母なる大地
SS級モンスター、ユグドラシルとの決戦場であるセッカの街に向かう道中。
馬車に揺られるカレン達は、そうそう感じることのない緊張感に包まれていた。
「………………」
「もうすぐ着くね……カレン」
「…………うん」
「SS相手は私達も初めてだよね……流石に少し不安だなぁ……」
「戦うのは俺達だけじゃない。他の手練れの冒険者とも協力すれば、勝てない相手じゃないはずだ」
「ジェシーの言う通り。1人1人が最善を尽くせば、私達が負けることはない。……だから、あんたもしっかり頼むよ、カレン」
「……分かってる」
「マティアスならきっと大丈夫だ。あいつのバカみたいな根性なら、ボロボロになっても死にはしない」
「……できれば、ボロボロにもなってほしくない」
「……それは贅沢だよ。あいつみたいな、自己犠牲も厭わない奴なら特に」
今のカレンの胸のうちは、これまで戦ってこともない強敵に対する不安よりも、そんな敵と戦ってマティアスは無事なのか、という不安に満ちていた。
自分はようやくマティアスに思いを打ち明ける決心をしたのに、その前に彼に何かあったら……マティアスの無事を自分の目で確認するまでは、このカレンの不安は尽きないのだろう。
「……なんだろ、あれ」
「……どうした、チコ? ……あれは……」
「……でっかい木? ……まさか、あれが……」
地平の先に見える丘の上に生える、1本の大木。
しかし、その大木は生きているかのようにゆっくりと動いており、やがて動いているのは大木ではなく、その下にある大地であることにも気づいた。
ーーいや、大木の下にあるのは大地ではない……巨大なモンスターだ。
「……あれがSS級モンスター……ユグドラシル」
街1つにも匹敵するであろう巨躯を誇る巨大亀、ユグドラシル。
生命という概念を具現化したかのようなその雄大な姿は、見る者に恐怖だけではなく、畏敬にも近い感情を与えていた。




