マティアスとカレン⑥
「……ほら、行くぞ」
「……うん……」
俺達は、カレンの家まで戻ってきた。
家の玄関前には使用人らしき人が立っており、彼女は戻ってきたカレンの姿を見るに感情のこもっていない声で話しかけてきた。
「カレンさま、お戻りになられましたか。旦那様がお呼びですので、至急お向かい下さい」
「そうかい。こっちも旦那様に用があるんだよ」
俺はカレンと一緒に家に入ろうとしたが、それは使用人に止められてしまった。
「あなたはお呼びでないのでお帰り下さい」
「……それは無理だね。俺が家に入れないなら、旦那様をこっちまで連れてこいよ」
退くつもりはない。そんな俺の強情な態度を見て、使用人は溜め息をついてからカレンに目を向けた。
「……カレン様、こんなのは放っておいて中へ……」
「……ゴメン。私の主張もマティアスと同じ。マティアスが中に入れないなら、私も家には帰らない」
カレンは、俺の側に寄ってきてそう言う。
俺の服の裾を掴みながら使用人を睨みつけるカレンを見て、使用人は言い聞かせるように話しかけてきた。
「……旦那様は、去る者は追いませんよ。あなたの方から歩み寄らねば……」
「知ってる。知っててそう言ってる」
カレンの意思が変わらないことを悟った使用人は、少し目を閉じて考えてから、その口を開いた。
「……分かりましたよ。……2人とも、どうぞお通り下さい」
「……ありがと。仲直り出来るように善処するよ」
「……はい。私達も、叶うのならばそれを望んでいます」
使用人にとっても、カレンが家出をして家族との縁を切ることは望むことではなかった。
確かに父親とのそりは合わなかったかもしれないが、それでも彼女は13年間この家で育ってきたんだ。
それだけ長く続いた縁が切れるのは、周りの人からしたら寂しいものなんだよ。
「……仲直り……出来るかな?」
「……させる。どんな形だろうとな」




