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騎士団入団前夜ですわ

 そうかと思った。季節は秋、学校や公的機関の始まりの月、九の月、そして明日は月初の1日だった。そう、始まりの月、そして、新人騎士団の入団式も明日なのだ。私達が騎士団に入団となったのも、タイミングだったんだ。新人騎士は8月末に入団テストと推薦により決まる。中には騎士に相応しく無い貴族の子弟が入団する事もある。大抵は貴族の見栄だ。出来の悪い貴族の子弟に箔をつける為、騎士として一時的に働く。周りにとっては迷惑だろう。実力が無い者は戦いの場では敵より始末が悪い。とはいうものの、私達は間違いなく、貴族の推薦で騎士となる。周りの見習い騎士達からどんな目で見られるかは想像ができた。何しろ厳しい騎士学園で学び、更に厳しい騎士試験に苦労して合格した者にとって、たった1枚の推薦状という紙切れで騎士になる私達は鼻つまみ者だろう。もちろん、実力で認めさせるけど、最初は嫌な思いをするだろうな~と思った。


多分、私が我慢できず、何かやらかすと思うな。そう私はクリスだから仕方無いのである。


 8月31日、入団式を明日に控え、私達は新人騎士団用の寮に入居していた。ケルンに実家のあるアンも入寮した。アンは本気で騎士として武勲を立てるつもりらしい。彼女の実家は代々騎士の家柄で武門の家柄なのだ。騎士として武勲を残すのが、彼女の一家の悲願なのである。


「クリス、僕達の配属先は第一騎士団第三中隊みたいだよ。四人共同じだ」


「はぁ?……」


 私は絶句した。あの変態中隊長の元で正式に騎士として働くのか……ていうか、中隊長を呼ぶ時、やっぱり馬鹿犬じゃまずいんじゃないだろうか? 馬鹿犬要求されそうではあるが……


「それにしても第三中隊って、かなりの実力者ぞろいみたい。あの中隊長、副団長も務めているらしいぜ。そして、主な仕事は赤の森の魔物討伐らしい」


「第三中隊が精鋭なのは当たり前よ!  第一中隊はこの領の貴族なんかの護衛が主任務だし、第二中隊はケルンの街の守護隊兼憲兵隊なの! つまり、実戦経験が一番多いのが第三中隊なの!」


 エドヴァルドさんとアンが仕入れた情報を教えてくれる。いや、アンの情報は元々知っていた事かもしれない。


「それにしても、いきなり第三中隊に配属だなんて、名誉だわ! 普通新人は第四中隊から出発なのに! 第四中隊は遊撃隊という事にはなっているけど、新兵や老兵が中心なの。つまり、新兵の教育は普通、第四中隊で行うの! それがいきなり第三中隊だなんて、大抜擢よ!」


「……」


 アンが喜々としてはしゃぐ。私は、うわぁとちょっと遠い目をしてしまう。だって、絶対新兵にも古兵に感じ悪く思われる。


 騎士か……どうもそういう仕事は判らない。今世では貴族の令嬢として生まれて、守ってもらう側だった。前世では冒険者出身で、騎士の友達はいたけど、自身に騎士の経験はなかった。冒険者は負ける戦いはしない、負けと踏んだら、さっさと逃げるのが常識だ。だが、騎士は引かぬ、媚びぬ、顧みぬである。騎士は絶えず守る対象がいる為なんだろう、だから逃げるという選択肢は与えられない。


うわぁ、圧倒的に強い魔物で出くわした時……


私、戦えるかな? 負けるとわかっている戦いに身を投じる事が、できるかな? 多分、一人だけ逃げるかな?


「……クリス?」


「いや、ええと、騎士団の方ってどんな方がいらっしゃるのかなぁと思って……」


アンに言われて誤魔化す為、適当なことを言った。まさか騎士になっても、いざという時に逃げるべきかどうかマジで悩んでいる事ばれたらまずそう。でも、アンは私に丁寧に教えてくれた。


「第一騎士団はこのケルン、帝国との国境を守る守護騎士団であり、一番の精鋭よ。帝国出身のクリスさんとアル君には言いにくいけど、帝国と戦争になれば、真っ先に戦端を開くのがこの団よ。そして、団長がイエスタ・メクレンブルグ様、王族でもあられるわ。そして、第一中隊長のクリストフ様、第二中隊長のダニエル様、第三中隊長の馬鹿犬……フレデリク様、そして第四中隊長がクルト・オルフ様よ」


「は、はぁ……」


 はぁとしか言いようがなかった。正直、突然騎士団に入団させれたから、目を白黒させるよりないのだ。


「それにしても、クリスの叔父様って、どこの所属なの?」


「えっ?」


 私は驚いた。てっきり知っていると思っていた。騎士団長の顔は見る機会……普通無いか……


「あの、叔父様はイエスタ・メクレンブルグ様よ……」


「ええええええええええええええええええええええ?」


 自分の叔父に様をつける事に躊躇したが、今は身分差が天と地ほど違う。早く慣れないと。しかし、アンの驚き方はあまりに驚きすぎだ。


「いや、だって、イェスタ様は王族よ? そんな人が叔父さん?」


「だから、クリスは元皇女様候補で、皇太子の婚約者だったんだ。当たり前だろ?」


アルが説明してくれた。なんかアンが私を見る目が生暖かく感じる。


「今は平民と貴族様よ。叔父様と言ってもあまり甘えられないから、この事は伏せておいてね」


「う、うん。わかった。私にも察しがつくわ。クリスの素性は知られたくないわよね?」


「……」


 しょんぼり黙ってしまった私を見て、アンは困ったように小さく首をかしげると、こんな事を言ってくれた。


「明日の騎士入団式でイェスタ団長がご挨拶をされるはずだから、私ももう一度良く見ておくわ。……ところで、騎士団の制服をもらいに行こうよ。制服は所属によって異なるから、間違えないようにしないと。そして、今日は早めに寝ようよ、明日に備えた方がいいわ!」


 せ、制服? そうである、制服は重要だ。制服を着ると美少女強化3倍になると言われる。スキー場のゲレンデで美人度が3倍になるというあれと同じ理屈だ。制服には興味ある。叔父様自身には興味ございません。


アンも多分同様なのか、私と二人で喜々として、制服配布所まで行った、所属予定の第三中隊の配布所は第四中隊とは別口にあった。おかげ様で、間違える事無く制服を手に入れた。


 さっき支給された制服に身を包み、自室の姿鏡をぐいぐい覗きこむ。


騎士団の制服は、責任と礼儀を象徴する白地をベースに、青と銀の斜め線が差し色として入る。


そこに、第一騎士団の証として、王家の紋章である聖龍が描かれた襟章を身に着ける。


「……制服効果ってすごいな。美少女どころじゃないわね。街歩く時は気をつけよう」


鏡に映った自分にうっとりして、まんざらでもない気分で眺め、決めポーズを取ってみる。


すると、鏡の中に、私を見つめるもう一人の美少女が映りこんだ。


ちょっと、私の事アホな子と思ったでしょ? アンの目はちょっと馬鹿にした目だ。


「アン、馬鹿にしたでしょ? でも、自分でも可愛いと思えて仕方ないの……」


「はぁ、クリスさんは自分には正直だから……たまには他人を誉めた方がいいですよ」


「はぅっ!」


 アンはそう言うと私を押しのけて姿鏡の前にたった。悔しいけど、アンの方が美少女力が上だった。やっぱり正統派癒し系美少女のアンは、可憐さにおいてはかなわない。内面が出るのかな? 私は内面がアレだし……


 私とアンは同室となった。あたり前の事なんだ。騎士の女性は私達を合わせて4人しかいないそうだ。他の女性騎士は先輩で、既に寮を出ている。従って、四人一部屋のこの寮で、私とアンが同室となるのは当たり前だった。


もう、アルと同じ藁の寝床で寝る事もないのだろう。ちょっと寂しくもあった。以前は朝、目を覚ますと目の前にアルの顔があった……なんて事は良くあった。何せ、私の寝相が悪いから、気がつくと何処にいるのか自分でもわからん。いくら幼馴染でも起き抜けの目の前にアルの顔があるとびっくりするが、アルにはこっちの方がびっくりしたよと言われる。ごもっとです。アルは定位置で寝ていて、私が寝相悪くてそうなるから、文句言えない。


……あ、あれ? 私、アルと一緒に藁のお布団で寝れない事、凄い残念に思ってる。私、アルの事、なんとも思ってないって事でホントにいいのかな?


連載のモチベーションにつながるので、面白いと思って頂いたら、作品のページの下の方の☆の評価をお願いいたします。ぺこり (__)

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『連載版こうかい』~幼馴染に振られた上、サッカー部を追放されたら、他の幼馴染がドン引きする位グイグイ来た。えっ? 僕がいなくなって困ったから戻って来てくれって? 今更そんなのしりません~
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