マティアスとカレン⑤
一緒に冒険者になろう。
そう言ってカレンは、自分の部屋から木の上の俺に向かって飛び込んできた。
「うおっ……とおっ!?」
俺は体全体を使ってカレンを受け止めたが、俺が立っている木の枝には2人分の体重を支えられる力は無かったようだ。
木の枝が折れて落ちる前に、俺はカレンを抱えながら必死に塀の外側へと向かう。
ここで落ちたら、ルークス家の敷地内に落ちることになって脱出が面倒になるからだ。
「うおおぉっ!」
間一髪の場面で、俺は塀の外側に向かって飛び込んだ。
飛んでから地面に落ちるまでの浮遊時間の間に、俺は体をカレンの下に潜り込ませて彼女を落下の衝撃から守ろうとする。
「いっ、てえぇっ!」
しかし受け身をとるのに失敗してしまい、俺はケツからモロに地面に落下する羽目になった。
いやぁ、痛かった。あの時は本気でケツの骨が折れたかと思ったな。
「大丈夫!? マティアス!?」
「ああ、問題ない。それよりも……」
「なんだ今の音は……」
「庭の木が折れてるぞ……」
「家の方が騒がしくなってきた……ここにとどまっていたら見つかるかもしれない。移動しよう」
「……うん、そうだね……」
俺達は人気のない路地裏まで移動し、そこで1度今後のことについて2人で考えることにした。
「……私は、このまま冒険者ギルドに登録しに行こうと思う」
「……もうそこまでいくのか?」
「うん。退路を絶ってやらなきゃ、きっと中途半端になっちゃうから……私はもう、あの家には帰らない」
「帰らないって……お前、それでいいのか?」
「……たとえ私が帰りたがっても、父様はそれを許さないと思う。……あの人は、そういう人だから」
父親のことを語るカレンの顔には、諦めのような表情がこびりついていた。
……違う。俺はお前にこんな顔をさせるために、お前を連れ出したわけじゃないんだ。
俺はただ、お前に自由になってほしくて……
「……そんなのダメだ。親と子供の関係ってのは、そんなに簡単に切っていいものじゃねぇよ」
「……切らなきゃ、私は自由になれない」
「いいや、ダメだ! お前にはまだ親がいるんだから、ちゃんとそれを大切にしなきゃダメなんだよ!」
その時、ずっと俯いていたカレンが俺の顔を見上げた。
親のいない俺が親との関係を説いたことに、何か思うところがあったのかもしれない。
「……そりゃ、私だって好きで父様との縁を切りたいわけじゃない。でも……父様は……」
「……なら、その思いを伝えに行こう」
俺はカレンの腕を掴み、彼女の家の方向に向かって引っ張りはじめた。
「……お前ら家族の縁は切らせない。そして、カレンのことも自由にさせる。……そのために、なんとかしてお前の父親を説得する」




