13話 少年、竜の里へ行く
(´・ω・`)気が付けば、お気に入り登録20件になっていました。
日本語すら覚束無い人間の作品ですが読んで頂き、剰えお気に入りまで登録して頂いてきありがとうございます。
この物語は深夜のテンション、その場の思い付き、一行のプロットでできています。
ドラグニールに連れられ、勇樹は竜の砦より少し離れた山脈の頂上、そこに削り出すように作られた村こそが、目的地の“竜の里”であった。
竜の里と言っても、その殆どは竜人と呼ばれる亜人であり、純血のドラゴンたちもそれに合わせて人型になっている者が多く、雲より高い場所にある事を除けば地上の村と大して変わりはなかった――見た目だけは。
「お~お~お~!」
竜の里に着いた勇樹は、まるで遊園地にでも来た子供のように目を輝かせて、目に映る全てが珍しいと言わんばかりにキョロキョロと村を観察していた。
「王都の時は人が多かったから気が付かなかったけど、この世界の亜人って思ったより獣度が高いんだなぁ」
勇樹が感心する様に呟いた視線の先には、広場で楽しそうに木剣で遊ぶ竜人の子供がいた。
この世界の竜人は、勇樹が見ていたアニメや漫画に出てきた翼と尻尾が付いているだけのバージョンか二足歩行トカゲではなかった。
ベースは人間だが手足には鱗と鉤爪が生えていて尾と翼があり、顔は男女共通して爬虫類のような目だが、男性は爬虫類寄りに顔全体が鱗で覆われていて、女性は普通の人間の顔をしていた。
勇樹の何気ない呟きにドラグニールは首を傾げた。
「なんじゃ? そのケモノドとかいうのは」
「まぁ、簡単に言えば人間の視点から見て、亜人の身体がどの程度毛や鱗に覆われているかって意味ですね~。所で赤爺、僕たちは何所へ向かってるんですか~?」
親猫に運ばれる仔猫のようにドラゴン形態のドラグニールに咥えられた勇樹は、イメージしていた修行場所とは程遠い平穏な場所に、内心では若干の戸惑いを、例えるなら初めて来た家に連れて来られた犬猫のような落ち着きの無さを感じていた。
しかし、勇樹の問いにドラグニールは何も答えず、竜の里をどんどん歩いて行く。
勇樹もどうせ行けばわかる事だろうと、気を取り直して竜の里の見学に勤しんだ。
暫くすると里を抜けて、里の片隅までやってきた。
目的地に着いたようでドラグニールは銜えていた勇樹を下して、自分も人型へと変化した。
そこにあったのは学校のグラウンド程度の広さのすり鉢状の穴だった。
穴の底では複数の竜人が戦っているのを見て、ここが次の修行場かと勇樹は漠然とした感想を抱いた。
穴の淵に立って居た大柄の竜人が、こちらに気付いて声を掛けて来た。
「む? そこに居られるのは、若しや赤賢竜様ではございませんか?」
「おお、ダク坊か。久しいのう」
ダク坊と呼ばれた大柄の竜人は体中の鱗が傷だらけで、身に纏った防具や武器も年季が入ってよく使い込まれていて、いかにも歴戦の戦士と言った風体だった。
「お久しぶりでございます。今日はどうなさったのですか?」
「うむ、実は此奴をここで鍛えて欲しいんじゃよ」
そう言って、本物の戦闘訓練風景を興奮しながら観戦していた勇樹を引っ張って、竜人の前に突き出した。
「此奴は竜人のダクディルという竜人の中でも一二を争う戦士じゃ。お主の良い師になるじゃろう」
「この……普人族の子供を……ですか?」
勇樹を見て竜人は明らかに戸惑った顔をする。
それもその筈、どう考えても頑強な肉体を持つ竜人の修行に、ただの普人族の子供が付いて行けるとは到底思えない。
困惑している竜人を見て、ドラグニールは目を細めた。
「ユーキ、ダク坊を殺す気で斬りかかりなさい」
「了解!」
ドラグニールの突然の命令に、疑う事無く勇樹は剣を持って飛びかかった。
剣を振り回すように鞘を抜き、ダクディルに向かって体重を乗せた一閃を放った。
その不意打ちに反応できたのは、一重にダクディルの戦士としての鋭い勘だった。
「!?」
ダクディルが攻撃を受けたのを見て、勇樹はさらに攻めた。
剣の押し合いでは分が悪いと感じたら、すぐに下がると同時に体勢を低くして土を握り込み、相手の顔を目掛けて投げつつ、彼の懐へ飛び込んだ。
土は片手で払うだけで防げたが、防いだ腕が視界を遮ってしまい、飛び掛かってくる勇樹に対しての反応が遅れた。
勇樹は隠し持っていた骨のナイフや、煙幕などを駆使してダクディルに肉薄する。
一方、ダクディルは勇樹の攻撃を受けながら戸惑っていた。
何故なら勇樹の攻撃には殺意も敵意も感じられないからだ。
普通ならば殺す気で掛からない攻撃では、人は自然と力を抑えてしまう。
だが勇樹は殺意を一切表に出さないまま、自然体のまま殺すつもりで剣を振り切っていた。
こんな変な戦い方になった理由は勇樹の修行方法にあった。
勇樹の修行していた竜の砦は、高ランクのモンスターが鎬を削って生活している。
普通であれば頭一つ飛び抜けたモンスターが生まれたなら、そのモンスター一強になってしまう筈である。
しかし、竜の砦では災害級のモンスターが生息しているのも関わらず、角ウサギ等の低級モンスターが生存しているのである。
それは低級モンスターの相手の力量を感じ取る本能が発達して進化したからであった。
故に自分より強いモンスターから上手く逃げ隠れる事が出来たのである。
修行中も、序盤は勇樹も戦う相手には困らなかった。
何せ自分より弱いと気付いている角ウサギなどの低級モンスターがドンドン突撃して来るからだ。
しかし、それもレベルが20を超えた辺りでパタリと姿を見なくなってしまう。
理由は簡単。
勇樹が彼らより強くなってしまったから、彼らは勇樹を強者として感じとって隠れてしまったのである。
そうなると、途端にレベル上げが難しくなった。
何せ丁度いいモンスターというのが居らず、隠れるのが得意な低級以外は軒並み上級のみいう、レベル上げに実に不親切な設計だからである。
そこで思いついたのが気配を消す事だった。
ただこれも困難を極めた。
何せ彼らにしてみれば僅かな殺気でも漏らすだけで、大型スピーカーで音楽を大音量で流しているような物で森の僅かな変化を敏感に感じ取って逃げてしまう。
そこで必死になって練習したのが、殺気を全く外へ出さずに攻撃を行う事だった。
こう言うと物凄い事をしているように思えるが、実際にはただ頭の中を空にして反射的に攻撃しているにすぎなかった。
そしてドラグニールがここへ連れて来た最大の理由は……
「ふんっ!」
「ぐぱどっ!?」
ダクディルの攻撃を諸に受けた勇樹が奇声をあげながら吹き飛ばされる。
攻撃を加えたダクディルも唖然とした顔をしていた。
「赤賢竜様……彼は一体なんなのですか? 攻撃はウチの戦士にも迫りますが、防御と回避は致命傷を避けられればいいと言わんばかり……まるで死兵ですよ? あの普人族は一体どういう……」
「そうなんじゃよ。まさか儂もこんな事になるとは思わんかった……」
ドラグニールが勇樹をここへ連れて来た最大の理由は、勇樹は死に戻り前提の戦闘を行っている事に気が付いたからであった。
何せ竜の砦の中ならば、どんなに怪我をしてもほぼ1日で治り、死んでも復活できるので理論上なら相打ち覚悟で特攻を繰り返していけば早くレベルは上がっていくのだが、出来るからと言って現実とゲームは違う。
実際には身を斬り裂き打ち付けられる痛みがある、それを無視して実行できるのは自殺志願者か精神異常者ぐらいである。
そして、それを勇樹はやった。
それも壮絶な覚悟や決意などなく、ただ経験値を積み上げる手段の一つとして死に続ける事を選んだのだ。
その結果、敵の攻撃をギリギリで避けながら斬り込んで行く、肉を斬らせて骨を断つ戦闘スタイルが出来上がってしまったのだ。
「ここに連れて来た理由はズバリ、アレを矯正して欲しい。あんな戦い方では命がいくらあっても足りんわ」
「はぁ……それは構わないのですが、我らの修行と言ったらアレですよ?」
そう言って指差したのは、目の前にあるすり鉢状の穴だった。
その中では数人の若い竜人が己の武器を片手に乱戦を行っていて、誰かが倒れると穴の淵で見ていた竜人たちが、倒れている者を回収して次の竜人が乱戦に加わっていくのを繰り返している。
簡単に言えばぶっ倒れるまでぶつかり稽古を繰り返しているのだ。
これを朝から晩まで、竜族の戦士は繰り返して行っている。
ダクディルは頑丈な竜人族ならまだしも、普人族である勇樹に付いて行けるとは到底思えなかった。
「ん? ああ、それについては安心してよい」
「そ、そうですよね。普人族に我らの修行法は……」
「ユーキの方にはひょいひょい躱せん様に重りを加えるつもりじゃから」
ひょっとしてこの方は彼を遠回しに殺すつもりなんじゃないだろうか。
何故か倒れている竜人の介抱をしている勇樹を見ながら、ダクディルはそう思えずにはいられなかった。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




