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フェンリルの挽歌~狼はそれでも狩りがしたい~  作者: 火魔人隊隊長
師弟の狂詩曲
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24話 鐘が鳴る

前回:――翼竜(ワイバーン)とかどこから来たの?まぁ、殺っちゃえば……ダメってあんたねぇ――

 翼竜は、それを見て喜んだ ――嗚呼、久しぶりのウマイ獲物が来た――


 この巣では美味い物にはありつけぬ 荒野での美味い物など知りはせぬ


 食い飽きた、まずい男どもの肉 手下でエサのクサいオーク肉


 もう飽きた、そう思ってた頃合い 迷い込んだエルフが連れた子犬


 どうせオークの狙いはエルフ ならば構わぬ、我が喰うはこの子犬


 その子犬、ゆらりと体が揺れて 数増えて、走り出し駆け回る


 狭い洞穴から身を乗り出し 翼竜は棘のついた尾を振り回し


 子犬を狙い、打ち据える 狙った子犬を確かに打ち抜く


 傍にいたオークの中身を飛び散らせて 首を傾げる――手応え感じぬ


 未だ4つの走り回る子犬の影 狙い定めて2つ尾で薙いで


 其れでも感じぬ手応え 何故ならそれは幻影 追い付かぬ翼竜の考え


 面倒だ、炎で全て薙ぎ払え 息吐き全てを焼き払え


 吐き出した炎がどこかへ消え 焼かれることなく走る影


 それに翼竜は怒りに震え 子犬を追いかけ オークを踏みつけ


 残りの二つも踏みつぶして ようやく見えた本当の子犬


 幾らかのオーク共も手伝って 壁際に獲物を追い詰めた翼竜


 「点火(イグニッション)」子犬が小さく呟いて こちらに敵意を込めた目を向けて


 翼竜は嘲り嗤い満足を覚え 体を逸らし宙を舞い尾を振り上げ


 地を抉り乍ら獲物を殴る 同時に不自然な音も鳴る


 『ゴーーン』 鳴り響くそれは鐘の音 人が作った(かね)の音


 確かにあれは幻影ではない筈 しかし尾はその手ごたえが無く


 すぐさま地に足付き目を向ける 宙に撃ち上げられた、その子犬


 異様に気付く翼竜 ――子犬が燃えている 体を捻り音が鳴る


 『ゴーーン ゴーーン』 鐘が鳴る その度に子犬、宙を舞う


 足先にできる魔方陣 足先が爆発し迸る炎塵 歪に響く金属音


 「モードフロスト!アイスシールド、アイスエッジ――エクステンション――スラローム!イイイイイイイイヤアアハアアアアアアアア!」


 鐘鳴らし、宙を舞い 炎が消え纏う氷 地に刺さり刃が作る氷の道


 勢いよく飛び込み 氷の道を素早く滑り オークの股下潜り


 狙う刃跳ねかわし 「Bang」頭打ち抜き 鐘鳴らし、更に一声叫び


 「アイスフィールド――ツンドラ!」 作り出したのは氷の大地


 育つ木々 オーク貫き 翼竜を斬り エルフ以外、凍り付き


 それに抵抗する強者(つわもの)も エルフ共に切り刻まれ 焼き払われる


 その様を見ていた翼竜 思うことは一つ ――馬鹿にして、許さぬ子犬


 影を追いかける翼竜 邪魔な木々をなぎ倒す 邪魔なオークを踏み砕く


 「イイイイイイイイイイイイイヤアハアアア!」 


 子犬は飛び上がる 廃坑に響く鐘の声 竜を屠る鐘の音


 空を飛ぶ白い子犬 地を這う翼竜は思う 是は間違っている


 追いすがり辿り着く 宙に舞う白い子犬 彼の思惑に嵌る


 「精霊は謳う 我望む――それは氷 包むは嘆き 感じぬ心の痛み――それは罪 苦しみ足掻き 己が悪を思い知り――行え贖罪! 精霊術式――コキュートス――!」


 驚き止まる翼竜に 落ちる巨大な氷塊 身体潰され翼貫く氷の木々


 痛みに耐え抜き 子犬を睨み それでも彼の攻撃止むことはなし


 翼竜が向けたアギトかわし 体を捻り鼻面踏み抜き 鐘の音鳴らし


 反転した術式 足から爆風轟き 勢いにアギトが地に伏し 


 氷の剣、翼竜に突き刺し「エクステンション」氷でつなぎ鎖と為し


 「我は(こいねが)う 故に精霊詠う 刃は貫き闇が閉ざす 氷の棺を望む 彼の者、贖罪知らぬ 為れば締め上げ翻す 聖女の無慈悲が包み込む 正義の断罪を与える 特殊精霊術式――氷の処女(アイシクルメイデン)!――」


 鎖締めあげ刺さる(つるぎ) 氷塊が割れ挟み込み 翼竜を襲う苦しみ


 形を変える氷塊 尖り食い込む杭 棺となる聖女の微笑み


 初めて翼竜に血が流れ 翼がひしゃげて 体が歪み潰されて


 流れる鮮血凍って うめき声上げて それでも耐え抜いて


 地に降りて佇んだ 子犬に牙を向けた 「ヴァンくん!」首が飛んだ


 横から入ってきた 白金(プラチナ)に輝く大剣が 命を刈り取った


 斬り捨てられた翼竜は 首のない己が胴を見て悔やんだ


 ――嗚呼、契約などせずに、空を飛んでいればよかった――


 そして かれのめから ひかりがきえた


――――――――――――――――――――――――――――


「ウウェエエエ、首真っ2つ……俺があれだけやって、ようやくちょっと苦しんだくらいなのに?」

「ヴァンくん!」


 竜殺しの大剣を地面に突き刺したまま、なんとかオークと翼竜を倒しきった私は、彼の下に走り寄った。

 まさか、こんなことになんて思わなかった。途中、何度か翼竜のブレスが見えていたし、もし、少しでも間違いがあれば……命がなかった!


「リサ、ちょっと待って!」

「ヴァンくん!なんで戦ったの、あんな奴……」

 彼を怒ろうとして触れた瞬間、彼は火に揺らいで消えた。……幻影?


「リサ、あの翼竜(ワイバーン)途中からずっと幻影追っかけてたんだよぉ。一度地面から空中に上がったとき、ヴァンくんの幻影と本体が反対側に跳んでったんだからさぁ。

 それに、あまり怒らないであげてぇ。この子、森で逃げる時、氷使ってたじゃない?あれなら一番、安全に逃げられるかなって思ってたから、あたしも許可したんだしさぁ。

 跳躍力あげる術式と、足だけ火を残して作った爆発で、空中跳ね回るとか、思わなかったけどねぇ……」


 ……エリナの考えは、ちょっと私は思いつかなかった。忘れてたんじゃないんだけど、でもそれとこれとは別!

 彼は戦わない約束をしていたはずなのに!


「うへえ、何この大剣。どこぞのソルジャーの剣の反対側いじって、変な刃物つけたような……何の為?」

 いつの間にか、私の剣を眺めていた彼に近づく。


「ヴァンくん、戦わないでって言ったじゃない?どうして攻撃したの。森で、私たちにはしなかったのに!」

「いや、牽制程度のつもりで」

「言い訳しないで!約束したよね、攻撃に参加しないって。

 ヴァンくんの氷で助かったのは認めるけど、それをして欲しいんじゃないの。わかるでしょ?

 あんな奴、あなたに倒せる奴じゃない。生きていられなかったかもしれないのに、どうして戦おうとするの。戦いたくないなんていつも言ってるくせに。

 なんでそんな嘘をつけるの?!」

 頭をかいて誤魔化そうとしている彼に、捲し立ててしまった。ちょっと、最後の方は関係なくなってきたような気もするけど。

 でも、私は間違ってない。


「……なら教えてよ。なんであいつは俺ばかり狙った?子供だから、じゃないのか?」

「どういう……」

 少し暗い顔になる彼が、問い返してきた。


「狩りの常とう手段じゃないか。

 弱い者から狙う。弱いから、殺す。

 人間でも動物でも同じだ……本当なら、ここまで来たい訳でもなかった。

 それでも、力が足りなくても必要だと思って来た。そこで勝てない強者に出会った。なら、弱い物はただ殺されていろってのか?」

「違う、それは」

「違わない!

 前世の俺は弱者だ!少数派で、力も弱い、孤独なヤツだ。

 下手に力を持てばやっかまれ攻撃され、力がなければバカにされ攻撃される。

 関わろうとしてもいないし、興味ないから離れても、構って欲しい馬鹿どもに、しつこく付きまとわれて嫌がらせを受ける。


 そういう面倒事の対処の1つとして、暴力を抑える戦い方を覚えるのがオカシイか?ナイフを向けられて、怖くて何もできないまま刺されるより、怖くても奪い取って、無力化する方が良くないか?


 動物でも同じだよ。命を守りたいから走るなり、体を大きくするなり、器用になるなり、頭をよくするんだ。

 俺はただ、生き残りたいから……その1つとして戦う方法を身につけたんだ!


――弱者だから、生き残る為に強くなろうとして、何が悪い?!」


 ……答えられない。それは悪くないはず。それにずっと私は、彼はエリナと同じ、選ばれた人間の側だと思っていた。

 初めて見た時から不思議なことばかりしていて、それが全部彼なりの魔術だと知って、羨ましかった。そんな力があるのに、剣を握る彼が不思議でしょうがなかった。


 でも彼は、私と同じなんだ。故郷に居た頃の、力のなかったころの私と、同じだったなんて思わなかった。


「誰だって、1人じゃ不安になるだろうけど、その不安を誰かに押し付けようとして、攻撃するんだ。時には誰か1人に、時には大勢に。


 俺がギルドでケンカ売ったって思われているけど……違うだろ?

 ギルドの一部の奴が、攻撃しようとしていた。あるものは奴隷と、あるものは人狼と呼んだ!


 あれを無視してもいいだろうさ。それで、円満になるか?宥めて何とかなるか?……ならないさ。受け入れたくないから。聞く気が無いから。自己中心になっているから。

 ……だって怖いから。分からないものが恐いとか言って、理解しようともせずに、恐怖を相手に押し付けるから。


 アイツだって、不安だから、怖いから、誰かを攻撃したかったんだろ?」


 ケンジくん、かな?自分が持つ不安で彼を攻撃していて、しっぺ返しを受けて、仲間割れして、いろんなモノを失った。


「話しただけで、全部解決なんて絵空事なんだよ。

 相手を受け入れようとしないやつはどれだけ話しても意味無いんだから……説得なんて聞くわけがないんだから。

 そいつらは、暴力や悪感情をぶつけようとするんだ。自分が正しい、普通だ、まともだ、当たり前だなんて言って……


 異常なのに気づかずに。怖がって何も見ようとしないだけの異常者なのに。そう言う言葉を出す奴ほど、頭がイカレてるのに。


 狙われて、ただ逃げただけで助かるなんて……妄想だよ!対抗するために考えて、相手を遠ざけたりすることだって必要なんじゃないのか?

 自分を守るための刃は、必要なことだってあるだろ!」


「そう……だとしても」

 彼が戦おうとする理由、ドラゴンの事じゃなくなってるけど、それでも彼は語っている。その気持ちは、私はよく分かるから否定できない……しちゃ()()()()かな?あの頃の私も、ソレで怯えてたから。


「俺はそういう、『自分を正しいと思い込みたい悪人』から自分を守るために、戦い方を学んだんだよ。自分がいつも、間違っていないか恐いけど、それでも悩みながらやってきたんだ…………


 森でだって、命を守る為に妨害をしていたんだし!今回だって足止めが目的だ!リサさんは、それを分かってくれると思ってた!」


 それきり、彼は黙り込んでしまった。直後、トラップの壁が解除され、壁の向こう側にいた人たちが部屋に入ってきた。

 入った瞬間、氷の大地に変わっていたのに、驚いていた。


 ようやく、私は辺りを見回す。

 彼が暴れていたことで凍りついた地面。

 そこから伸びた氷の樹。

 所々に凍って固まったオークと、凍らなかったけど、切られるか、魔術で打ち抜かれたオーク。


 それに、この大地の下に居るのが不自然な、翼竜(ワイバーン)

 女性を模した氷像で固められ、首を切り落とされている。


 氷の樹で進路を阻まれ、凍り付かなかったオークが進んでくる場所が限定されて、対処は楽になった気がするし、翼竜(ワイバーン)にしても、氷が挟み込み、身動きが取りづらそうだった。横から首を狩るのも、普段より楽だったし……。

 結局、彼に助けられちゃったのかな。これじゃ、八つ当たりかな……?


「ヴァンくん!この翼竜(ワイバーン)のお肉、おいしいってさぁ。あの人が教えてくれたよぉ。いくらか切り取って、持って帰って食べよぉ。リサが怒ったのはぁ、あたしが謝るからさぁ……ねぇ?」


 エリナの言葉にも、彼は少し頷いただけで、うなだれたままだった。

 ……そんなに、傷ついたのかな?私だって、不安だったんだよ?……分かってよ。どれだけ、大事に思っているか。

 …………いつの間にか、胸の前で手を握っていた私は、ふと、気持ちの中に、変化が起きていることに、気付いた。


 それから、彼と数人をその場に残して、坑道内の探索をした。

 どうやら、あそこで倒したのは、巣にいたオークの大半のようで、後処理は、ずいぶん楽だった。

 球体のアーティファクトは、翼竜(ワイバーン)が出てきた坑道の奥、歪な部屋の中にあった。


 ……その部屋の出入り口は、1つだけだった。


精霊のぼやき

――ヤフーー!あいきゃんふらーい!――

 何故英語知ってる?その前にこれはフライじゃなくてジャンプだ。

――人間大砲っていった方が正確じゃない?――

 結局飛んでないよな?ぶっ飛ばされてるだけだよな?

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