アウクスブルク帝国への招聘6
ディセルドルフの街は突然混沌に包まれた。騎士団長にして領主のボリスが非常事態宣言を発した。そして、冒険者達には城塞都市市街各部の守備を、騎士団には城塞都市の城壁各部へ配置を行い、籠城戦に入る事を宣言した。私はボリスからお願いを一つされた。それはディセルドルフの街の人々と冒険者、騎士団員の希望を与える為のパフォーマンス。私はボリスの城のべランダから街の人達を勇気つける為にスピーチを行う事になった。
「ディセルドルフの街の民よ。今、この街は500年前と同じ危機に瀕している。あの黒の森の魔族が覚醒し、今日の夕方にも魔族軍はこの街に殺到するかもしれん。だが、安心せよ! この街には500年前と同じく、青の魔導士様が現れた。我らを救う為、見よ、あの青い髪、その容貌、彼女は大魔導士様の産まれ替わりだ。我らの為に再びこの世に転生されたのだ!」
騎士団長ボリスの言葉の後は私のスピーチだ。
「ディセルドルフの街の皆さん、私は帰ってきました。500年の時を超えて、再びこのディセルドルフの街を守る為に! 私に力を貸してください。500年前も私の力だけで勝てたのではありません。皆さんの協力があったからこそ、魔族サティロスの軍勢を退ける事ができたのです!」
ホントは私一人で片手間に殲滅したのだけど、確かに今の私のレベルでは難しいかも。何せよ当時の私はレベル200位だった。当然、今はディセルドルフの街の人々の協力は必要だ。
「青の魔導士様!」
「救世主様」
「おお、伝説は本当だったのだ!」
「我らの街は再び魔導士様に救われる」
城のバルコニーに集まった冒険者、市井の人々、騎士達、皆万感の思いを想い、私のスピーチに耳を傾ける。
「魔族軍は決して勝てない相手ではありません。皆で力を合わせれば必ず勝てます。だから、皆さん、それぞれ自分の役割に徹してください。お願いします」
「もちろんだ!」
「大魔道士様の命ならば、俺達は死等いとわない!」
いや、死ぬのはちょっと考えようよ。私も寝覚めが悪いわ。
「魔導士様バンザーイ!」
「バンザーイ!」
「魔導士様ありがとうございます!」
人々は私という偶像を得て、最高潮に熱を帯びた。
「さあ、戦いに赴きましょう!」
そして、皆、それぞれの持ち場に戻った。私とエリスちゃんは城塞の正門前の壁上に陣を引いた。エリスちゃんは負傷者の治癒、そして騎士団達へ聖なる歌で力を増加させる。そして私は、
「本当に行くのですか? 一人で空の敵と戦うのだなのど」
ボリスは心配そうに聞く、だが、城塞都市といえども、空からの攻撃には弱い。弓矢や攻撃魔法で迎撃するのは大変なのだ。ましてやこの世界では魔法は廃れているのだ。
「この街を鉄壁に守るには先ず、空からの攻撃を迎撃する必要があります。空の魔物、ドラゴン、ワイバーン、ガーゴイル、その数は1000は下らないと思います。500年前も空からの攻撃には苦戦しました。ここは私が空の敵を先に殲滅します」
「待ってくれ。その戦いには僕も参加させてくれ」
アルだった。
「アル? あなた?」
「僕も虚数魔法は少し使える。空を飛んで戦う事は可能だ」
「わかった。お願い。力を貸して!」
「ああ、もちろんだよ。それに、もうじき到着するのだろう? ロプロスが?」
「ええ、もうじき現れる、1時間前に魔法通信を送ったから、そろそろ到着すると思う」
「どうやら、その様だよ」
アルがそう言うと、ディセルドルフ上空に魔力の渦が渦巻いた。そして、魔力震、空が渦巻く。そして、その中から聖龍は姿を現した。光り輝く銀の鱗を煌めかせて聖龍がその姿を現す。
「ロプロス!」
「クリス、何とか間に合った様だな」
「お願い。力を貸して」
「もちろんだよ。僕は君の従魔なんだよ」
「ありがとう」
「任せて、下位のドラゴン等僕が一蹴するよ」
大空に現れた白銀の聖龍を見た人々は、
「おお、伝説の聖龍様が! やはりあの方は青の魔導士様!」
「伝説の聖龍様が我らの味方に!」
騎士団の人々は口々に聖龍の出現に嫌が上にもテンションが上がる。そして、
「魔族軍が姿を現したぞ!」
視線を黒の森方面に向けると、そこには空も地も真っ黒に埋め尽くされたいた。全部魔物だ。
「じゃあ、アル、行くわよ」
「ああ!」
私とアルは飛翔の魔法で空に駆け上がる。
「なあ、クリス、先ずは君の攻撃魔法であらかた吹っ飛ばしてくれよ。残りは聖龍のブレスで、後は個別に撃破だ」
「ええ、最初に私の得意の攻撃魔法ハーロ・イーンであらかた吹っ飛ばすわ」
「頼むよ!」
私とアルは聖龍の背にまたがり、魔族軍に接近した。そして、
「クリス頼む、呪文詠唱中は僕が守る」
「わかったわ」
「僕の存在忘れてほしくないな」
聖龍がすねる。でも、ここはとにかく私の最大威力の魔法で、空の魔物の小物をあらかた吹き飛ばす。私は呪文詠唱に入った。空の虚無が渦巻き、青い渦が激しく逆巻き、空も青く染まった。魔力の奔流は留まる事を知らずに膨れ上がり、魔力を検知できない人にもその存在を認識する事になっているだろう。本来見える筈のない虚無の魔力は青い渦巻く雲として顕現していた。
「カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク 灰塵と化せ冥界の賢者 七つの鍵を持て 開け地獄の門 ハーロ・イーン!」
地獄の門が開き、地獄の亡者のエネルギーが空の魔物に降り注ぐ。
光線が魔族達を薙ぐ、そして、半数の空の魔物が一瞬のうちに墜落していく。
「次は僕の番だね。生き残ったドラゴンは僕に任せて」
聖龍は一気に増速して、魔族軍に接近する。そして、
「くらえ、僕のブレスを!」
聖龍から凄まじい威力のブレスが吐き出される。ブレスは炎というより光線だ。凄まじく早く、一瞬光り、ドラゴンや大型の魔物に命中すると大爆発を引き起こした。
「ざっと、こんなものさ」
魔族軍のドラゴンはほとんど聖龍に倒された。
「次は僕の番だね。雑魚はかたっぱしから斬り捨てる。颶風剣!」
アルは風の魔法剣を発動して、魔族軍の雑魚達の中に突撃する。アルの身体は風の象徴たる翠色の光の煌めきをまき散らしながら、髪を虚無の魔力…青の奔流でなびかせて空を駆けていく。
「翠嵐破衝斬!」
何匹か空の魔物を魔法剣で斬り捨てる。アルは奥義を繰り出した。360度に風の魔法剣の斬撃を話す技! アル、いや、前世のイリスの得意技だ!
たちまち魔族軍の空の軍勢は、そのほとんどの戦力を失った。しかし、強い魔力を伴った、魔物が近づいてきた。それは禍々しい姿のアークデーモンだった。アークデーモンは人語を理解する最上位の魔物だ魔族にもっとも近い。
「まさか、こんな処で苦戦するとはな。ここは我と一騎打ちしろ。我は興奮したぞ。これだけの術者が人にいるとはな」
「なら、僕が相手をしよう。500年ぶりかな? デーモンを狩るのは?」
「か、狩るのだと?」
アークデーモンは憮然とするがアルは無視する。
「クリスは休んでくれ。君には魔族との戦いが待っている。こいつはそこそこ強い」
「わかった。アル、お願いね。無理はしないでね」
「心配してくれて、ありがとう」
「無事に勝ったらキスしてね」
「なんだよ。クリスらしくないね?」
「私だって女の子なのよ。少し位、ロマンティックな気持ちにさせてよ」
「今世の大魔導士は少し、女の子らしくなったんだね」
「意地悪言わないでよ。私の気持ち知ってる癖に」
「打算に満ちた気もちだろ?」
「アル、私の事、なんだと思ってるの?」
「思っている事言っていいの?」
「いや、やっぱり辞退するわ。傷つきそう」
「嘘だよ。クリス、愛しているよ」
もう、アルの馬鹿、こんな処でいきなり告らないでよ!
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