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【04】 トランス島奇譚  作者: 石田ヨネ
第二章 女体のヒトガタ建築の中で
12/45

12 ジェイソンってさ、チェーン・ソー使ってそうで、実は使ってないの


 また、ドン・ヨンファは一旦、つっこみかけながらも、

「まあ、でも……、ソユンの言うように、頭の回らないときにポーカーを避けるのは賢明かもね」

「は? 誰が、頭が回らないって?」

「えっ――? ――フグッ!?」

 と、ここで突然――! 何故にかドン・ヨンファはパク・ソユンに首を絞められる!

「ち、ちょッ!? 何でッ!? その、唐突な首絞め!? うぐ、ぐッ……!! そ、そういう意味で、言ったんじゃないて――!! 頭が、回らないから、うぐッ……! あ、頭を使いたくない、って――」

「はぁ、あくまで、頭は回ってんのよ。言葉のとおり、頭を使いたくないだけよ」

 と、パク・ソユンは表情は変えずに、異能力を以って、


 ――グ、ォォン……!!


 と、もう片方の手で、あろうことかチェーン・ソーを具現化し、ドン・ヨンファの首に当ててやる。

「ぎぎィッ――!? ちょッ!? かっ、かんべ!! 勘弁してくれよッ!! ソユンッ!!」

 と、ドン・ヨンファは叫んで訴えるも、

「ねえ? 知ってる? ジェイソンってさ、チェーン・ソー使ってそうで、実は使ってないのよ」

「ぜッ、全然わかん、ないよッ!? グゥゥッ――!!」

「ああ? ステ〇サムじゃなくて、13日の金曜日のほうね」

 と、パク・ソユンは淡々とローテンションで、ドン・ヨンファを責め続ける。

 その時、


「――?」


 と、パク・ソユンは、“ナニカの視線”に気がついた。

 その、視線をたどった先――

 そこには、かっちりとポマードで七三に髪型を決めた、カジノのスタッフの男の姿があり、

「……」

 と、まるで人形のような目で、ジッ……と、こちらを見ていた。


 パク・ソユンは、その七三の姿に気がつくと同時、

 ――シュ、ワァァッ……

 と、チェーン・ソーを泡のように消失させてやった。

 まあ、召還しっぱなしでは、さすがにマズいので。

 すると、

「もし、もし――?」

 例の、黒服の七三男が、ゆるり……と話しかけてきた。

「ん? 何でしょうか?」

 パク・ソユンが、何事もなかったかのように、シレッと振り向くと、

「失礼ですが、お客様? いま、チェーンらしきものを使っていませんでしたか?」

 と、七三男が、まるで体温を感じさせないような、冷たい機械のような目で、確するように聞いてきた。


「ん? チェーン・ソー、何のことでしょうか? 私は、チェーンソー・マンではありません」

「チェーンソー・マン? わたくしは、そのようなことを聞いているのではありません。確かに、チェーン・ソーのようなモノを、貴女が持っているの見ましたので、お声がけさせていただきました」

「はぁ、」

「そのようなものは、当カジノにふさわしくありませんので、没収させていたくか……、もしくは、貴女がたに、出ていってもらうよう、お願いすることになりますが、」

「だから、チェーンソーなんて、持ってないって。貴方の、気のせいだと思うけど」

 と、冷徹な目で問い詰めてくる男に、パク・ソユンはシレッとして、あくまでシラを切る。


「そう、ですか……。確かに、チェーンソーをみたような気がしたのですがね」

「うん。だから、気のせいだって。チェーンソー・マンの見過ぎだと思うの」

「チェーンソー・マン? ですから、何でしょうか? それは?」

 男は人形のように無表情で疑い続けていたが、パク・ソユンに強引にスルーされ、怪訝そうな顔をする。

「まあ、いいでしょう……。ただ、こういう場ですからね……、くれぐれも、紳士・淑女としての振舞いをしていただくよう、お願いします」

「うん。分かったー」

 と、諦めて忠告だけして去る男に、パク・ソユンは空返事をする。

 なお、その男が去っていく始終、気のせいか、

「……」

 と、こちらを、チラリ――と見ているようにも見えたながら。


 そうして、男が去ったのを確認するや、ようやくパク・ソユンはドン・ヨンファを解放してやる。

「げッ、ゲホ、ゲホッ……!!」

 ドン・ヨンファ、膝をついて咳きこむ。

 そんな様子を無視して、

「まあ、それは置いてでもさ……、いま、卓で話しかけられても、怠いし」

 と、パク・ソユンは、最初の会話に戻って言った。

「あ、ああ……? それは、あるかも、ね……、ゲホ! ゲホ……!」

「てか、そもそも、お酒が、まだ少し残ってる感あるし」

「やっぱ、酒が残ってるのかい」

 などと、ふたりは話す。

 そのとおり、ポーカーは社交遊戯としての面もあるため、プレイの進行やルール、マナーに抵触しないかぎり、卓で会話が行われることも珍しくない。

 また、それなりに知名度があるパク・ソユンゆえ、卓で話しかけられることは必須だろう。

 ゆえに、酒で頭が回っていないときに、ただでさえそれなりに頭を使うポーカーと会話を同時にこなすというのは、億劫には違いない。 


「まあ、どっちにしろ……、たぶん、皆、君がこんなローテンションな人間なんて、思ってないだろうし、ね」

「でしょ、ね」

 ドン・ヨンファの言葉に、パク・ソユンが頷く。

 モデルやDJ活動をしている時は、いまの、普段の様子とは違い、チャーミングで明るいキャラをしているからだろう。

「あ? グロ趣味があるってのは、有名だけど」

「うるさいわね」

 パク・ソユンが、軽くつっこむ。

 そのようにしながらも、

「――で? どうするかい? ソユン?」

 と、散策ばかりしていても仕方がないので、ドン・ヨンファが改めて、どうするかを聞いてみた。

「そうね? とりま、脳死バカラでもやってこうかしら」

「脳死バカラって……。まあ、でも、そうだね? 仕方ないから、バカラでもやろうか」

 と、ドン・ヨンファはつっこみたくなりたくも、自分自身バカラは好きなほうなので、バカラをやる方向には同意する。

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