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フェンリルの挽歌~狼はそれでも狩りがしたい~  作者: 火魔人隊隊長
オカシナ イセカイ ファンタジア
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15話 違う!

前回:――最近噂の狼、評判悪いらしい?――

「ドラゴンは、ステーキだと癖があるけど調理次第、これが真理。

 個人的には、ビーフシチューよろしく、いくつかのハーブとワイン、肉と骨と野菜で作る、ドラゴンシチューが最高だと思っているよ。

 それがどうかした?」


 夕食の時に犬にドラゴンを倒したことがあるか聞いたら、「ある」って言われて、どうしてか聞いたらこの言葉が帰ってきたんだけど。

 なんだよそれ。酒場の壁にもたれて放心気味になっているぼくを無視して話し続けてる。


「倒したと言っても、いつも俺1人って訳じゃ無いし、奇策で狩ってることも多い。

 そもそも能力が(ほむら)を軸とした、火属性メインだからね。凍らせたり、滑らせたり、焼いたり、抉ったり、脳みそ爆散したり。

 斬撃はまあ、そこそこに使う牽制って感じだ。ドラゴン相手じゃ、相当鋭い斬撃か、重すぎる一撃じゃないと通らないからね」


 ここまで言って、シードルを飲んでる。こいつが言う分には薄めてるからアルコールは心配いらないとかって話だけど。それより脳みそ爆散ってなんだよ、気持ち悪い。


「しかし、毒持ちは厄介なんだよね。強い癖に、食えないから。なんであんなのがいるのか……」

 骨付き肉みたいのをほおばりながらなんかボヤいてる。たまに口上に向けながら食ってるよ、こいつ。何だこの動き。


「どこまで食うことを考えてるんだよ、お前……」

「そりゃぁ、ヴァンくんが狩人やる理由も、おいしいお肉の為だもんねぇ。基本的にこの子は、美味しい物しか興味ないのぉ」


 グルメかよ。犬の癖に……あれ、そういえば?


「昼間聞いたけど、ほむらのぎんろうっての、お前なの?犬なのに」

「ガブリ」

「ぎゃああああああ!」

 カミツカレタ。


「狼だと言ってるだろ。姓もフェンリル、北欧神話の神の名前だろ。どっちかって言うと悪役だけど」

 前みたいにがっつり噛みついた後、放して話し始めた。でも、おかしくないか?


「フェンリルって魔狼って感じの奴だよね?なんでそんなの名前になってるんだよう」

「知らん。虚勢だろ、ずっと昔の、先祖の虚勢」

 そこは人のせいなのかよ。


「だからぁ、神の一族って言ってるじゃなぁい?どれだけ言っても信じないのねぇ。何で信じないのぉ?」

 …………?今、なんて言った?


「証拠っていうほどのモノがそろってないでしょ?自分だけが目にしたものは、幻覚である可能性もあるけど、全ての人が確認できるものなら、証拠だからね。

 その神と呼べる、初代のフェンリルの墓とか、見つかってないらしいじゃないか。逸話はけっこうあるし、後代の墓はいくつか見つかってるのに」

 ……え?


「ええええ!こいつが神様ってなんだよぉぉおおおお!それだったらぼくにチートくゲェ!」

 叫びながら掴みかかったら、なんか殴られた。

 なんで?神様だったら普通チート貰えるだろ。なんでパンチ貰うんだよ!ありえない!


「暴力反対!」

「じゃ、冒険者やめろ。これくらいなら日常だ。大方、エリナさんの落雷が来る前に収まるけどな」

 落雷って、あれか?体からビリビリしていた……確かに怖い顔だったし、変な電気だったけど。ああんなんぜんぜぜんこわくなないししい。


「神様って言っても、誰彼に力を与えるみたいな種族じゃないんだ。そういう種族は、どっかにいたと思ったけど、リスクがあるしな。その人から離れてはいけないとかなんだとか」

 なんだよそれ。ずっと一緒にいなきゃいけないのか?


「でもそれならお前は何でもできるんだろそうじゃないのか神様なんだろだったらいいじゃないかぼくだってオレTUEEE!したいじゃないかなのになんでお前だけなんだよおかしいだろそもそもそういう感情は誰だってやっていいモノじゃないのかよダッタラぼくにチカラくれよおおお!」


「努力しろ」

 一言でおわった。ぼくが力説しても何も変わらないのか?


「なんでだよおおおおお!いだい!」

「うるさい」


 犬の奴が一瞬何かやったのか、体に電気走ったみたいだ。痺れて動きが取れない。

 これも僕が悪いのか?おかしいだろ。おかしい事には叫ぶのは普通だろ。今、叫べないけど!


「あんたさぁ、自分が努力して得た力を、どうやってわけんのぉ。この子は才能あると言っても、努力してないって訳じゃ無いんだしさぁ」


 努力ってそんなにしてないだろ?見てる限りでも絵を描いたりモノ造ったり歌の練習したりしてばかりじゃないかそんなの努力って言えるのかよそんな訳ないじゃないかどこが魔術の修業だよいったいいつ魔術の練習とか勉強したんだよ。


「5年の間で、もう普通の魔術はほとんど覚えたしね。特殊術式の基礎ばっかりやってるから、こいつには解らないでしょ」

 特殊ってなんだよ。それに5年で覚えられるならぼくだってできるだろ。


「言う事わかるけどー、5年で覚えるなんて早すぎるんじゃなーい?エリナだって、7年くらいかかったはずじゃなかった?」

「あぁ、5年でヴァンくんと同じくらいになってたねぇ。あたしの先生が変な自慢とかしていたせいで、妨害が入るようになったから、途中勉強できない時期もあったけどねぇ。

 あとの2年はエルフの術式ね。中等の基礎くらいまでしか教わらないで、あとは独学なんだけどさぁ」


 ……よく分からない事言ってる。


「でも、普通10年くらいかかるんだったよね。良くそれを、半分くらいの時期で終わらせたもんだ……」

 ……やっぱりチートだ。そろそろ体動きそう。


「でも、魔法ってイメージとかでやるんだよね?それだったらぼくだってできるだろう!」

 ぼくの言葉に3人が白い目向けてきた。なんでだよ。


「イメージだけで、何でも魔法が使えるとか思うか?魔法が、何でもやってくれると思うのか?それだったら、大体の攻撃魔法とか、格好つけで見せたがりなだけの、無駄の塊だろ」

「はあ?!なんでそうなるんだよう!そんな訳」

「Death」

「ですじゃないよ何なんだよ意味わかんないよそもそも」


「です、じゃなくて、Death。死ぬって意味で言ったんだ。

 極論すれば、お前死ねって思えば、そいつは死ぬ。お前はそう言ってるんだろ?


 イメージだけで何でもできるっていうのは、言い換えればイメージだけで人が殺せるって事でもあるんだよ。


 火の矢とか、火の玉とかイメージで作ってぶつけなくても、頚椎や脳を焼き切れば、ヒトの命は終わりなんだから。寧ろ、魔術はそれ以上の現象を起こすんだからさ。

 何も無い所に、火が出るとか、有り得ない現象だろ。実際は、イメージ=魔術じゃない。


 現象を無理やり引き起こすのが、魔術なんだ。しかも、そこら辺にいる精霊に、行使して貰う形でね。イメージしたものを詠唱で伝えて、再現して貰うようなものだ。

 イメージしただけで、後は魔法のシステムが、勝手にやってくれる訳じゃない。

 あと、回復魔術の時も言ったな、ヒトの身体の内部に魔法効果を通すのには、魔力の摩擦が掛かるって。

 そのせいで、即死魔法は、無い。だから、魔術を外部から撃ち込む必要があるんだけどね。


 普通の魔法だって、マナをイメージ通りに、形作るのが元になる。そこに魔力を通して、現象を起こすんだ。自分の魔力とマナのみを基準にするから、魔術ほどの威力は出ないけどね。

 マナを形作るのは、粘土を捏ねたりするのに近い感じだよ。イメージしても、絵にしたり像にしたりした時に、考えていたモノと違う結果になるなんて当たり前にあるだろ。

 ライオンを絵画で描けなんて言われても、出来上がりが、下手なヤツなら挽き潰された猫、なんて見た目かもしれない。

 そのズレを直すために、一見シンプルに見えても、そこに複雑な計算式を必要とすることになるんだ。


 魔力で作った、仮想物質となる氷や岩であったとしても、そこに質量もあるし、飛ばせば空気抵抗もある。

 風の影響をどれくらい受けるかなんかもあるから、流体力学のような要素を充分理解しなければいけない。それを無視してイメージだけで好き勝手はできないんだ。


 イメージだけでやるとしても、物凄い回数の試行錯誤が、絶対必要になる。当然、その分のマナを使う。でも普通の魔術は、普通の人なら1日に、10から20撃てれば充分なんだ。乱発できるものじゃない。それら全ての補正で、計算が必須なんだ」


 イメージ、じゃないのか?……ライオンって、何も手本が無かったら、ぼくはキレイに描けないよ。でも、それで何で、計算が必要なんだ?スケッチするのに、理屈とかいらないだろ?


「粘土捏ねるって……でも詠唱キャンセルとかできれば……」


「ストックして数時間撃たずに維持はできるけど、詠唱ナシは意味なくできないのぉ。

 魔方陣を刻印してある道具なら、簡単な魔術ならいつでもできるけど、道具もなしにやるのはアタシも無理ねぇ。省略したのが詠唱や刻印なわけだしぃ」


「下手に詠唱なしにやろうとしたら、どうなると思う?粘土に例えれば簡単だ。

 袋破ってテーブルに向けてドーン!これが世界最強の芸術、ヒャッハー!なんていってる奴いたらどう思う?

 それだけでイメージ通りにできるか?それができると思ってるのが、お前だ。

 粘土に例えるのだって、流れているエネルギー、つまり、やわらかい物をコントロールして、形作るからだよ。

 そのマナをコントロールする力、圧力の様な物を、魔力と呼ぶんだよ。魔法が全部やってくれるなんて、幻想さ。システムがあるんだよ。


 因みに、普通の魔術での詠唱は、例えるなら、ろくろとかヘラとかを使って、陶器を形作るようなもの。刻印は、出来合いの型にはめて、出来上がりを固定するもの。

 だから、詠唱は自由に形を作れるし、刻印は、素早く一定の基準で安定した結果を求められるんだよ。

 詠唱や刻印は道具で、魔力はそれを使う腕。術式の発動をする時が、焼き上げって事だね。

 わっかるっかなー?」

 ……なんかすごくバカにされてる。大体の小説ってイメージが大切とか、そんな感じになってなかった?


「もう一度言うけど、ただのイメージだけだと、実物とのズレがあることが多いんだ。魔法や魔術にも、システムがあるんだからさ。

 妄想だけで何でもできるなら、誰でも無敵になるだろ。むしろ3歳児が、最強だ。子供の想像は尋常じゃないからね。


 とにかく、俺はお前に力を分けるとかできないから。ちょっと身体強化とか、結界張って攻防を助けるとか、それくらいだ」


 それって普通に後衛じゃん。自分でもできそうじゃないか?


「それだって、本人の身体能力が低かったら、意味無いでしょぉ、割合増加なんだからぁ。同じ術使っても、リサやダントンとこいつじゃ、増える力が全然違うんだからさぁ」


 割合増加?……ステータスのあの数字に、何パーセントとか?


「なんだよそれええ……それじゃ意味ないじゃんかー!それじゃ僕強くなれないって事じゃん……」


「人に頼ろうとするなよ、自分が努力しないとダメだろ。才能とかはともかく、努力し続ければ強くなれるんだからさ」

「そんな奴いるのかよやってる奴いたらそれはバカだろ絶対!」

「ちょっと、傷つくかなー……」


 今まで話にあまり入って来なかったリサさんがつぶやいた……あれ、なんで?どう考えてもこの人もチート側の人だよね?


「リサさんの地雷なんだからさ、触れるなよ。才能なくて努力し続けた人なんだから……」


 なんだよそれ、聞いてない。それに今強くならなきゃ意味ないだろ。もう3ヶ月いるのに最強になれないんだぞ?それに頼れって言ってたじゃないか。


――――――――――――――――――――――――――――


「おまえ……そんなこと言ったのか?」

 なんかわからないけど、渋い顔をしているダントン。


 部屋に行って寝ようとしたら、ちょうど帰ってきたところだったみたいでロビーで捕まって、夕食の時に話したことを話しただけなんだけど、何が悪かったんだ?

 その時間、仕事でよく居なくなるから話に入れないから悔しいのは分かるけどさ。


「おれだって、最初から、才能があった訳じゃ無いぞ?魔術師っていうほどの才能はないが、聖属性が少し使えただけで、剣は努力し続けた結果だ。

 エルフの2人も今までに相当な経験をして、成長してきたんだぞ?ヴァンにしたって、ほとんど毎日、魔術の勉強と剣の修練を5年間して、週1回の休みに狩りに行って得た肉を、売ったり料理しているんだからな。

 いつもリサとやってることもあって、あいつの剣は相当伸びているんだ。誰だって頑張ってここまで来たんだから……」


 これじゃまるでぼくが頑張ってないみたいじゃないか。確かにアイツみたいに朝スクワットとかやらないけどさ。今は前より言う事聞いているんだから強くなってもいいのに。

 どうしてチート能力もなしに強くなんなきゃいけないんだよ。


「そもそも、料理とか売るのとかは関係ないだろお。アイツは何やってるんだよう」


「あいつは、狩人としても登録してるって、言ってなかったか?

 ほとんど登録している奴は、貴族や商人、その連れの奴らの趣味としてなんだが、一部の冒険者や傭兵が、護衛としてついて行ったりする時にも必要とされるから、登録している者がいるんだ」

「それって普通の狩人はいないって事なの?」


「いない訳じゃ無いけど、今は多くないんだよ。

 以前は畜産は郊外でやれば、あっという間に魔物に襲われていてな、街の中でも畜産をしていたが、ごく少数しか育てられなかったんだよ。

 増やしていけば、疫病が蔓延して、街が全滅する事があるからな。南にある昔の国の元首都も、その疫病で滅んだくらいだ。

 今は浄化技術が上がって、街中でもある程度育てる量が増えて、需給関係が少し変わったけどな」

 なんかよく分かんないけど、放牧とかができないって事?それで狩りが肉関係の重要な供給源だって事なのか?


「それでも、社会に流通する量が少なくてな。趣味の人たちが獲った獲物でも、買取して、流通に流したりしているんだ。できる奴だけで、やりたがる者は少ないがな。

 専属では無くとも、冒険者で狩人をやっている者が取ってきたものも、買取の対象だ」


「でも、工夫して放牧をすればなんとかできるんじゃないの?結界とか街に張ってるんでしょ?」

 この街は街壁だけじゃなくて、上空や街壁自体に結界を張っているって聞いたし、同じようにしたら多分大丈夫だろ。


「この結界がどれだけ高度で、張り続ける事が厳しいものだと思っている?高位の術者が、何人も交代しながら、夜通しで張り続けるものだぞ。

 それでも、一部の強い魔物が侵入してくることがあるんだからな。

 王家の管理している放牧場もあるにはあるが、さすがに牧場に廻す術師や騎士団員をあまり増やせないからな。それで狩りが必要になっているんだ」

 それじゃ、あいつがやってるのは結構重要なことなのか?


「騎士とかがやってもいいんじゃないの?なんで冒険者なんだよ」

「騎士団は王国の兵だからな。それも貴族か、街の衛兵なんかから選抜されたものだけだ。

 衛兵なんかは、街の奴らが自主的に始めたものが起源だから、街の外は管轄外だ。

 別のギルドとして狩人ギルドはあったが、魔物の繁殖次第で、獲物の通り道が変わったりするっていう話でな、魔物の調査をする冒険者ギルドと連携していたがその内統一されるようになったんだ。

 冒険者ギルドは世界基準でつながりがあるが、どの地域でもほぼ同じ状況だったのも理由なんだ」

 なんか段々面倒な話になってきた気がする。


「あーもう聞いてて疲れてきたよ。とにかくあいつがやってるのは意味があるって事なんだ……」

「そうなんだが……意味、解ったか?」

 分かったに決まってるじゃん、だからそういってるのに。なんか変な顔してるけど、分からない訳ないだろ。


「そういえば、伝令が来ていたぞ。お前用の鎧、できたそうだ。予定より少し早いが」

「は?今頃できたのかよ!普通買ったらすぐ着れるんじゃないの?いつまでも来ないからどうしたのか心配したんだよ!?」

 もう2週間くらいは待っていたってのに、早いとか有り得ないだろ!ゲームなら買うだけじゃないか。


「いや、実際お前の採寸もしただろ。そのサイズに造らなくてどうする?造るのにも時間は掛かるわけだし、仕方ないだろう。

 伸縮の刻印とかは、掛けられる奴が少ないから、あまり出回らないんだしな」

 なんだよそれ、アイツは伸縮する奴だったじゃないか。ぼくのは違うってどういうことだよ。


「その代わりに、身体強化と軽量化をかけたものなんだから、あまり騒ぐな。一番使い安くて強いタイプになっているんだからな」

 なんかさっきもそんな話になってた気がする。


「本当にそれ着ただけで強くなれるのかよう、なんか怪しいんだけど……」

「いや、お前が努力しないとあまり効果ないぞ?強化魔法は補助でしかないんだからな……」


 やっぱり強くなれなさそう。やっぱり、ね。


精霊のぼやき

――アイツ、理解力足りてる?半分くらい、目を回しながら聞いてたよ――

 足りる学力が無いのと、違う言語だから混乱してるのと、半々じゃない?

――そもそもイメージだけで全て上手く行くなら、イメージだけで前の世界に帰れない方がおかしいじゃない――

 ……確かに?

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