22 何か、【ドラえもん】の【のび太君みたいな服】
(1)
な、何だって――!?
――とは、CM明けのように、始まることはなく……
場面は、【Ⅹパラダイス】の、島へと戻ってくる。
寝間着姿のまま、部屋から、暗闇の海へと――
それも、海面から30メートル以上の高さから飛び降りて脱出したパク・ソユンとドン・ヨンファのふたりだが、いつの間にか、濡れた服を着替えていた。
すなわち――
ホテルの中の、もぬけの殻となった一室から、残っていた服を“拝借”したわけである。
ドン・ヨンファが、白い襟の黄色のシャツに、短パン。
それから、パク・ソユンはというと、白のカチューシャはそのままに、【何かスパイラルに、かつシースルーになった、セクシーというか変な服】を――
とりあえず、これら、すこし変な感じのするファッションで、何とか間に合わせていた。
すると、
「う、わぁぁん……、もう、どうしよう……、あの、黄色スーツ……」
ドン・ヨンファが、崩れるように嘆いた。
そうしていると
「何? アンタ? その服? 何か、【ドラえもん】の【のび太君みたいな服】じゃん?」
と、ドン・ヨンファの服装を、じっくりと観察しながら、パク・ソユンが言った。
確かに、言うとおり、ぱっと見、【のび太君】である。
100人中、ほぼ100人が、そう言うに違いないほどの……
「え? 何だよ……? 落胆する僕を、慰めてくれないのかよ?」
ドン・ヨンファが、悲しそうに訴えるも、
「え? だって、ほんとに、【のび太君の服】みたいだもん」
「まあ、確かに、そうだけど、さ……。はぁ……、どうしよう? あとで、取りにいけるかなぁ……?」
「分かんないわねー。あの、クリーチャー……? ――みたいなのが、まだ居るんなら、無理じゃない? ――てか? 何? 『あの服、高かった』とか? 愛着あるわけ? まあ、アンタ、いっつも黄色いスーツ着てるけど、【クレヨンしんちゃん】に出てくる、ヤクザの、【組長先生】だっけ? ――が、来てるみたいな」
と、パク・ソユンは、こんどはクレヨンしんちゃんの組長先s――、失敬、【園長先生】を思い出して連想した。
「組長じゃなくて、園長先生じゃ、ないのか? そこは?」
ドン・ヨンファが、訂正しながらも、
「まあ、黄色いスーツは、好きなんだよ。しかも、アレ、一着500万ウォンくらいするし」
「はぁ、自慢なわけ?」
「い、いや、別にそういうわけじゃ……。ちなみに、家に、あと6着あるんだけど……、少しずつ、デザインが違ったのが」
「なら、別に、一着くらい良いじゃん」
「いや、それが、ダメなんだよ……!」
「はぁ、」
キリッ――! として、【譲れないナニカ】がある顔をするドン・ヨンファに、パク・ソユンが、気の抜けた相づちをする。
また、そのパク・ソユンが話す。
「しかし、これで、何部屋か調べてみたけど、さ? どの部屋も、人がいなくなってるわね」
「まあ、調べ方に、“だいぶ問題があった”ような気がするけどね……」
と、ドン・ヨンファが、軽く引いた様子で答える。
まあ、というのも……、パク・ソユンが【異能力で変化させた手】で――、まるで、【ターミネーターがやったように】、鉄製のドアをグイッ――! と、無理やりこじ開けていったのだ。
まさに、【優しくかつ丁寧とは、ほど遠いやり方】で、部屋を確認していったわけである。
ゆえに、ドン・ヨンファが、そんな表情をするのも無理もない。
それで、ここまで調べたことを整理するに、確認していった部屋の全てに、人は“いなかった”。
ただ、どの部屋においても、“確かに数時間ほど前まで人がいたと思しき気配”は、あったのだ。
ふたりは、ホテル階の廊下を歩いていく。
「何? もしかして? 実は、私たちだけが知らないイベントってのが、どこかであって……、皆、そっちに行っちゃってる、とか?」
「まあ、そうだとする、と……、僕たちは、こんな強盗か空き巣まがいなことしちゃったからね? 捕まるだろうね」
ドン・ヨンファが答えつつ、ひと呼吸おいて、
「――とは言え、そうする、と……? 僕とソユンが【見たもの】は、いったい? 何だったんだろう――? って、話に戻るけど」
「それ、ね……」
と、会話はいったん、また間をはさむ。
「しかし……、話を、戻すとさ? さっき現れた、クリーチャーは……、本当に、何だったんだろうか?」
ドン・ヨンファが、改めての改めてで聞いてみた。
その問いに、パク・ソユンが、
「そう、ね……? 何て、いうか、さ? 身体を、消化器官から、グリン――って、裏返しにしたような感じね」
「そんな、グロテスクに、言葉にしないでくれよ」
「はぁ? だって、そんな感じじゃん」
と、思い出して気持ち悪がるドン・ヨンファに、パク・ソユンが言う。
そうしながらも、歩き続けて、
「このまま、下のほうに……、ロビーや、カジノのほうに、行ってみるかい?」
「何? もしかしての、謎のイベントが行われてないか、確認してみるわけ
?」
「いや、まあ、そういうわけでもないけど……、まあ、ワンチャン、そうであれば……、いや、【そっち】であってほしい。今回、僕たちが幻覚を見て、ムダに海にダイブしただけで、ムダに部屋を荒らしただけであれば――、最悪、弁償して謝れば済む問題だし」
「まあ、そうね」
と、願望のように話すドン・ヨンファに、パク・ソユンは同意する。
しばらく歩いて、
「しかし、何も無いってのも……、かえって、不気味だよな」
ドン・ヨンファが言い、
「そう、ね」
と、パク・ソユンが相づちする。
確かに、【あんなクリーチャー】を見たあとのあとで、こうして、【何も起きない】というのも、ある意味不気味に感じられる。
だが、
――ギィィ、ッ……
と、突然に――!!
すこし後ろの、部屋のドアが開く音がした。
「うぇぎィッ――!?」
ドン・ヨンファが驚き、謎の悲鳴を上げる。
その反対に、
「もう、うるさいって、アンタ」
と、パク・ソユンは何も動じることなく、小突いてつっこむ。
そうして、ふたりの目の前に
――ゆら、り……
と、自分たちと同じくらいの年代の、男女ふたり組が、部屋から出てきていた。
彼らは、
「……」
「……」
と、ふたりともに、無言であったが、。
ただ、彼らの姿を見るに、こんな時間ではあるものの、寝間着ではなくて、まるでパーティに行くときの装いであったが。
それはさておき、
「よ、よかった……、ひ、人がいたよ、ソユン」
などと、まるで秘境か謎の土地で集落を発見した探検隊のように、ドン・ヨンファが言った。
同じく、そのドン・ヨンファが続けて、
「や、やっぱり? パーティか、何か、あるんじゃないか?」
と、聞いた。
「……」
と、となりのパク・ソユンは、答えることなく無言であったが。
まあ確かに、彼らの装いを見るに、ドン・ヨンファが、そう思うのも無理はない。
ただ、その男女ふたりの表情が【少し虚ろ】に感じられるのが、気になるところかもしれない。
それは、彼らが寝起きなのか――?
はたまた、自分たち――、というか、【お酒を絶対やめた系の酒豪】のパク・ソユンと同じように、酒を飲みすぎて気持ち悪いだけの可能性もある。
だがしかし、
「……」
と、その、酒をやめたと自称するパク・ソユンは、ジッ……と無言で、まだ“彼ら”を見ていた。
そして、
「――待って、ヨンファ」
「――へ?」
と、パク・ソユンが言った矢先――
【それ】は起きることになる。




