最後の砦
「急げ急げ! もっと前線に人を派遣しろ!」
「負傷者はこっちに!」
「逃げ遅れた住民がいるぞ! 早く避難を!」
巨大亀、ユグドラシルが迫るセッカの街は、既に戦場の一部と化していた。
カレン達よりも先に着いていた冒険者達は、前線でユグドラシルと戦う者、その戦いで負傷した冒険者を治療する者、セッカの住民達を安全な場所へと避難させる者に分かれて忙しなく働いている。
「S級冒険者、カレン・ルークス及びそのパーティーメンバー、ただいま到着しました!」
「おお、S級のルークス殿が来てくれましたか! ありがとうございます!」
「現状は?」
「……ユグドラシルは、こちらに向かって進み続けています。討伐できずとも、進行方向をセッカから反らせられればいいのですが……それすら叶わないのが現状です」
「……前線の状況は?」
「ルークスさんと同じS級冒険者が3人、前線で戦っていたのですが……既に1人は負傷離脱。今は残る2人のS級を軸に、A級の精鋭達が前線を支えています!」
「……分かりました。すぐに私達も前線に向かいます」
「は、はい! お願いします!」
戦況は好ましいとは言えない。
化け物とも称されるほどの実力者であるS級冒険者が既に負傷離脱しているという現実が、今回の敵の強大さを嫌でも実感させてくる。
「マティアス……お願いだから、無事でいて……」
カレンはまっすぐに前線を目指す。
本当は怪我人が運ばれる診療所にも足を運んで、マティアスがいるかどうかを確認しようとしていたが、やはり1人の冒険者である以上は己の責務よりも私情を優先することはできない。
まずは何よりもユグドラシルをなんとかする。
マティアスと会うのは、戦いの中か後になってからだ。
(……大丈夫みたいだね。今のところは、まだ冷静だ)
「……リーネ、何見てるの?」
「別に? ……っと、随分大層な砦を作ったモンだねぇ……」
カレン達の前に現れたのは、ユグドラシル迎撃のために急ごしらえで作られた砦。
元からこの場所にあったモンスター撃退用の設備を、ギルド北方支部の技術の粋を集めて短時間で砦にまで強化したのだ。
「鉄の防壁に大砲……立派ではあるが、所詮急ごしらえか……あのデカブツに突っ込まれたら一撃でオジャンになりそうだね」
「ギルドは、この砦が突破されたらセッカの街の放棄もやむを得ないと言っていたが……できればそれは阻止したいな」
「うん、倒せなくても追い返せばいいんだ。絶対にこの街を守らないとね」
「……うん。それが、私達の役目だ」
カレン達4人は、決意を固めて砦へと入って行くのであった。




