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【04】 トランス島奇譚  作者: 石田ヨネ
第一章 Xパラダイス
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1 ヘソ出しの清楚スタイルのファッション




 生命体とは、その遺伝情報のディスプレイ (表現)されたものであり、それが生物なのである。生命体すなわち有機体 (organism)は、無機体 (inorganism)を組織化するノウハウを遺伝情報 (DNA)としてもっているものである。このDNA生物は、その遺伝情報に基づいて細胞を創生し、個体を構築する。その方法はすべて物理法則に準拠している。

 

** 『分子生物学』より




          (1)




「えぇ……?」

 ドン・ヨンファの困惑する声と 

「は?」

 と、パク・ソユンの声が、



「「――何、これ?」」



 のところで、重なった。

 ここは、おそらく北と南の間くらい緯度の、ある洋上の島。

 パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりが、見上げる先――

 高さにして、50メートルくらいだろうか?

 ヒトガタの――、それも、膝をついたセクシーポーズをした女の像という、奇怪にして、およそ趣味の良いとはいえない建築物が、

 ――ゴゴ、ゴゴゴォ……

 と、そびえていたのだ。

 ゆえに、ふたりが、そのような声をあげても無理はない。


「何これ? 趣味わる」

 パク・ソユンが、ジトッとした目で言った。

 なお、そのパク・ソユンだが、中華メイクの整った顔に、頭にはでっかいパールつきのカチューシャ。

 それと同じく、白を基調とした肩出し、かつヘソ出しの清楚スタイルのファッションであり、モデルと見紛うほどの容姿だった。

 まあ、実際に、モデルとしても活動をしているのだが。


「趣味わるいって、ソユンが、言うのかい?」

 ドン・ヨンファが、ヘラヘラした様子でいう。

 なお、ドン・ヨンファのほうは、キノコヘアに、黄色のド派手なスーツという、奇抜なファッションであった。

「は? 何? 私が、趣味悪いって?」

「い、いやっ……! そっ、そんなことは言っ――、ぎッ!? ぎゃぁぁっー!!!」

 と、ドン・ヨンファの言葉に気が障ったのか? パク・ソユンが詰め寄るや、ヘッドロックをかけると同時、彼女の異能力を以ってしてだろう――、その手を、丸鋸へと“変化”させ、

 ――ギィ、ィィンッ――!!!

 と、けたたましい音を立てながら、ドン・ヨンファに突きつけていた。


 ちなみに、このパク・ソユンであるが、猟奇モノやグロ動画をパソコン上に多重に開いては、無表情で永延と視るという、確かに“趣味が悪いといわれても仕方のない趣味”を持っている人間でもある。

 まあ、それはさておき、

「ぎぎぃんッ――!! かッ、勘べッ――!! 勘弁してくれ!! ソユンッ!!」

 ドン・ヨンファが懇願する中、

「……」

 と、パク・ソユンは、そのドン・ヨンファのほうを見ずに、謎の、女体建築を眺めていた。

 

 そうして、

 ――フッ……

 と、もがくドン・ヨンファから、手を離してやる。

 ドン・ヨンファは

 ――ド、サァッ――

 と、地面に転がるなり、

「ゲホ!! ゲホッ!!」

 と、解放されて咳きこむ。

 ただ、その横で、

「……」

 と、まだ、パク・ソユンは建物を見ていた。


 そのパク・ソユンに、

「と、とりあえずさ? 中に入ろうぜ、ソユン? ホテルのほうに、部屋に、荷物を置きたいし」

 と、息を落ち着かせたドン・ヨンファが促す。

「そう、ね……」

 パク・ソユンは、ゆるりと答える。

 いちおう、この“女体建築”は、ホテルのようでもある。

 そうして、ふたりは歩き出す。


 ――ゴゴゴ、ゴゴ……


 と、聳える、ヒトガタの建築―― 

 髪の部分は、まるで、DNAの二重螺旋が回転するごとく……、何か、少し不気味にも、幻惑的に見える。


 そうした中、

「……」

 パク・ソユンは、ジトッ……とした目で建物を見続ける。

“それ”が、何なのか――? 

 今のところ分からなかったが、“何かの予感”がしていた。

 なお、少し先を歩くドン・ヨンファが、

「はぁ……、僕は、船旅で疲れたからね……。カジノに行く前に、少し、寝たいね」

 と、こちらを見ずに話しかけるのを、聞き流しつつ……

 それでは、そんなふたりが、どうして、この奇怪な島へ来たのか?

 ここから少し、振り返ることにする――




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