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神宿りの剣士  作者: 陽山純樹


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第四十九話 彼の策

 気配――それにより現れたのは、俺の上背を超える全身鎧の騎士……といっても人間でも、幻魔でもない。この遺跡に存在する、守護者だ。


「……面倒な存在が目覚めたな」


 イザルデは振り向きもせず呟く。


「そうか、さっきの魔法……地面を介し何をしていたのかと思ったら、遺跡内にいる守護者に呼び掛けていたのか」

「俺の魔法を使えば、何かしら反応があると思ってさ。何せ女神の力だからな」


 不敵な笑みを浮かべ、俺は応じる。


「目覚めさせることに成功すれば、邪神の力を持った存在が遺跡の入口にいる以上、戦うために遺跡から顔を出す……もっとも、リュハのこともあるからこっちとしても面倒だが」


 守護者が駆ける。その手に握るのは大剣。さらに遺跡の入口からは後続の騎士が出現し、イザルデを捉えて突撃する。


「やれやれ」


 だが当のイザルデは涼しい顔で手を振った――直後、闇が守護者を取り巻いたかと思うと、その闇が凝縮し――守護者を押し潰した。

 グシャ、と鉄のひしゃげる音が周囲に響く。それと共に闇からは光の粒子がこぼれ落ち、耐えきれず守護者が潰れたのだと認識できた。


「セレス、こんな玩具で潰せると思ったら――」


 既に俺は攻撃準備を整えた。放たれた神域魔法はそれまでと異なり、槍のように変じイザルデの胸部へと放たれる。

 それを彼は――腕をかざして防いだ。今までと違う攻撃であるため警戒したか、それとも収束する魔力が大きくまともに受ければ負傷すると考えたか。


 こちらの魔法に対し反応したイザルデ……加えそこへ守護者の大剣が迫る。


「面倒だな」


 そう呟いた直後、守護者の大剣がイザルデの肩に入った。おそらく彼の防御能力ならば、斬撃が入っても傷を負うことはない……はずだった。

 しかし、予想以上に刃が食い込む。これにはイザルデも驚いたか、すぐさま闇を生み出し剣を弾いた。


「これは――」

「女神が残した遺跡だ。何もない方がおかしいだろ?」


 ――邪神に対し有効な能力を有している。物語でこの遺跡を訪れた際はまだ邪神そのものが復活していないためその効果が日の目を見ることはなかったが、


「なるほど、な。確かに俺では理解し切れていない部分もある」


 イザルデは守護者を弾きながら応じる。


「だがこれだけでは俺に勝つ要因にはならんぞ」

「まだ終わりじゃないさ」


 言葉の直後――さらなる守護者が姿を現す。今度は白銀の鎧ではなく、黄金。


「ここからが本番だ」

「……本当に面倒だな」


 闇が膨らむ。それを守護者へ向け放とうとしたイザルデに対し、俺が手をかざしさらなる神域魔法の準備を行う。


「残念だが、させない」

「一人では埋まらない差を、守護者で補うということか……だがそれでも、届かないと思うが」


 ――確かに守護者をけしかけるだけではおそらく無理だ。イザルデを倒すにはもう一手必要。

 それは――すかさず神域魔法を高める。その間に守護者達が一斉にイザルデへと向かって行く。


「ふん、見ようによってはお前を助けているような形か」


 面白くなさそうに、イザルデは呟いた。


「遺跡内にいる守護者が俺の分身に反応して外に出ている――元々セレス自身こいつらを始末する覚悟で来たはずだが、それを俺がやることになっている、と」


 語りながら闇で守護者を一体、消し飛ばす。圧倒的な闇の奔流はまともに受ければ邪神の力に対抗するために作られたはずの守護者ですら一撃で片付ける。

 とはいえ、こればかりは仕方がない……黄金の守護者が迫る。それもまたイザルデは闇で対抗したが――予想外のことが起きる。


 闇は黄金の守護者に直撃したが――受けきった。


「何?」


 呟き追撃を仕掛けようとしたが、それよりも先に守護者の攻撃が入った。気付けば左右を取り囲まれているイザルデ。幾本の刃がまったく同時に、彼へと振り下ろされる。

 斬撃が次々と叩き込まれ――特に黄金の守護者の一撃は、一度イザルデの魔力が揺らぐほど……だが、


「――多少甘く見ていたことは認めよう」


 刹那、イザルデの周囲の空気が、凍る。いや、物理的にそうなったわけではないが、底冷えするような漆黒の魔力が周囲に発せられる。


「しかし俺の力の前には――この程度」


 彼を中心に漆黒が舞う。それはあたかも竜巻のように回転したかと思うと、黒に触れる守護者を一気に消し飛ばしていく。

 黄金の守護者であっても例外ではなく、圧倒的な黒に飲み込まれて、全てが消え失せる。


「はははは! 素晴らしいな!」


 哄笑。次いで闇が一気にかき消え彼の姿が克明になる――邪神の力を完璧に制御していることがわかった。


「セレス、残念だったがお前の切り札――」

「守護者を利用したのは確かだが、切り札になるとは思っていないさ」


 イザルデに応じ、俺は右手をかざす。その手の先に魔力が収束しているのを、イザルデも感じ取ったはずだ。


「守護者を一撃で消し飛ばすだけの力……まともに受けていたら俺も即死だな」

「理解したか……さっきの守護者は時間稼ぎ役か? その手の先に秘める魔法が目的だったと?」


 俺は何も答えない――その代わりに、またも遺跡から守護者が姿を現す。


「やれやれ、しつこいな」


 闇をかざそうとイザルデが腕を振ろうとした矢先、俺は地を蹴った。それにすぐさま相手も反応し――また呼応するように守護者も動き出す。


「同時に仕掛けようと、意味はないぞ!」


 闇がまず守護者へと向けられる。黄金ではなく白銀であるため、直撃すればそれで終わりだが――守護者は、かわした。


「ほう!?」


 驚愕の声。それと同時にまた遺跡の入口から守護者――黄金の守護者が現れ、突撃を開始する。

 イザルデはもう一度闇を放ったが、それもまた守護者はかわす。先ほどと明らかに動きが違う――そう彼は認識したはずで、


「セレス……! お前が操作しているのか!」


 こちらは何も答えなかったが、正解だった。

 地面を介し魔力を流したことで守護者を呼んだ。そして神域魔法を利用して守護者を思い通りに動かせないか……それを試し、成功した。


 最初はただかく乱のために利用しようとしただけだったが、地面を介せばいけるのでは……先ほどそう考え試行錯誤した結果、成功した。これで守護者をさらに有効利用できる――


「涙ぐましい努力だが、それまでだ」


 だがイザルデも黙ってはいない。即座に闇――守護者を一掃した竜巻を思わせる闇を発生させる。

 一気に消し飛ばし、後は俺を――そう思ったはずだが、甘い。


「イザルデ――お前に一つ見せてやるよ!」


 叫び、俺は魔法を……解き放った。


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