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アンの同級生の好感度を上げておきますわ

 アンの事を思い出して介抱すると、何とか午後の騎士爵授与式には間に合った。アンはよろよろとだが、何とか立ち上がり、式に出席した。私は休んでいる事を勧めたのだけど、アンはどうしても騎士爵授与式に参加したがった。それはそうなのかもしれない、彼女にとって、騎士爵を得る事はお家の最大の関心事なのだ。名誉ある式典に出ないだ等、考えられないのだろう。正直、騎士爵って、名誉だけで、領地をもらえる訳でもないんだけど、人の価値観ってね? ホント、貴族って言っても、収入になる訳じゃないんだよね。だから私にとってはあまり騎士爵は興味ない。食べれないし、お金にならないもん。それよりも騎士という安定した職業につけた事に安堵した。もっとも、自分が伝説の大魔導士である事がバレる可能性が増えたのだけど……


 騎士爵の授与は魔法学園の卒業式みたいだった。一人ずつ名前を呼ばれて壇上の団長から騎士爵の証である騎士勲章を手渡される。厳しい試験を通過した者かそれなりの人物から推薦された者だけに贈られる勲章。この勲章は公式な場では胸につける事が義務ずけられている。身分証明書代わりみたいだ。帝国ではそういう解釈だった。もっとも、帝国の騎士は騎士爵をもたたない。一方、騎士爵は騎士でない人間に多くの場合授与されていた。様々な方面で活躍した人物に贈られる特別な勲章の意味合いが強い。もちろん、騎士爵を授与された者は貴族となるので、それなりの公式な場に出席する事もある。私達のアクレイア王国騎士の場合、貴族の晩餐会やお茶会、公式行事の際の護衛の職務の際に騎士勲章を胸につけて勤務する必要がある様だ。一目で騎士の身分を示す事ができるので、護衛役には便利なんだろう。


 騎士爵授与式が終わり、入団式は終了したが、午後から初めて騎士として働く事になった。私の最初の仕事は結構ハードだった。


「中隊長マジなんですか?」


「マジに決まってるだろ?」


 私はため息が出た。なんと第三中隊長フレデリクは第三中隊の全員に収納魔法を付与した革袋を支給すると言いだした。革袋は中隊から支給されるが、魔法を付与するのは私だ。人使い荒いな!


「収納魔法付きの革袋50個が完成したら、魔石を剣の柄に組み込むの手伝ってくれ」


「私がやるんですか? 教えたのは私ですけど、誰にでもできるじゃないですか?」


「もちろんお前だけでは不公平だから、アン君とアル君、それとエドヴァルド君にも手伝ってもらう。新米の仕事だ。反論は認めん」


「わかりました……」


「おや? 声が小さいな? もっと厳しい任務を与える事もできるんだが?」


「喜んでやらせてもらいます!」


こいつ、ドMの癖に時々ドSになるからな、始末が悪い。


 私はその日だけで10個の収納魔法付与の革袋を作り、アン達に剣の柄に魔石を埋め込むやり方を教えた。そちらは魔法というより、唯の日曜大工なので、意外とアルとエドヴァルドさんが役にたった。アンは不器用で、ちょっと頼りないが、二人がしっかりサポートする。いいよね、癒し系美少女は、周りから助けられるの当たり前だからね。


「(今度、アンにドギツい意地悪をしてやろう!?)」


「(流石、クリス性格悪いね、アンに嫉妬したの?)」


「(……)」


「(嫉妬したんだ……)」


「私はただ、人の為に尽くすのが嫌なの!?


 これ、絶対、お給料に見合わないよな!?」


「まあ、騎士のお給料は公務員だからね」


「ちくしょおおおおおおお! ギルドで売りさばいたら、大稼ぎできたかもしれないのにいいいいいいい!!」」


「おや? いいのかな? 目立つぞ!?」


また、馬鹿犬だった。何時の間に……


「察るに実家の秘伝はあまり世の中に広めてはまずいのだろう?」


「そうですよ!? 実家にばれたら、私!? 殺されるかも!?」


嘘をしれーと言う。そもそも実家の秘伝じゃないので、実家は???となるだけだろう。


「大丈夫だ。俺達は騎士だ。どんな事があろうと全員がお前を守る。安心しろ」


「……」


 うーん。言いくるめられた。でも、守ってやると言われてちょっと嬉しい。


少し、気分が良くなってきたので、いい事を思いついた。例のアンの同級生達の事だ。アンはもう彼らとはどうにも相容れないだろう。しかし、私は赤の他人なのだ。彼らは同期、反目しあうのは好ましくない。だから、仕方ないので、こちらから媚びを売って、好感度を上げておこう。


「あの、ありがとうございます。それはそうと、お願いがあります」


「なんだ? 俺にできる事なら協力してやろう。なんせ、収納魔法付き革袋に魔剣が手に入ったのだからな」


「その収納魔法付き革袋を同期の新人騎士に贈り物として差し上げたいのですが?」


「駄目だ。魔法付きの革袋はかなり貴重だ。団長とも話しあったが、第三中隊以外には秘密にする事になったんだ」


「そ、そんな……」


「安心しろ、代わりに魔剣を贈れ。魔剣はダンジョン等で多量に見つかり、ギルドで売られている。持っていても不思議はない。お前も実家の秘伝が公になると困るのだろう?」


「あ、はい、ありがとうございます。でも、剣に魔石をつけると、かなりの金額になりますよ? その……革袋ならいくらもしませんけど、魔石はかなり……」


「魔石は騎士団のものだ。別に第四中隊が使ってもかまわん。この間の赤の森の魔物討伐でたくさん魔石が取れたから、お前の同期、6人分位余るだろう」


「あ! ありがとうございます!」


私はお礼を言って、頭を下げた。頭下げるのって、嫌な感じじゃないのね。知らなかった。


 私はアルに手伝ってもらって、牛の魔物アウドゥムラの魔石を剣の柄にはめ込み、更に付与魔法を施した。第三中隊の人用には唯、魔石を埋め込んで、剣に魔力が籠るだけの付与魔法のものだが、こちらの魔剣は使用者に自然に闘気と魔素が巡る魔法を施した。使っている内に闘気と魔素の存在に気がつく事ができる初心者用の魔剣だ。


「君が人の為に何かをするなんてびっくりしたよ」


「別に、自分の為よ。同期と仲良くしたいじゃん」


「ふーん。僕には良くわからないな」


 それはそうよね。アルは自分が一番好きなんだものね? 二番目は私かな? いや、アンかな?


 アルは興味ないと言って逃げそうになったけど、6本も剣を持って歩くのはしんどいので、無理やり手伝ってもらって、第四中隊の訓練場に向かった。流石に、未だ本格的な鍛錬は第三中隊と同じく始まっていなかった。第四中隊の人達は新人と歓談していた。おそらく新人との懇親の場だ。


「あ、あのー?」


 私は恐る恐る第四中隊の先輩に声をかけた。如何にも心細そうに、か弱そうな女性を繕った。絶対、その方が受けいいよね?


「おや、第三中隊の大型新人じゃないか?」


「えっ? 多分アンと間違えてませんか?」


 私は多分、アンと間違われていると思った。入団式で第三中隊長とあれだけ渡り合えたんだから、当然だろう。一方、私とこの人は初対面だ。


「間違えるものか!? 入団式の女の子も凄かったけど、第三中隊長の話では、もう一人の女の子が一番凄いって聞いてる」


 あの馬鹿犬!? 何を勝手にベラベラ喋ってやがる!? 台無しだろ? 折角か弱い女の子を装う事ができると思ったのに。万が一の時、この人が肉壁となって、私の代わりに死んでくれたかもしれんだろ?


「い、いえ、私なんて、アンに比べたら……」


尚もとぼける。あくまで、人外はアンだけ、私は普通の騎士!


「まあ、謙遜するな。あの第三中隊長が認める位だから、余程なんだろ?」


「い、いえ、中隊長に認められているのはアンだけです。私は普通です!」


「クリス、とぼけるなよ。そもそもアンや僕を鍛えたのは君じゃないか?」


「(アル!? お黙り!?)」


 アルは忖度して、無言になった。幼馴染同士のアイコンタクトが判らないこの第四中隊の先輩は???となる。私は本来の目的を思い出した。


「あの、ロジャーさん達に逢いたくて……その、アンからのプレゼントを持ってきました」


 アンからのプレゼントという事にしたのは、アンを気遣っているテイを出す為である。要は自分の好感度アップだ。もちろん、それならアンが直接来るのが筋だが、目的はあくまで私の好感度アップだから、アンは必要ない。むしろ、アンがいると私の好感度まで下がりそうである。


「ああ、ロジャー達なら、呼んでやるよ。おいロジャー、ヨラン! それに他の新入団員!」


「「「「「「な、なんでしょうか? 先輩?」」」」」」


アンの同期のロジャーとヨラン他新規入団員達がこちらに集まってきた。


「例の第三中隊のお前達の同期だ。お前達に合いにきたそうだぞ」


「あ、はい、ありがとうございます」


 しかし、皆、怪訝そうだ。それはそうだろう、アンと友人の私がロジャー達と懇意にする理由が普通は無い。だが、私は愛される騎士を目指しているから、いざという時、私の身代わりに死んでくれる肉壁役には愛嬌を振りまいておきたいのだ。


「あの! 皆さんにアンからプレゼントです。魔剣です!」


「ま、魔剣? 嘘だろ? そんなのとんでも無く高価だ!」


「クリスが作ってるし、材料は団のなので遠慮なくどうぞ」


アル? 君は余計な事言うね?


「えっ? 魔剣が作れる? 信じられない? 嘘だろ?」


「でも、その剣、柄に魔石が埋め込んである。本物か?」


「本物ですよ。魔石へ魔法付与はクリスがやりましたよ」


だから、アル? ホントに君は余計な事を!?


「そんな、俺達なんかの為に……」


「アンは皆さんの事を気遣ってました」


いや、アンを気遣う私、なんて健気!


「ホントにもらっていいのか?」


「もちろん遠慮せず、アンの為」


皆めいめい剣を手に取り、試し振りする。


「なんか、力が漲ってくるような気がする」


いや、それは闘気だよ。私の付与魔法の成果じゃ。


「君、クリス君か? 俺達の為にありがとう。俺達はもう、アンに謝罪する価値も無い人間だと勝手に思っていたけど、アンはこんなにも慈悲深いんだな」


「ああ、俺達はアンの為に意地悪をしていたつもりだった。昔のままのアンだったら、騎士どころか冒険者としても、すぐに死んでしまうと思ってたんだ」


「早く夢を諦めた方がいい。そう思い込んでいた」


「そうだ、以前のアンならそうだけど今のアンは……」


「俺達は傲慢だった。アンは諦めず夢を追って、あんなに凄い騎士になったんだ。俺達の誇りだ」


えっ? 嘘でしょ? ここは私の好感度アップの筈。なんでアンの好感度が上がるの?


「アンに直接謝らせて欲しい。そして、おめでとうを言いたい。頼む、取り次いでくれ!」


「俺も、あんな事は言ったけど本心じゃなかったんだ。あんないい子に死んで欲しく無かったんだ」


あああああああああああ、もう!  何だよこいつら!


「それならちょうどいい。第三中隊も第四中隊も今日、歓迎会なんだ。それも同じ店で、俺から中隊長に頼んでみるよ。合同で歓迎会をしよう!」


先輩が余計な事しやがる。


「(トホホ、何でこうなるの?)」


「(だから、日頃の行いだろ?)」


うるせえ、アル!?

連載のモチベーションにつながるので、面白いと思って頂いたら、作品のページの下の方の☆の評価をお願いいたします。ぺこり (__)

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読んで頂いた読者様ありがとうございます☆ 本作について、 「ちょっと面白かった!」 「島風の新作を読んでみたい!」 「次は何を書くの?」 と思って頂いたら、島風の最新作を是非お願いします。リンクがありますよ~☆ 読んで頂けると本当にうれしいです。 何卒よろしくお願いいたします。ぺこり (__)
『連載版こうかい』~幼馴染に振られた上、サッカー部を追放されたら、他の幼馴染がドン引きする位グイグイ来た。えっ? 僕がいなくなって困ったから戻って来てくれって? 今更そんなのしりません~
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