16話 試験3日目 午前その2
前回:――馬鹿が暴れ続けて、貴族引き気味――
ヴァン達は、街で騒ぎを起こした冒険者達の、身柄引き取りに行ってしまった。
その間に買い物をしていけるように、ギルドの先輩たちに話をしてくれていたらしくて、並人とドワーフ、妖精が1人ずつの3人の女性が案内をしてくれている。
「そういえば、銀狼について行ってるアイツさ、わたしらの着替え覗いたの、未だに謝らないよね」
「アナタまだ根に持ってるの?もう許してあげていいじゃない」
ちょっとお喋りなドワーフさん、リネットさんだっけ。確か4年目だって言ってたかな。村の仲良し3人で、一緒に冒険者になったって。
妖精のカリタさんは、嗤って話している彼女に呆れてる。
「アリスちゃんってったっけ。その話聞いた?あのスケベ、初めて会ったわたしらの裸見たからって、そのあと会うたび、すぐ顔赤くして、すぐ逃げるんだよ。弱腰だよねー」
ユータの事なんだろうけど、何してるんだろう。その癖、偶にナンパして、振られたなんて、ヴァンに弄られているんだけど。彼は、何がしたいんだろう?
「あの従者は、そんなに及び腰なのですか?それに裸を見る状況とは、どうしてそうなったのでしょう?」
エイダさんは納得できないといった感じで憤っている。
「ユータは、従者じゃないんですけど……彼は、虚勢張ってばかりですから。いつも、ヴァンに付いて回るくらいしか、できない様な人なんですけどね……」
「そうだよねー。森に環境調査しに行ったとき、乾季なのにちょっと雨が降ったあとにさー、転移してきたあいつが、濡れた服乾かして着替えてるわたしらの事覗いたんだよー」
「覗いたというか、堂々とドア開けて入って来たんじゃなかったっけ?たしか開けた瞬間に、何かわからない言葉言いながら入ってきたじゃん、そのあと固まって顔真っ赤になっていたけどさ」
ちょっと落ち着いた雰囲気の並人のリーズさんは、不機嫌そうに話してる。それでも頬を朱くしているから、思いだして恥ずかしがっているのかも。
「へー。あいつ、さいあくだね。あとで怒っとく」
のんびりした雰囲気のハルちゃんは、話しながら腕を振って、殴る動きをしてる……本当に殴らないよね?
それにしても、村でこんなに歳の近い女性が集まる事って、あまりなかったんだよね。皆、ワタシより年上なんだけど。こんなに騒がしく買い物に行くなんて思っていなかった。
街を歩くのも、独りでするつもりだったんだけど、ヴァンは案内をお願いしていたらしい。信用されていないのかな?
「それにしても、アリスちゃんって銀狼に愛されてるねー。どこまでいったの?どうなの、ん?」
今度は、カリタさんが嗤ってワタシに話しかけてきた。どういう事だろう?
「あの、ワタシとヴァンとはそういう関係でもないですし、好きとかそういう感情もあるわけじゃないですから」
「えー、じゃあーあいつの片思いとか?結構アイツ愛されキャラだから、人気あるんだよー?主に面白いからなんだけど」
確かにユータは、彼に嫉妬していることが多いけど、そんな人気があるのかな。ヴァン自身は、エリナさん人気に引き摺られただけだって、言ってた事あったけど。
「あー、ペットにしたいとか言ってる人いるよね。冒険者じゃなくて、大道芸人向けだっていう人もいるし……」
「彼は、そんなに芸を持っていらっしゃるんですか?それは一体、どの様なものでしょう」
リーズさんの発言に、エイダさんは興味持ったみたい。でもワタシは厨房に立った方が、似合うんじゃないかって思うんだけど。
「あ、ほら。あれ見てみ。間違いなくアイツの作品。冒険しながらあんなことするんだからさ、そりゃそう見られるのも解るでしょ」
リネットさんが何かを指さした。
その先を見てみると、時計塔の辺りに人だかりができていて、その中心に、おかしな格好で氷に包まれている人達がいる。何か喚いているみたいだけど、そのまま放置されているみたい。
足元には氷の台座、周りに氷のポールを、氷の鎖でつないで、柵のようにしている。
「フワアー!なにあれ、かっこわるい!」
「アイツが向かった、ギルドの問題の後処理でしょ?多分、あれで1日さらし者にするのが条件で、許されるって事でしょ。
そしたら少しの間、アイツら恥ずかしくて街に出れないだろうし、逆恨みしてもアイツ、精霊が居るから寝込み襲えないし、魔法がムチャクチャだし、剣だけでも結構強いからさ。
そんな奴だから、代行も信用して、アイツに後処理任せてるんだろうね」
凍り付いた人たちの所に、誰かが近づいて騒いでいるけど、あの人は仲間なのかな?
「あいつ、昔っからあれが得意だっていうからさ、何人も氷漬けにされてるんだよね。たまに見るしさ。顔だけは氷漬けにされないから息はできるんだけど、あれされたら冷たくてツラソー」
カリタさんはなんか凄く楽しそう。あれが、偶にあるんだ。やらなくていいと思うんだけど……?
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「あー、これアリスちゃん似合うんじゃない?ほら、試着してみなよー。それで、銀狼に見せてみ?絶対興奮するから!」
なぜか、お店の女性用下着のコーナーで興奮気味なリネットさん。明るい性格だとは思っていたけど、結構破廉恥なのかな。そんな風には見えなかったんだけど。
「いえ、安い物でいいと思います。見せる気もありませんし。それに、派手すぎじゃありませんか?」
何製なのか知らないけど、触り心地は、なめらかで艶やか。絹、なのかな?薄手で、おかしなくらい派手で、布の面積も少ない。値段もかなり高い。とてもじゃないけど、手を付けられそうにないかな。
あまり手持ちがある訳じゃないけど、下着も買わなきゃいけないと思う。下水だと、凄く汚い訳だし。
「でも興奮するかな?わたしらも、あいつと一緒に風呂入ったことあるじゃん?子供だからいいんだとか言って、エルフさんたち連れて来てたし。
あいつ、興奮もしないで冷静に体洗って、浴槽浸かってたじゃん。あ、この服可愛くない?」
そういえば、そんな事言って不貞腐れていたっけ。けっこう落ち着いて話していた。
子供だから、とかもある……転生だから中身おじさんって言ってるんだよね。どっちなんだろう?見せたらどっちか分かるかな…………何考えているんだろう、ワタシ?
「当たり前のように、彼と一緒に浴槽に浸かるその状態も、不思議な気もするんですけど……アリス様は本当に、銀狼様とその様な関係にあるのではないのですか?
一見すると、凄く自然で近い存在のように見えますが」
「ねー。イイナヅケだとおもってた」
2人は汚れてもいい服を選びながら、不思議に思っているみたい。
「うーん、本当にそういう風に思った事、無いんだけどな……普通の、友達かな?」
なんでこんなに皆、恋人だと思うんだろう。そんな気持ちを、彼も持っていないと思うんだけど。
「でも違うならさ、なんで冒険者で生きていこうと思ったの?それに、あいつもランク下げて始めるなんて、あまりない方法で始めたのも、理解できないしさー。正直、そういう理由なら納得できるんだけどねー。
この下着の方がいいんじゃない?清楚な感じだからさ」
「とか言ってリーズ、実は自分が狙ってるとかじゃない?違うって言われて、ちょっと嬉しそうだったよ?」
なんか仲良し同士で、揶揄ったりふざけたりしている。
でも、本当に彼は、そんなに人気あるのかな?あと、下着は安物でいいんだけどな……?
「別に、恋人狙ってるんじゃないけどさ、でもあいつが上司だったら、意外といいかなって思ってるんだよ?
揶揄うと冗談で返してきたり、変な反応したりするじゃない。その癖、仕事に真面目でさ。全力で頑張っているのが、上司にはいいなって。なのに、何で一番下からなのかな?」
不貞腐れているリーズさんは、カリタさんに言い訳している。彼はワタシと同じ年なのに、年上の彼女たちに、上司になって欲しいなんて思われるのかな。少し照れているのかな?顔が少し朱い。
「うーん……やっぱり皆、彼の事、結構好きなんですか?獣人は差別されがちだって言われていたんですけど……ワタシの村でも、村長が毛嫌いしていたんです。
彼は、意味無く嫌がらせされているのに、気にもしていないみたいでしたけど」
やり返すこともあったけど、大抵凄く地味な嫌がらせか、派手な爆発を起こして吃驚させていた。
「まあね、初めて見たときはちょっと構えちゃったけどさ、意外なほどに面白くて、話すの嫌じゃないんだよね。本人は、人と話すの嫌いだなんて言ってるけど、それだって照れ隠しかなんかでしょ?
私の妹も、その話してたからか、あいつと話すの楽しみにしていたし。でもギルド以外じゃ、ここまでにはならないよね」
カリタさんは妹がいたんだ。もしかして昨日、話しかけてきた人?
「だろうねー。あいつが街歩いてるのたまに見るけど、明らかに白い目向けられてるもんね。あいつは気にしてなさそうだけどさ」
やっぱり街では毛嫌いされている事はあるみたい。どうしてそうなるんだろう、悪い人じゃないのに?
「でもー、意外と最近の子供には人気らしいよ?吟遊詩人がリクエストされる詩で多いのは、銀狼だって言ってたし」
リーザさんはどうして、そんな事を聞いていたのかな。誰の詩が多いのかって、冒険者の人気の1つとか?
「それって、たまに変な表現があるとか、笑えたりするからじゃない?他の奴らって格好いい表現にはなるけど、在り来たりになりがちじゃない?
あいつは旅してるのもあって、あちこちに詩があって、しかも派手だったり特徴的だと思うし」
「だとしても、獣人だったら、聴く側が騒ぎそうじゃない?
変に毛嫌いしている奴って、たまに催眠にでもかかっているのかってぐらいに、馬鹿みたいに視野狭くなってるし。魔法の影響が見られる訳じゃないんだけどね」
「どっちにしても、面白いのは事実じゃない?あいつ1人にしてると静かだけど、話しかけると大体変な事言ってくるし、行動すると馬鹿みたいなことするのはいつものことじゃない。たまに説教が長いけどさ」
面白い行動する事があるのは分かるけど、そんなになのかな……?
「お聞きしたいのですが、彼は、何をしたいのでしょうか?ワタクシ共は彼にチームに誘われたのですが、誘う理由が無いと思うのです。彼の狙いは一体、何だと思いますか?」
彼のことを疑っていたのかな?そんな事をする理由って、ないと思うんだけど。エイダさんに聞かれて、3人はそれぞれ、好みの服や下着を選ぶ手を止めて、見つめ合った。
「それは……あれじゃないかな。あいつ、やたら危険な仕事に、独りで行くじゃない?エレメンタルドラゴン討伐とか。そんな中で、アイツのサポートするチームとかも居たりするけど、大体2等級とかなんだよね」
「ああ、そうそう。やたら熟練の人ばっかり連れて、どこかの村とかに行って魔物退治行く時だよね。失敗した時の為に、他の村の人を保護するチームとか言ってね」
「あいつが失敗するって、あんまり考えられないけど。
実際、私たちが失敗したワイバーン討伐、あいつだけで終わらせたっていうしね。そんな場所に連れて行くのなら、雑魚は無理でしょ。流石に、最初からそんな場所に連れて行くことは無いだろうけどさ。認められたって事じゃない?」
「あー!そういえば昨日、あからさまに雑魚っぽい奴らが、あいつの幻術追いかけてたんだよね!途中で消えたとか言って、下層街の広場でずっと探していたやつら居たし!」
……練兵場で見た幻術、そんなところに行ったんだ。結構離れているよね?
「認められた?どの様にしてでしょうか。確かに昨日、戦闘能力を見せはしましたが……」
「でも、ハルたちの事、トップテンとかいってたよね。あのジューシャ、じゃなくてバカのヤツ以外はって」
ユータはどうして、こんなに悪く見られているんだろう。あの2人、前の国だと逆だとか言って変に、共感していたみたいなんだけど。
「あいつ、なんでか知らないけど、何となく違いが分かるんだって。技能に心眼があるからなんて話聞いたけど、どうなんだろうね?」
心眼……それだけで全部わかるって訳じゃないと思うけど……それでも、多分、彼なら何か、あるんだと思う。
精霊のボヤキ
――あんたはなんで、女性の体に興奮しないの?――
色気っていうのは、裸とか下着とかじゃないんだよ。
――熟女好きとか?――
そうではないんだが……
――うなじ、どうよ!――
うん、まあ。チラリズムは、良いと思う。
――生足!好きでしょ!――
……何を、変態にしたがってるんですか?
――……ちっ――




