表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/30

約束

「イヴ、起きて!一緒に遊ぼうよ!」

 イヴは、目を開ける。さっきと同じように、机の上には、豪華な料理とイチゴのケーキが並んでいる。ただ、お父さんとお母さんの姿は見えなかった。

 イヴは、腕を引っ張られる。そちらに視線を向けると、思わず腕を振り払う。

そこにいたのは、イヴと同じ身長くらいの青い鬼の人形だった。青い鬼の人形は。真っ赤な目でイヴを見つめると、何も言わず、そのまま玄関の方へ歩いて行き、扉を開けた。

 イヴは、視線を動かしお父さんとお母さんを探す。けれど、ここには二人はいなさそうだった。イヴは玄関まで行くと、青い鬼の人形が開けた扉を覗く。

扉の向こう側は真っ暗だった。イヴは、そっと扉を閉めようとする。すると、扉の向こうから突然手が伸びてきた。イヴは抵抗する間もなく、暗闇に引き込まれる。

「イヴ!」

 すると、目の前には金髪の少女――メアリーがいた。扉が背後でゆっくりと閉まる。

「えへへ。会いたかったよぉ。」

 メアリーは笑顔を浮かべる。イヴも笑顔で応える。

「ねえ、これから、ずっと一緒にいてくれる?」

 メアリーは、両手でイヴの手を握る。イヴは頷く。すると、メアリーがまた、笑顔を浮かべる。

「ずっとずっと、一緒だよ。」

 イヴは頷く。

「ずっとずっとずっとずっと、一緒だよ!」

 イヴは何度も頷く。メアリーがイヴの手を両手で包み込む。

「約束だよ!」

 メアリーがまっすぐイヴを見つめる。イヴは大きく頷く。

「えへへ。・・・・・・ありがとう、イヴ。」

 そう言うと、メアリーはそっと手を離した。手を離すと、イヴに背を向け、暗闇の中を走り出した。イヴは見失わないように、慌てて後を追いかける。


 まもなく、暗闇の真ん中にひとりの青年が立っているのが見えた。青年はイヴを見つけると、片手を上げて、笑顔を浮かべる。

「イヴ!」

 ボロボロのコートを羽織った青年――ギャリーは呼びかけた。イヴはそのまま、ギャリーに抱きつく。

「ひとりで寂しかったのね。でも、もう大丈夫!」

 ギャリーは、そっと抱き返してくれた。ギャリーの腕の中は、不思議と落ち着いた。

「ねえ。約束、覚えてる、イヴ?」

 約束?私、ギャリーとなにか約束したっけ?ああ、そうだ。たしか――

「コンペイトウ?」

「アハハハ。確かに、それもそうだったわね。」

 その返事にギャリーは笑い出す。どうやら、違ったらしい。イヴには、思い出せなかった。

「再会の約束」

「え?」

「また会いましょう!」

 そう言うと、ギャリーは、いつの間にか取り出した白いレースのハンカチを手にし、笑う。ギャリーはイヴに背を向け、歩き出した。

「待ってよ、ギャリー!」

 イヴは呼び止めるが、ギャリーはそのまま歩き続け、見えなくなってしまった。

 イヴは、ひとりぼっちになった。後ろを振り返る。すると先ほどの扉が遠くに見えた。扉の向こうからは自分を探すお父さんとお母さんの声が聞こえる。

 きっと、このまま戻って扉を開ければ、家に帰れる。お父さんもお母さんもいる。おいしい料理だってある。プレゼントだって置いてきてしまった。けれど、メアリーもギャリーも、この暗闇の先に行ってしまった。

 イヴは、二人の消えていった暗闇のむこうを真っ直ぐ見つめた。きっとこの暗闇のどこかに、二人はいる。


―・・・・・・探しに行かなくちゃ―


 イヴは扉に背を向け、暗闇の中を走り出した。その暗闇はヒンヤリと冷えていた。走れば走るほど、寒くなってきた。息も切れてきた。


 どのくらい走ったのだろう。走り疲れたイヴは、ゆっくりとその速度を落とすと、やがて立ち止まる。目を閉じても閉じなくても同じような暗闇の中、イヴはひとりぼっちだった。

 すると、次の瞬間、目の前に地面に座り込んでいる女性が現れた。少しウェーブのかかった金色のロングヘアーと、深い青い瞳が暗闇の中でも輝いていた。女性は、上を見上げていた。深海の底で、ひっそりと。光にあふれているはずの世界を、真っ暗な深海の底から見上げていた。

 その女性に見覚えがあった。そうか。この人も探しているんだ。イヴは、その女性の側に寄る。イヴが隣に座る。しかし、女性はずっと上を見上げている。イヴも上を見上げるものの、真っ暗だった。

 二人は何も口にすることなく、座り込んだままじっと上を見上げていた。やがて、イヴは立ち上がる。女性は立ち上がったイヴを見向きもしない。イヴは、二人を探しにまた、歩き出す。振り返りそうになるのを我慢して、足早にその場を去った。

 暗い暗い深海の底。イヴはひとりで歩いていた。行くあてもなく、さまよっていた。この先に、二人がいるとは限らない。それでも、イヴは歩き続けた。


(そんなに遠くには行ってないはず。きっと、この先に二人はいるはず。だから―)


 イヴの目に、淡い青い光が射し込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ