表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/30

誘う宝石箱の魔窟

 『コペルニクス的転回の展開』に投げ出された二人だったが、落下の速度はそれほど速くなかった。落下というより、一定の速度で降りていく感覚だった。落ちている間、そこには燃えている星、緑色の星、輪っかのある星、青い星など、様々な星があった。

 やがて、二人は地面にぶつかる。ギャリーは、メアリーを抱いたまま、背中から落ちた。

「イテテ・・・・・・どうやら、大丈夫みたいね。」

「ギャリー、苦しい。」

 ギャリーが慌ててメアリーを離す。メアリーは立ち上がると、辺りを見渡す。壁には、二つの星のパネルが飾られており、部屋の中央には、なにやら大きな箱があった。

「アンタね――」

 ギャリーがメアリーの突然の自分勝手な行動を問い詰めようとしたが、メアリーは気にせず、部屋の中央の箱を調べる。ギャリーは、溜息をつきながら、メアリーの側まで来る。

「オレのたから、ホシイカ?」

 突然、箱が口を開いたかと思うと喋りだす。いきなりの出来事に驚いたギャリーは、近くにタイトルが書いてあるのを見つける。


『誘う宝石箱の魔窟』


「うん!」

 メアリーが、笑顔で答える。

「かべのナゾ、トイタラ、はなしかけろ」

「まちがえたら?」

 ギャリーが、おそるおそる尋ねる。どうせ、ろくなことを言わないんだろうなという予感はあった。

「まちがえたら かむ。」

 『誘う宝石箱の魔窟』はそう言うと、その鋭い歯を見せつけるように、大きく何回も閉じたり開いたりした。噛まれたら、怪我どころで済まなさそうだった。

「壁の謎って、これかな?」

 メアリーが、二つの惑星のパネルの前に立つ。下にはボタンがあり、メアリーが押すたびに、その上にある星のパネルが変わっていく。メアリーが何度も押してみるが、星が変わる以外には何も起きなかった。

 ギャリーは、ボタンを押すたびに現れる星を見ていて、あることに気がついた。

「そういえば、今落ちてきた時にも、星がいくつもあったわね・・・・・・」

「うん、そうだね。」

 メアリーはボタンを押し続けている。ボタンを押しては、隣のボタンのところに行き、ボタンを押し続ける。同じ星のパネルが現れたら、また隣のボタンを一回押し、また元の場所に戻り、ボタンを押し続けた。

「そんな闇雲にやっても、仕方がないんじゃない?」

「うるさいなあ!分かんないから、しょうがないじゃん!」

 そう言われると、黙り込むしかなかった。ギャリーは、今見た星を全て覚えていなかった。だから、さっきから現れるパネルのうち、どの星があったのか、分からなかった。

 試行錯誤しているメアリーを見ていて、ギャリーは今までの出来事を思い出していた。みんなで協力して、謎を解いていたことを。イヴだけでなく、メアリーも謎解きをしていたことに、正直驚いていた。

(・・・・・・もしかして、メアリーが悩んでいるのって――)

 確証はなかった。けれど、もし、その仮定が正しいのなら――

「これ、もしかしたら落ちている途中に『なかった』星にするんじゃないかしら。」

 メアリーは、振り返る。ギャリーと目が合うと、満面の笑みを浮かべた。

「なーんだ。だったら簡単だよ。」

 そう言うと、メアリーはボタンを押し、あっという間に星を選んだ。これで、はっきりした。メアリーが悩んでいたのは、『どの星があったのか分からないから』ではなく、『見た星を選ぼうにも、見た星がいくつもあり、選べなかったから』だった。

「覚えてるのね・・・・・・」

 確かに、落ちる速度はそれほど速くなかった。星を見逃すということはなさそうだった。けれど、落ちている間に見える星など、前もって言われていない限り、覚えているものではない。少なくとも、ギャリーは覚えていなかった。

「そういえば、アンタあのときも番号、覚えてたわね。記憶力がいいのかしら。」

 ギャリーは、『さぼり癖のある秒針』を動かすための番号を、メアリーがスラスラと暗唱したのを思い出していた。

「え、そうなの?普通だと思ってたよ。それより、これで――」

 メアリーは、『誘う宝石箱の魔窟』の前まで行く。

「解いたよ!当たってるでしょ!」

「・・・・・・。よくわかったな。しかたない。オレのたから、やるよ」

 『誘う宝石箱の魔窟』はカリカリという音を鳴らしたあと、口を大きく開く。箱の縁に付いていた鋭い歯は引っ込み、中には絵画のピースが入っていた。

 メアリーが、箱の縁に体を乗せ、箱の中に手を伸ばす。絵画のピースは、音を鳴らして消えた。

「やった!これでそろったね!」

「・・・・・・なんで、分かるのよ。」

 確かに、記憶力のいいメアリーなら、今まで何枚集めたか覚えているかもしれない。けれど、そもそも全部で何枚集めなければならないか、知らないはずだ。

「ここに来る前に、大きな額縁があったんだよ。二つ空いていたから、あと二つなんだなあって思ったんだけど――」

「そうなの?じゃあ、そこが出口なのかしら――」

 そして、ギャリーは大事なことを思い出す。忘れてはいけない、あのことを。

「それより、イヴを探さなくちゃ!?」

 すると、上から何かが降ってきた。それは着地すると、ゆっくりと顔を上げる。顔のバツ印が、ギャリーとメアリーの方を向く。ギャリーは、急いでメアリーの手を取り、音をたてないように扉から外に出る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ