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神宿りの剣士  作者: 陽山純樹


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第六十九話 包囲

 俺とイザルデの魔力が周囲の大気すら圧迫する中で、幻魔や騎士達は動き始める。対峙する俺とイザルデを邪魔しないように――かつ、いつでもフォローに入れるような形に。

 結果的に包囲するような情勢となったが、それでもイザルデは笑っている。


「この状況下で……勝てると思っているのか?」


 ロベルドが問う。いかにイザルデが力を持とうとも、彼は動じていない。

 いや、他の面々もそれは同じであり……どうやらイザルデの圧倒的な存在を前にしても退かないその姿勢は、ここで負ければどうなるか理解し奮起しているためか。


「先ほどの話を聞いていればわかったはずだ」


 ロベルドの問いに、イザルデはそう答えた。


「俺を倒せる存在はセレスただ一人だと。どれほど妨害されようとも、セレスだけを狙えばいいだけの話」

「なるほどな……とはいえ、それをさせないのが俺達だ」

「同感だ」


 と、フェリアが続く。


「どうやらお前が自分が特別な存在だと思っている……それは邪神の力を得ているから以外にもあるようだが、残念ながら違う」

「これだけの力を有しているのに、あくまでただの幻魔だと思っているのか?」

「ああそうだ。数奇な運命に翻弄された、哀れな幻魔だよ」


 彼女の言葉にイザルデは嘲笑する。フェリアだけでなく、ロベルドに対しても、彼はそういう感情で応じている。


「そちらの主張は理解した。だが残念だ。どれだけ特別扱いをしなくとも、この俺の力は絶対だ」

「いいや、お前はただの幻魔さ」

「ならば、そうだと証明してみせろ」


 挑発的に返したロベルドは、言葉と同時に一歩踏み込んだ。

 仕掛ける気か――だが彼の剣が炸裂しても通用するとは思えない。


 イザルデはロベルドの動きに合わせて手をかざした。刹那、大剣とイザルデの腕が激突する。


「さすがの一撃だが、本気ではないな」


 剣戟に対しイザルデが評した瞬間――ロベルドの剣に魔力が。まさか剣を放った状態で『黒竜剣』を放つ気か。


「ほう、その状態で切り札を使うのか?」

「――セレス!」


 イザルデは応じず、ロベルドは俺へと叫ぶ、言われなくてもわかっていた。神域魔法を行使し、イザルデへ仕掛ける。

 直後、フェリアや他の幻魔もまた動いた。彼の体へ剣を差し込もうとする動き。包囲して刃を突き立て物理的に逃げられなくなるような形なのか。


 相手はどう応じるのか――しかしイザルデの視線は俺から離れない。受けても問題はないと判断しているのか……?

 刹那、幻魔達の刃がイザルデへと突き刺さる。直撃し体に剣などが食い込み――だがそれでも、イザルデは余裕の表情を崩さなかった。


「残念だが、通用しない」

「ならば、これはどうだ?」


 ロベルドが力を解放する。ゼロ距離からの『黒竜剣』――それが発動されたと同時、他の幻魔達は退避を始めた。

 また同時に、騎士達が動く。後詰めのモルバー達も動き始め……何をする気だ?


「セレス、合図と共に魔法を撃て」


 そこでフェリアが俺へと声を上げた。何をするのかわからないが……どうやらこれは作戦の内らしい。

 もしかすると、邪神の力を備えるイザルデに対する対抗手段を……? そんな考えが頭をよぎった直後、ロベルドの剣が弾け、黒がイザルデを包み込んだ。


 もっとも、これで効果があるとは……その時、騎士達の動きが活発になる。何かを準備しているようだが――


「個人的には、皮肉な話だと思う」


 ここでフェリアが話し始めた。


「私達はセレスとは別に、策を講じていた……邪神を持っているイザルデに対しても、一撃食らわせる手段を考えていた。いくつか候補はあったわけだが、その全てに障害があってすぐにというのは難しかった」


 ロベルドの剣が全てを覆い、その中で幻魔も騎士も動いている。もしや、ロベルドの技はイザルデを食い止めるためのものなのか。


「今あいつが使っている剣は、イザルデを拘束する特性があるものだ。それがきちんと効いているのかわからないが、他の幻魔が魔力を大地に注ぎ、それと融合して強化してある。攻撃は効かずとも、動きを拘束することはできるだろう」


 先ほどの一連の攻撃は、本命につなぐためのものだったということか。


「だが、それを解決したのはモルバーを経由して話をした、人間側の者達だった」

「人間と手を組み……?」

「そうだ。モルバーは今回の戦いが人間に及ぶことを予期し、予め協力するよう話をしていた。結果として私達の技術を利用し、人間が邪神に応じるための技術を開発した」


 騎士が次々と地面に剣を突き立てる。その中でモルバーと魔法使いらしき人間が魔力を高めていく。

 だがイザルデが反撃するのでは……そう考えた時、ロベルドの『黒竜剣』が途切れ、彼が姿を現した。


「……なるほど、人間と幻魔が手を組み、術式を組んだのか」


 全てを理解するような口調で、イザルデは話す。


「幻魔だけでは足りなかった部分を、人間を用いて補った……共通の敵ができたことで手を組むことができたというわけだな」

「だが通用しない、とでも言いたげだな」


 その言葉は、後方にいるモルバーが放ったものだった。


「せっかくお前のために仕込んだ攻撃だ。少しは興味を示してくれてもよさそうなものだが」

「俺に通用すると思っているのか?」

「ああ、思っているさ」


 平然と返すモルバー。そこでイザルデは一歩歩もうとしたらしい。

 だが、表情を変える。


「何……?」

「舐めすぎたな、ロベルドを」


 フェリアが言う。見ればイザルデの足は、黒い鎖のような物で拘束されていた。


「邪神に対しては何一つ通用しない……そんな風に思っていたのかもしれない。あるいは、全てを知っているが故のおごりというやつか? しかし残念だったな。今の私達には、セレスがいなくとも攻撃できる手段を持っている」

「確かに動かないな……これは何だ?」

「答える必要は、ないな」


 それと同時、イザルデの魔力が高まる。無理矢理力を込めて破壊しようとしているみたいだが……効果がない。


「邪神を持っていることで、全ての支配者となったつもりか? あるいはセレスを倒せば全て終わると思っていたか?」


 フェリアがなおも問い掛ける間に、新たな変化が。騎士が突き立てた剣……それらが一斉に光り始めた。


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