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フェンリルの挽歌~狼はそれでも狩りがしたい~  作者: 火魔人隊隊長
森の追跡者の輪舞曲
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22話 オオカミ炎武

前回のあらすじ:産廃がなだれ込んできた。不法投棄ですねわかります。

 麦畑に潜む小鬼ども これから村を襲おうと 今か今かと合図を待つ――その時に


「イイイイィィヤアアハアアアアア!」


 どこかで声が上がる 何かを決意する 勇む雄たけびが木霊する


 直後それは躍り出た 麦畑を駆け抜け現れた 宙を舞う姿はさながら火の玉 


「――Bang――」


 そのたった一言で 隣の命が刈り取られ 小鬼の顔に驚愕の色が表れる


 何が起こったか分からない その間に火の玉、否ヒトは 小鬼を掴み――燃え上がらせる


 それを見た小鬼ども 事を成したその異形 その威容に震えあがる


 尖った耳に伸びた口 毛の多いしっぽを振り 炎を携えた深紅の瞳


 銀の毛並みに煌めく爪と牙 獣人と呼ばれる姿 笑う様は宛ら悪魔


 更に威容な理由は その身体を炎に包み 闇が近づく夕暮れ時に


 未だ陽は沈まぬと 己が小さな『太陽』であると 騙っていること


 仲間が屠られた この者が如何に異様でも その所業許してはおけぬ


 携えた武器を振り上げて 狼に一歩近づいた ――次の瞬間


「――メテオドライヴ――」 狼は言い放つ 火球を小鬼に撃ち放つ


 秒に10は放たれる 火球は宙を舞踊る 小鬼どもに降りかかる


 その間に燃える狼 ひらりと舞うように 小鬼に拳を振るい――消し飛ばす


 森に控えた小鬼ども 先兵の異常に気づくも 何が起きたか、わからない


 狼狽え怯え怒りに震え その場に戦慄が走り 固唾を飲んで待ちわび


 そして駆け寄る狼に 驚きながらも怒り出す 仲間を返せと怒り出す


 襲撃者をとらえた狼 森に潜んでいた小鬼どもに 火の玉となって突き進み


 武器を振り上げた小鬼 その懐に入り込む狼 鋭く顎を蹴り――爆散させる


 棍で殴ろうと横降りに 降りぬく攻撃をかわし 顔を掴み――炎に身を食わせる


 一歩踏み出し斬りかかり 小鬼の刀を持つ手を抑え 喉に噛みつき――喰い破る


 殴って――燃えて 蹴って――爆ぜ 掴んで――熾やし 噛んで血飛沫舞う


 その間にも火球が狙い撃ち 近づく小鬼を射ち飛ばし 体制崩れて討ち取られ


「ヤアアハアアアア!」――ヤッフーーー!きィもちいいぃぃ!――


 惨劇を作り出す 狼と彼の精霊の 興奮と快楽が創る焔


 それでも多すぎる小鬼ども ぞろぞろ集まる増援が 彼を徐々に取り囲む


 深く萌える森の一角の 小鬼がひしめくその状況 取り囲まれる、逃げ場はなくなる


 ……狼はこれを 待っていた! 「――インフェルノ――!」


 上がる声と同時 熱が生じ 空間を焼き その熱に瞬時 暴風が吹き荒れる


 そこに居た幾つもの 命を刈り取るモノ それは地獄の業火(インフェルノ)


 そこに在る幾つもの 命を狩り獲ったのは たった一匹のオオカミ


「あの人たち、大丈夫かな」――気になるの?――


 刹那、彼は少しだけ 心配を口にする 己が身を案じたあの2人


 応えとばかりに森に響く 空を裂き轟く雷鳴 地より発声した雷の声


 それは長く駆け巡る 村の辺りの命を刈り取る 上がる悲鳴もまた多数


「……この憂い、要らなそうね」――むしろ余計――


 彼の言葉に応える精霊 それでも戦いは未だ終わらぬ 再び駆け出す彼ら


 迫る小鬼どもに飛び掛かり 空から攻めようとする狼 躍り出た小鬼は逃さない


 迫る狼の空いた胸 その位置に剣を突きつけ 貫くと同時炎が揺れ――消える


 起こった事が分からぬ内に 地より飛び上がったその(アギト)に 喉を喰い破られ――血が吹き出す


 見た目は子供 走る姿は獣 襲う様は人 噛みつくアギト 惑わす炎 その所業は――正に修羅


 剣をかわして殴り――燃え 棍をかわして蹴り上げ――爆ぜ 地を転がり突き進み――炎が舞い 掴んで投げて――辺りを焼き焦がし 炎に揺らめき――血飛沫上がる 


 彼の通った森の道 黒く焦げて死屍累々 炎と鮮血で木が紅い


 狼の起こしたその惨状 目に余るとばかりに表れた 小鬼の王が現れた

 

「お、何あれ、ホブ?」


 その身その姿、また偉容 小鬼というには大きすぎ 体長3mは越えている


 手駒を潰され怒り心頭 感情に震える小鬼の王 振り上げた背丈ほどある棍棒


 小さな毛玉を刈り取るために 横降りに強く凪ぎ振るい 地上の命を狙い


 「よっと」ひと声上げた狼は ヒラリ体をひねって宙を舞い 棍棒を寸でかわし切り


 「――Bang――」 たったその一言で 小鬼の王を狩り獲った


 ユラリ揺らいだ王の巨体 そのまま横に倒れ そばの川へと身を沈め


 ゆらり揺らぐそのモノは エサが来たと喜んだ 王の体に食いついた


「これ、スライム食いきれるの?」――さあ?食べるんじゃなぁい?―― 


 これにはたまらぬ小鬼ども 我等の王が倒された 此度の襲撃頓挫した


 ゾロリゾロゾロ駆け寄って 森の奥へと帰りゆく 狼から逃げてゆく


 小鬼はつゆほど知らぬ 己らを襲ったそのものが 後に何と呼ばれるか


 「焔の銀狼」彼の初陣 小鬼の王を討ち果たし その幕を下ろす。彼の声と共に


「んじゃ 一応勝鬨 WOWOWOOOOOOOOoooooooow……」


 狼のその遠吠えは 森に深く響き渡る これが伝説の幕開けと相成った!


――――――――――――――――――――――――――――――


「はい、ただい……ま゛あ!ダジゲテェ……!」

 村に帰ってきた俺に、エリナさんがいきなり掴みかかった。


 顔が怖いとか、そんなレベルじゃない。身体から電気が走っている状態だ。どうやってるんだ、これ?……いや、実は俺も似たことできるんだけどね。点火(イグニッション)――モードエレクトロで。


「ヴァンくん、あれは使っちゃダメだって言ったでしょぉ?それに何で戦っちゃうのぉ?」


 空気が張り詰めるというか、空間が支配されてるというか。彼女から出てくる魔力の圧もあって誰も動けなくなっている。

 村には被害は出ていなかったらしく、村人全員集まって一塊になってる。


「あ゛あ゛あ゛あ゛……ごべんな゛ざいぃぃいぃ……」

 扇風機の前で話したような、変な声になってる。痺れて筋肉がおかしなことになりそうだ。


――まあ、自業自得でしょ。アタシは楽しかったからいいけど――

 こら、殺しを楽しんじゃいけません。俺もヒャッハーなってたけど。いけません。それはサイコパスだけで充分です。ワレワレ、サイコパス、チガウ。


「なんでいう事聞けないの?ねぇ……」

 ちょっと涙滲んでるみたいだけど、無言になったときに余計に雷撃が強くなってます、やめて死んじゃうって叫びたくても叫べない。白目むきかける。アババババ……


「エリナ、そろそろやめてあげて。ヴァンくん死んじゃうよ?」

 リサさんの声ではっとしてようやく手を放してくれた。


「とにかく、ヴァンくん。あれはもう絶対使っちゃダメだよ。いい?」

「それは無理イギャアアア!」

 否定したらまた掴まれた。両肩。全力で握って来てる。骨、軋む、コワレル。


「いや、聞いて。いいから聞い、イギャアア!」

 そろそろ放してほしいですね、ホント。怒るのは分かるんだけど、こちらにも言い分はある。一方的じゃダメなんだけどね。

 ひとしきり掴まれた後に、解放された。全身の筋肉が強張って骨が粉砕するかと思った……してないよね?


「あれは、魂を軸にして、マナを魔法にしてるから切り離せないんだよ。

 普通の魔法を使っても反応して出てくる事がある。書き換えをして防具とか武器に乗せ換えることはできるし、そうすればリスクゼロに変えられるそうなんだけど」


 つまり、体が燃えてる=命を使う、であって、体以外が燃えれば、命を消費しないそうだ。武器の耐久値が多目に減る、みたいなものだ。


「つまり、武器があればいいの?そしたら、命を削らなくて済むって事?」

 エリナさんが心配そうな顔に変わる。一応は、落ち着いてきたみたいだ。ただしまだ安心って程じゃないな、これ。

「そゆこと」


 よくある、魔法使いの杖。俺の場合は、魂とか命、そう呼ばれるモノだ。

 魂があるのかどうか、疑わしいってのは、わかる。人が死んだとき何グラムか減るなんて言う話はあるけど、じゃあ魂って、何でできてるんだよ?


「じゃあ、魔法使うたびに火が出ちゃうの?熱いんじゃない?」

 リサさんが怖い考えを口にしている。が、それはない。

「あの炎、焔属性ですから。燃やしたいものしか燃やさない。誰かさんの毛根とかね」

 禿(ハゲチビ)をチラ見する。


「「ハァー……」」

 エルフさんたち、凄い溜め息。はて、どうしたのやら?ぼく、こどもだからわからない。


「それじゃ、作戦とか決めないで勝手に走っていっちゃったのは?」

「大方、子供だからダメとか言うだろうと思って。それならちゃっちゃと突っ込んだ方が早いし。兵は節操?がなんとやら」

ーー拙速、ねーー


「もぉ、やるならちゃんと作戦考えなきゃでしょぉ?アタシの事も信じてよぉ」

「あぅ……スミマセンでした」

 最終的には、謝らなきゃならないか?そうだよね。突っ走った俺が悪い。


 しかし、信じる……か。


「それよりどうする?あいつら、このままほっといたらどんどん増えていくよ?」

 俺の事は一時保留なんだろう。それはいいとして、考えがある。


「奴らの巣、見つけられないって言ってたけどさ。俺に賭けてみない?」

「何か策でもあるのー?」

 未だ渋い顔をするエリナさんとは対照的に、リサさんが俺に応える。

 返す言葉は、簡単なことだ。俺はニヤリと哂った。


(オオカミ)の鼻、バカにしないでよ?」


 戦闘シーンは吟遊詩人が歌っている、という想定で書いています。個人的には無声映画の活弁の方が強くイメージされていたのですが。しかし、わかりづらくなったかな?

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