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クロッキーブック

 部屋の中は、一面黒色でぐちゃぐちゃに落書きされていた。そして、迷路のような部屋の中を、黒い棒で構成された小さな人型の何かがせわしなく走り回っていた。

「すごいイタズラ描きね・・・・・・。これ全部、あの黒いのが書いたのかしら?」

「壁に何か書いてある。」

 イヴが壁を指差す。ギャリーは、そこに書いてある文字を読む。


『赤に触れずに 黒を追え』


「黒って、あれのことかしら?」

 先ほどから、小さな黒い棒人間が部屋を行ったり来たりしている。すでに、メアリーが後を追いかけていて、メアリーから必死に逃げ回っているものもいた。

 すると、部屋の奥にクロッキーブックが置いてあり、そこから赤い棒人間が出てくるのが見えた。

「黒いやつを捕まえて、あそこに返せばいいのかしら・・・・・・」

「とりあえず、捕まえよ。みんなでやれば、すぐ終わるよ。」

 イヴはそう言うと、近くにいた黒い棒人間を追いかけ始めた。

「・・・・・・仕方ないわね。」

 ギャリーは小さく溜息をつくと、目の前に走ってきた黒い棒人間を捕まえる。


 三人でいくつ捕まえても、黒い棒人間の数はなかなか減っていかなかった。捕まえても、クロッキーブックに返す前に逃げ出すやつもいて、作業は進まなかった。

 メアリーが、黒い棒人間を追いかけて迷路の角を曲がったとき、黒い棒人間が何かにまたがっているのが見えた。それは、棒人間が重いのか、ふらふらと浮かぶように移動していた。

「あ、小鳥だ!カワイイ!」

 棒人間のまたがる小鳥を見つけたメアリーは、小鳥に向かって走り出す。棒人間は、その勢いに押され、小鳥から飛び降り、逃げ出す。小鳥は疲れきったのか、メアリーが近づいても、ぐったりとしまま動かなかった。メアリーは、空のように青く、丸みを帯びたその小鳥を拾い上げた。

「疲れちゃったのかな・・・・・・。イヴにも見せてあげようっと!」

 メアリーは、そっとその小鳥をポケットに入れた。


「はぁっ・・・・・・なかなか大変ね。・・・・・・イヴ、アンタ大丈夫?」

 ギャリーが、クロッキーブックに黒い棒人間を返しに来たとき、ちょうどその場にいたイヴに話しかけた。

「ちょっと休んでてもいいわよ?その間にアタシがアイツら捕まえてきてあげる。」

 イヴは首を横に振ると、また捕まえに行こうとする。すると、そこにメアリーが棒人間を手にやって来た。

「あ、イヴ!ちょうどよかった!見せたいものがあるの!」

 メアリーは、そう言いながら、黒い棒人間をクロッキーブックに入れた。すると、クロッキーブックから、銀色の絵画のピースが飛び出してきた。絵画のピースを吐き出したクロッキーブックは、そのまま閉じてしまった。

「終わったみたいね・・・・・・。あー。なんか無駄に疲れたわね。どこかで休憩できたら、ちょっと休みましょうか?」

「イヴ、この小鳥、カワイイでしょ!」

 メアリーがポケットからさっき捕まえた小鳥を取り出し、イヴに見せている。イヴは、メアリーの手のひらの上にいるその小鳥を、そっと撫でている。

「その小鳥、どうしたの?」

「この部屋にいたの。きっと、迷子だよ。」

 ギャリーは、その小鳥を見る。イヴに撫でられ、メアリーの手のひらで大人しくしている様子から、特に危険はなさそうだった。

「ねえ、連れて行っていい?」

 メアリーがギャリーに尋ねる。イヴも、真っ直ぐギャリーを見つめている。

「本当に迷子かどうか分からないけど――そうね。連れて行って、いいわよ。」

「やったあ。ありがとう、ギャリー!」

 すると、その小鳥も小さく鳴き、メアリーの肩に飛び移った。


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