3章 エピローグ
前回:――てんやわんやで大団円?ただの焼き肉パーティだけどねぇ――
ケサランパサランの武器贈呈は王女の希望以上の出来だったらしく、盾や日本刀、柳葉刀、青龍刀とトンファ、どれも彼女の従者となっている獣人たちに気に入られた。
思っていた以上に彼らは鍛えられていて、始めから日本刀で巨大な火竜肉を真っ2つにしたりしていた。あれ、塩漬けして時間たってるからかなり硬いんだがね。
その場に来ていたユウタは自分よりずっとうまく刀を扱っている獣人を見て絶望していたらしい。
尚、彼は先月ステータスを測った結果、剣術レベル2に上がっていた。レベル=年数が目安なんて言われてるモノだから、俺も大概だが、彼もまた成長は早いようだ。
……俺が成長早いのはリサさんの指導のたまものだ。間違いない。ただし、彼の職業は学生から『ニート』に変わっていた。……最強って事ですねワカリマス。
それはともかく、ユウタはなんとか剣士として独り立ちしてもいいレベルになったのだけど、本人の希望で、特例ながら弟子として未だにダントンと師匠に扱かれている。たまにある旅にもついてくる事になるようだ。特殊任務には連れて行かないが。
で、その本人は、というと。
「うあああああ!クッソー!こんなこと知らせなくてもいいだろ、チクショー!ありえねええ!」
例の村娘と文通で、愛を育もうとしていたらしい。
昭和な環境のヒトであればおかしくはないのは分かるだろうが、平成生まれには納得しづらかったらしく、やり始めるのにどれだけ童貞っぽさを出すのか、じれったく思っていたりしていたのだが。まあ、結果は最初から分かっていた。
「まあ、人生ってそんなもんだよ。喚いてもしょうがないだろ?相手が結婚して幸せになるっていうなら、その幸せを願うのもまた、愛なんだよ」
弟弟子の為に自分を犠牲にした、白い髪の人みたいな発言だな。言ってて、自分で引くわ。
――うん、そんなヒトいるんだねぇ――
あれ、大精霊の言葉が随分棒読みのような気がする。視線もどこか、しらけているような、白い眼のような?気のせいか、うん。
「でも、だってえええ!」
「遠くの親より近くの他人。そんなもんだよ」
適当言ってすいません。あの村娘、こいつが会ったときには多分その男とアハンな関係にあったはずだ。何しろこいつと一緒に助けた翌日、匂いを少なからず共有していたし、アハンな匂いがした。御盛んだことで。
――まあ、それは人間だもの。解ってやらないと――
「クッソー!絶対見返してやるー!」
「はあ、アオハルですねぇ……誰得だろうね?」
「ユータ、相変わらず気持ち悪い。どうしたの、ヴァン?」
アリスがユウタのウザさに気付いて近づいてきた。さっきまで森の方に入って、親の仕事を手伝っていたんだろう。
「アオハルしてハートブレイクして、自暴自棄ナウ。ナウいヤングは訳解らないねぇ」
「うーん、ヴァンが何言ってるか分からない。ズルいよー、ワタシにも教えて」
しょうがないから、ざっくばらんに経緯を話す。勿論、旅の時の内容だけだ。その前のうざさったらないからね。
「ん?それって元々……」
「アリスさん、シャラップ。言っちゃダメなこともあるのだよ?この子のハートは今、割れたガラスみたいなものなんだから。触るとさらに割れるし、チクチクしてくるから」
地雷踏む直前で止めたんだけど、意味無かった。
「何言ってるんだよ、ヴァン。ありえないだろそんなことぼくしないだろぼくは本気であの子の事好きになっていたのにあの子はぼくのこと見てなかったんだそのくせ優しくして気持ちを持たせていたっていうのに気づいてないんだよもてあそばれたんだそうでなきゃなんだよぼくはどうしてこんな傷付かなきゃいけないんだうあああああ!」
「ね、触っちゃいけない」
――やっぱりこいつウザァ――
第一こいつは分かっているんだろうか?
「ユウタ、たびたび言ってるだろう。女性は怖いものだ。
寄り集まったときの結束力も、ネチネチした状態の感情も、理由のない嫉妬も、女性にとっては当たり前なんだし。ヒトによっては男心をくすぐっていくらでも操る奴もいるんだよ。
しかもそれが、天然か狙っているか分かりづらい事も多いからね。
ハーレムなんて夢見るものじゃない。いくらこの国が一夫多妻制や一妻多夫性を許可しているからって、殆どの人がしないのはその手の感情が面倒な物だからなんだよ。
……権利を手にするのに金もかかるしね」
そもそも人生を請け負うのだから、金持ちしかできないと思うけどね。
「ムー。ヴァン、ワタシはそんな事しないよ?解るでしょ」
俺の言葉にご立腹のアリスさん。そうね、この子はどっちかって言うと、清貧、ちょい天然、真面目ちゃん。裏とか表は、あまり、無い。
――うん。あまりね。裏が全くないのはほぼいないからねぇ――
寧ろそういう絶滅危惧種はすぐ判る。何しろ超天然とか、超気分屋とかそんな人だから。
はて、後者はどこかすぐ近くにいたような?破壊的過ぎて、気分屋じゃなく破天荒な感じもする。破壊的だし、誰もやったことないモノとか好きみたいだし。古い意味でも現代的意味でも合うよな?
――知らない――
イフリータさん、冷たいよ。ちょっとは絡んで……気分じゃないんですね、わかりました。
「あれ、アリスちゃん眼の色変わった?茶色くなってきてる。前、青だったよね」
ユウタ、落ち着いたらしい。そのまま話流しちゃおうか。
「だから言っただろ?成長すると、髪色や目の色が変わることがあるって。茶色の方が落ち着いてて、俺は好きだけどね」
「えええ!いや、青い方がいいでしょ!だって自分だって赤い目なのに変わらないだろ?それが黒くなったらどう思うんだよ!」
「どうでもいい」
「うーん、ワタシも眼の色変わっても、なんか変わった気がしないからなー。それにね、前の色だと目立つこと多いからちょっと嫌だったんだよ?」
「でも、どうして?それよりなんで金髪碧眼とかいるのさ!」
「それは、エルフ由来。師匠達もそういう特長だろ?アリスの親2人とも、薄めだけどエルフの血が混じってるんだ。それ由来の隔世遺伝」
なお、エリナさんたちと関係あるのも、エルフの繋がり。ハイエルフの配下の調査員、それがアリスの親だったりする……この村に滞在しても、結局あのヒト達に会うことになっただろう。
「え、でも地球だとこんなこと、本当にあったの?ウソでしょ?」
「マジだっての。俺は直接見た訳じゃ無いけど、日本人で絶対ないなんて言った奴なら、『知ったかぶりの餓鬼』確定だろ。この辺りは大人も子供も関係ないよ」
「村長もなんか、わけわかんない事言ってたけど……ん?それじゃ、村長もガキなの?あの人45歳なのに……」
「「いや、80歳くらいだろ?」」
不服ながら、ユウタも同じくらいに見ていたらしい。でもあれで40代?顔のしわとか、背の曲がり方が老人ホーム行きの人レベルになったあいつが?
「あたしゃ45だよ、文句あるのか犬餓鬼!昔冒険者やってた影響だよ!」
地獄耳だったらしい禿が家から顔をのぞかせた。近くにいたのか。しかし、そういう事か。合点がいった。バカの頂点じゃないか。
「なるほど、ユウタよく見ておけ。回復魔術を使いまくった結果、ボロボロになったダメ冒険者の末路だ。
若くしてあれほど汚い皺とシミだらけなお肌と弱った身体。あれで生きるんだぞ?」
しかも見た目だけじゃないんだよな、確か。アリスも興味津々だ。乗り出してきた。
「多分、冒険者をやめる時に温情という名目でこの地を貰ったんだろう。たまにあるらしいからね。
領主から間借りする形なんだが、ちゃっかり税金は払わせるし、うまくいかないと色々吹っ掛けられる。
総合的に、威張る事以外できる事が全くない。得しないんだ。こんなことするのは主に、バカのすることだ」
「「へー」」
これが現実。おいしい話には裏がある。常識ですね。知性あるなら、日本人だろうとサルだろうとこんな罠には引っかからない。
「キイー!聞いていればあのガキャアア!流星弓食らわせるよ!」
「あれ?それって盾の話の奴?」
うん、それはネット小説だね。ネーミングが簡単だからかぶりやすいって感じだ。
「ユウタ、同じ名前だけど違う。あれは判定が多い技とかだと思ったけど、このババアが言ったのは『金色の雷鳴』が使う技。確か……」
「確かあれぇ、50年くらい前にアタシが独自に開発したものだけど、誰かに教えたって事、無いんだよねぇ。それ本当にアタシと同じ技なのぉ?」
アリスの親の所に行っていた師匠達が帰ってきた。リサさんがいくつか羊皮紙の巻紙を抱えてる。エリナさんが収納すればいいのに。まあ、いいか。
「師匠が一度教えてくれたんだけどさ、並の術師は3発撃てばマナ切れになるような消費デカい術式で、矢が流星みたいに燃えながら渦舞いて飛んでいく、最大射程10kmの超長距離スナイプ技なんだよ。
一応望遠魔法使うんだけどさ。威力も馬鹿げていて、当てれば大型ドラゴンの頭も吹っ飛ぶくらい」
知らないだろう2人に話す。アリスは想像した上で、訪れた吟遊詩人から聞いたのか、納得していたが、ユウタは青ざめている。
そりゃそうだろう。普通のスナイパーでも、1kmなんて、ちょっとした神業レベルで扱っていいだろうから。そういう訓練を受けている自衛隊員も実際いるはずだし。
自衛隊は整備員だって、戦闘しないとは言っても、優秀な奴が多い。直接会った人は、物凄くいいヒトに見えたけど、自殺の名所って言えるくらい精神的に追い詰められる場所でもあるし、考え物だ。
下手なブラック企業より、ブラックだ。あ、冒険者もあまり変わらないや。
「おばあちゃんがアタシと同じ技使えるって、ホントォにぃ?見てみたいなぁ」
笑顔だけどキレてるエリナさん。それを見て青ざめている禿。うん、無視しよう。相手する必要がないね。自業自得だ。
「ヴァン、今度はどこに旅するの?ワタシも行きたいなー」
「旅は冒険者になってからいくらでもできるよ。これから行くのはテミラっていう、特殊な建造物のある場所だ。ピラミッドって、解る?」
「ちょ、ピラミッドあるの?ウソでしょ、エジプトかよ!」
「それが森の中にあるから、面白いんだよ。名産は確か、葡萄と梨と桃」
「山梨かよ!」
こいつ突っ込みキャラが板についてきたな。ここ鍛えるか?
――構って欲しいだけでしょ?――
それで適当に相槌付ければ面白くはなるぞ?周りを楽しませるのは社会人としても大事な要素の1つだし、一応、モテる要素でもある……多分きっとメイビー。
「何それ、変なの。でもそしたら、モモのはちみつ漬けあるかなー?」
「あればいいけど、道中内戦している国の近く通るからねえ。結構物資減ってるかもしれないなあ。あったら買ってこようか?」
戦争で物資不足、あるあるですね。隣国にまで影響が回っていてもおかしくない。イヤダイヤダ、平和がいいよ、平和が。
平和な納め方を知らない禿を睨みつける師匠達が飽きるまで、俺たちの雑談は続く。
……平和ですねえ。
精霊のボヤキ
――アオハルとかナウとかヤングとか、意味わからないけど?――
言葉遊びだよ、古臭い物を使ってるけどね。
――ああ、年代物の精神だからカビ生えてるんだ――
よく分からない事言わない。




