖女だったと唱え始めたのだ」


「ええっ? それじゃ、勇者と聖女の悪行は? 私はそれを深く伝えたのですが?」


エドヴァルドさんが少々怒った様な…


「実は我らアクイレイア王国もその頃はその歴史に賛成したんだ。何せよ、勇者と聖女が悪行を働き、魔王を勇者以外が倒したという前代未聞の事件。後の勇者や聖女が随分と生きづらくなってな」


「え~と、だいたい察しがついてきたんですけど、アウクスブルク帝国もアクイレイア王国もグルになって、帝国の初代国王と王妃が勇者と聖女という事にして、そして…」


「ああ、その通り、そして第7代国王はアクイレイア王国と自由同盟との戦争に勝利すると、500年前の魔王討伐も勇者と聖女によるものと歴史を書き換えたのだ」


それ、私が暗黒の魔導士にされたのって、アンとエドヴァルドさんの末裔が悪いんじゃ?


私はアンとエドヴァルドさんを生暖かい目で見た。すると二人は目が泳いで、目線を合わせてくれなかった。

連載のモチベーションにつながるので、面白いと思って頂いたら、作品のページの下の方の☆の評価をお願いいたします。ぺこり (__)

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読んで頂いた読者様ありがとうございます☆ 本作について、 「ちょっと面白かった!」 「島風の新作を読んでみたい!」 「次は何を書くの?」 と思って頂いたら、島風の最新作を是非お願いします。リンクがありますよ~☆ 読んで頂けると本当にうれしいです。 何卒よろしくお願いいたします。ぺこり (__)
『連載版こうかい』~幼馴染に振られた上、サッカー部を追放されたら、他の幼馴染がドン引きする位グイグイ来た。えっ? 僕がいなくなって困ったから戻って来てくれって? 今更そんなのしりません~
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