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開けてはならない箱は耳元で囁く
さあ、もう諦めてしまいなよ
馬鹿を言うな
金色の細工も剥げ散り、錆びた鉄でできたその重そうな箱を両手で抱えて歩く男は怒鳴る
開けてはならぬと言われたのだ
ならば開ける必要はあるまい
いや、お前はもう十分に役目を果たしたのだ
敵方の大将を見事その剣で討ち取ったではないか
これでたくさんだろう
私の中身を見たらどうなのだ
この野郎、他の奴は騙されたのかもしれないが、俺はそう上手く嵌められるわけはねぇぜ
あんたを開けるわけにゃいけねぇ
けれどもけれども、鬱蒼とした森はいつまでも尽きない
魔物は途絶えているのに、ゴールが見えない
男は薄々勘づいていた
これを俺が開けないことには、話は進まない
俺はここで死ぬ定めなのだ
これは決定事項と言えるもので
自ら変えることはできないのだ
さぁ、早く開けてごらん
箱の呟きが聞こえる
男は全て諦めてしまって
これから自分が受けることになろう苦しみに
顔をしかめながら
蓋に手をかけた
張り手一発自由の女将
寒風の 吹くを知らずに 湯気立ちぬ




