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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
1章 少年、召喚される

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08話 少年、サバイバルする

(´・ω・`)気付けばお気に入り登録件数が増えていました……

こんな小説をお気に入りにして頂いて、感謝感激雨霰です


稚拙な文章と内容ですが、これからもお願い致します

 竜の砦の(ふち)に当たる場所に降りた勇樹は、眼前に広がる森を見下ろしながら100mは優にありそうな断崖絶壁にビビりながら、後ろにいるここへ連れて来た張本人に話しかけた。


「えーっと……何でこんな高い山で息が出来てるんですか?」


『真っ先に聞く事がそれか……それは、(わし)の周囲に魔力で膜を作って覆っているからじゃ。こうする事で飛行時の風圧などから守っているんじゃよ』


「あ~、そういえば飛んでる時は全く気になりませんでした」


 というよりも、目の前のドラゴンを観察するのに夢中だったのだ。

 老人は所謂西洋ドラゴンであった。

 トカゲに蝙蝠(こうもり)の羽を付けたような形だが、体の表面は堅い深紅の鱗で覆われており、目算で40mほどの大きさがある。

 それが自分と同じくらいの背丈の老人になるとは到底信じられないが、勇樹はそういう魔法もあるのだろうと事で結論付けた。


「それでお爺さんは何者なんですか? こっちの世界じゃ老人がドラゴンに変身するのは仕様(デフォ)なんですか?」


『おー、これは自己紹介が遅れていたのう。儂は見ての通りドラゴン、人間は(わし)を“赤賢竜(せきけんりゅう)”ドラグニールと呼んでおる』


「えーっと、僕は極普通の異世界人の伊藤勇樹です。その赤賢竜さんがなんで僕をこんな所へ?」


 勇樹の質問に、ドラグニールは器用に口を歪ませニヤリと笑った。


『言ったじゃろう。お主を鍛えてやると』


 その言葉と表情に言い知れぬ不安が襲う。

 何か言おうとした矢先、ドラグニールが勇樹の首を指差して爪の先から光の帯を出すと、それを勇樹の首に巻き付けた。

 光が治まると、そこには金の首輪が付いていた。


「へ? 一体何を……」


 訳が分からず戸惑っている勇樹を余所に、ドラグニールは満足そうに頷くと勇樹の首根っこを摘み上げた。


『では、今から修行を開始する』


「修行って一体どういう……っ!?」


 ドラゴンが軽く手を翳した瞬間、勇樹は突然冷たい水に落とされたかのような重圧感に襲われ、立って居られなくなり膝を付いてしまう。


「な、なにこれ……息、が……」


『まあ、幾ら近くに森があるとはいえ、突然空気の薄い場所に出て来ればそうなるじゃろう』


 ドラグニールが魔力の膜を消した事で急激に酸素が薄くなった所為で、軽い眩暈(めまい)と頭痛に襲われ、ドラグニールが何を言っているのかもよく聞き取れない。

 混乱している中で、勇樹は体が持ち上がる感覚を覚えた。


『それでは、ここで一ヶ月間ほど生き残るのじゃ』


「それって、どういう意味……っ!?」


 勇樹は言葉を最後まで紡げなかった。

 ドラグニールは摘み上げた勇樹を、ゴミを屑カゴに捨てるが如く森の方へ放り投げた。

 一瞬の浮遊感、自分を放り投げたドラゴンと目が合い、そのまま重力に従って落下した。


「うわぁぁぁぁぁぁ――――――!?」


『頑張って生き残るんじゃぞ~』


 暢気に応援するドラグニールの声は、既に勇樹には届いていなかった。



「ぁぁぁあああ、わう!?」


 地面に直撃する直前に首輪が輝き、勇樹は地面スレスレの空中でピタリと停止した。

 ホッとしたのも束の間で地面に落ちた。


「ハァハァハァ……ビックリした! 超ビックリした!」


 約30階建のビルと同じ高さから落ちて緊張で、冷や汗と鼓動と動揺が止まらず、しばらくその場で落ち着くのを待った。

 同時に勇樹は状況を整理した。

 1.自分は毛玉にやられて依頼を失敗。

 2.アーノルドに「もっと鍛えろ」と言われて老人が快諾。

 3.その老人は実はドラゴンで竜の砦と呼ばれるこの場所まで自分を連れて来て鍛えるつもりである。

 4.何故か崖から落とされた。(←今ここ)

そして、ドラグニールが最後に言った言葉「頑張ってここで一ヶ月間ほど生き残れ」。 つまり、この場所は頑張らなければ生き残れない何かがあり、逆に一月は生き残る可能性が存在するという事。

 ――そこから導き出される答えは。


「さっぱり……わかんない!」


 そもそも勇樹はこの世界での生活は2日目であり、ドラゴンに拉致されるなど完全に予想外。

 その上このような秘境に連れて来られては、幾ら神経が図太い方である勇樹も冷静には考えてはいられなかった。


「よし、まずは落ち着こう。そして状況を把握して拠点を確保しなくちゃ。安心して落ち着ける場所が無いと僕の精神がヤバい」


 そうと切り替えたら行動は早かった。

 まず探したのは拠点にする為の身を隠しやすく立派な木だった。

 ここでやりがちな洞窟などを拠点にはしない。

 洞窟は既に熊などの住人がいる場合が多いので鉢合わせた場合、現在の自分ではまず太刀打ちできないと勇樹は判断した。


 次に地上で寝るのは即却下した。

 地面に直接寝ると体温が奪われて体が硬くなるのと、冷えた空気が直に当たるので調子を悪くする恐れがある。

 加えて、散策している最中に自分の足と同じくらいの大きさ蹄の跡を見つけていた。

 そんな巨大生物から見つからないように、丈夫な木の上に拠点を作る事を決めた。

 幸い、木が密集して寄り集まったような理想以上の大樹が見つかり、そこにテントを張る事にした。


 まず手頃な石を割って木の枝に括り付けて斧を作り、木に絡んでいる蔦や邪魔な枝を切り落として、途中何度も休憩を挿みながら拾ってきた細木を蔦で結んで筏のような足場を作って、大樹の太い枝に固定するように括り付けた。

 それだけでは風などは防げないので、足場と同じように並べた細木を蔦で縛り、隙間に大きな葉を挟んで屋根を作り斜めに立て掛けて風除けにする。

 最後に上り易いように蔦で縄梯子をぶら下げれば完成である。


「よーし! 若干不安はあるけど、テントの完成!」


 久しく野外活動などしなかった子供の秘密基地のようなテントではあったが、最低限の雨風だけは凌げる拠点が完成する。

 そしてテントが出来上がる頃にはすっかり日も沈み、真っ暗になっていたのでその日は空腹に耐えながら休む事にした。



サバイバル生活2日目……

 お粗末ながらテントの中で休んだ事で多少落ち着く事が出来た。

 だが気分が落ち着いたと同時に、勇樹の腹の虫が主張をし始めた。

 勇樹がこの世界に来て既に丸2日が経ち、最後に取った食事といえば2日前の昼休みに学校の購買で購入した物足りない惣菜パンのみ。

 今までは何とか誤魔化して来たが、空腹も既にピークを過ぎて力が入らなくなってきていた。

 だからこそ、今日こそは飲み水か食べられる物を確保しないと、空腹で動けなくなる可能性があった。

 なので、勇樹は朝日が頭を出し始めたと同時に行動を開始した。


 勇樹はテントの製作中に見つけた、竹っぽい植物をブツ切りにして水筒を作った。

 テントの近くに小さな池も発見していたが、その水をそのまま飲む訳にも行かないので上流を辿って水源を確保する為に立ち上がった。


「何も食べてないから水でも飲んで誤魔化さないと、空腹で眠れない気がする……!」


 寝不足になれば当然動きは鈍り、そこへ空腹も加われば動けなくなり、ますます空腹と寝不足になって行き悪循環になるのは目に見えている。

 勇樹は水筒を5つほど細くて丈夫な植物で作った紐で縛って、まず出発点となる小さな池へ向かった。

 しかし、勇樹は空腹とテントを作るのに夢中になっていた所為ですっかり忘れていた。

 何故、自分が態々(わざわざ)木の上を拠点にすると決めたのかを……



 数分後……

 勇樹は自分の迂闊さに頭を抱えていた。

 池の場所は拠点からそう離れていないので迷う事無く行く事が出来たのだが、池に着いてから問題が発生した。

 この小さな池は森に住む生き物にとっても大事な水源である。

 即ちここに来るという事は他の生物ともガチ合う可能性がある。


 先に発見できたのは、幸運な偶然だった。

 偶々勇樹がいた場所が風下で池に流れ込む川の音で小さい音は掻き消され、向こうがこちらに背を向けていて、尚且つ食事中だったという偶然が向こうに勇樹が発見される前に隠れられた幸運である。

 しかし幸運もそこまでだったらしく、それは隠れた直後に食事を終えてしまったようで辺りを警戒しているのか、頻りに周囲を見回している。

 体毛は黒曜石の様に黒く、獅子のような鬣を生やし、額からは1対のL字型の角が前に伸びている。

 ソレの名前は『ブラックモス』、冒険者協会では上級のAランクとして災害指定される魔獣であった。


「(どうするどうする!? 逃げ場はないし、というより動いたらアウトっぽいし、でも早く動かないと水が確保できないし……あっ)」


 ふと見上げると、偶々顔を上げたブラックモスと目があった。


 結論から言えば伊藤勇樹は一度死んだ。

 目が合った瞬間、背筋が凍るような感覚と共に反射的に草むらから反対方向へ走り出そうと飛び出した。

 直後、背中に何かに突き飛ばされるような衝撃と、熱せられた金属を押し付けられたかのような熱さが胸を貫いた。


「……カフッ」


 声を出そうとすると、口から赤い何かが流れる。

 何故か呼吸ができず、息が苦しい。

 ゆっくり視線を下げると、胸に何かが生えていた。

 背中に巨大な気配を感じる。

 背後を振り向くと、先ほどの魔獣の顔がすぐ目の前にあった。

 巨大な気配の正体はコイツだった。

 視線で辿ると、胸を貫いているのはコレの角らしい。

 肺と心臓を貫かれ、熱さが次第に猛烈に痛みに変わって行く。

 そこで初めて、口から出た物が自分の血であることに気付く。


「カフッ……あ゛ぁ?」


 貫かれた部分は焼けるように熱いのに、指先から冷たくなってゆく感覚に陥る。

 痛みで頭に中が掻き回される感覚でフラフラになりそうな中、強烈な眠気が襲い掛かってくる。

 そして朧気ながらに、この感覚のまま目を瞑ってしまえば恐らく2度と目覚める事が出来ないと直感した。

 そしてゆっくりと角が引き抜かれ力なく倒れた瞬間、勇樹はその場から消えた。



「……っ!? ……あれ……何で?」


 思わず起き上がって周囲を見回し、夢や幻で無い事を何度も確認する。

 一瞬、先ほどの遭遇が夢だったかと考えたが、自分の服に大きな穴が開き、真っ赤に染まっている事、まだ痛む身体、そして握りしめていた竹筒がアレは現実だった事を示していた。

 しかし、どうやって自分はここに帰って来ているのかが疑問であった。

 何せ最後は死んでいた筈である。

 仮に誰かが助けてくれてもあんな巨大モンスターに襲われている状況で助けてくれる者など……と考えた所で、1人だけ思い当たった。


『ふぉっふぉっふぉっ、早速発動した様じゃのう』


 思い当たったのと同時に、その張本人の愉快そうな笑い声が勇樹の頭の中に聞こえた。


「……なんか狙ったかのように思えるんですけど、これってどういう事なんですかねぇ?」


『お主の首に掛けた首輪の効果じゃよ。その首輪に死んだ者を安全な場所まで転送してくれる効果があるんじゃ』


「へぇ~、そうなんですか~……って、それより何なんですかここは!?」


『簡単に言えば修練場じゃよ。それも特別な者のな』


 それまでのふざけた声質が急に真面目な物に変わる。


『そこは“竜の砦”と呼ばれる場所。と言っても、竜が住む砦ではなく竜が鍛える砦という意味じゃがの』


「竜が鍛える?」


 勇樹は首を傾げた。

 つまりこれはアレだろうかと、某虎仮面的な意味なのかと考えた所でドラグニールが笑いながら答えた。


『前にいた勇者がのう、ここを作った時にそういう名前にしようと言っておったのじゃ』


 どうやらその勇者も同じ国の出身だったらしい。

 そこで勇樹はある事に気が付く。


「待って、前の(・・)勇者?」


『うむ、千年くらい前に召喚された勇者がいてのう。その一人が儂に挑みかかってきたのじゃ。まあ、軽く捻ってやったがな!』


 ドラグニールの笑い声を聞き流しながら、勇樹はいきなり出た情報に頭が痛くなった。

 この手の設定が出てくる話で先代が居るというのは、いくつかの最悪なパターンが想像できたが、今は考える事ではないとドラグニールに質問を続けた。


「その勇者がここを作ったってどういう事ですか? ここって勇者の訓練場?」


『うむ、概ねその認識で合っておる。まあ、事情はちと複雑じゃがのう』


 言葉を濁すドラグニールの声を聴いて、そこでまた嫌な想像が頭を過る。


『まあ、隠していてもしょうがないから言ってしまうが、儂の予想では恐らく城にいた勇者は3か月後には半分くらいに減っておるじゃろう』


 そうあっさりと告げるドラグニールの声を、勇樹は何所か遠くで聞いている感覚に陥った。

 嫌な予感とは往々にして当たってしまう物である。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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